幼馴染と久々に話す
僕の声が届くと、女の子は、面白そうにどんぐりごまをくるっと回してから、僕を見た。
「なんだ、覚えててくれたんだ」
「まあ……うん。ちょっと変わってたけど、ちゃんと思い出せたよ」
僕は久しぶりに会った、美月にそう返した。
三年前よりも大人っぽくて、可愛いと美しいのハーモニーがすごい。
きっと、まだ回り続けている美月の作ったどんぐりごまのように、絶妙なバランスなんだろう。
「智洋、こんなことしてたんだね」
「あ、ああ……まあ、ボランティア部ってのに入っててさ、それでこの自然観察教室をやってるのは僕だけなんだよね」
「ふぅん、なるほどね」
美月はにこにこしながら僕を見つめてきた。
「美月こそ……最近はどんな感じ? テニスとか」
「楽しくやってるよ〜」
「相変わらずすごいな、去年はどこまで行ったんだっけ」
「全国ベスト16だよ」
「いややっぱすごいな」
僕がそう言うと、照れ隠しなのか、美月は止まっていたどんぐりごまをまた回した。
テニスが強い高校に行って寮生活をしているはずの美月が、高三になってどうしてこんなところに来たんだろう。
それが不思議だった。
それからしばらく何も話さずにどんぐりに囲まれて。
五時半くらいになった時に美月が立ちあがった。
「そろそろ……行こうかな」
「うん……あの、美月」
「どうした?」
「……どうして今日ここに来たの?」
「懐かしいからかな……昔一緒にここで遊んだじゃん、智洋と」
「あ、それはそうだけど」
「あの時は、もっと私のこと見てくれたのに」
「え?」
「ううん、まあしょうがないのかな、なんでもない」
美月は僕よりも先に歩いて公園の出口を出た。
道路にもどんぐりはたくさん転がっている。
「美月、あの……怒ってるの?」
「怒ってる……かも、うん。怒ってる……」
なんでだ……。
と言おうとして、だけどやめた。
心当たりはある。
ちらっと美月が言っていた通り、僕は美月のことをあんまり、見ていないかもしれない。