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間話 エイル王国 王直属部隊

毎週投稿できるか心配になってきた......。


追記 誤字報告ありがとうございます。今回のアレクのメールは寝惚け眼で打っているのであえて「もかえにけて」にしました。ですからこれは誤字ではございません。分かりづらくて申し訳ございません。誤解のないように修正しましたので今後とも誤字報告や感想をよろしくお願いします。


9月25日 誤字脱字、細かな修正を行いました。


22/8/10 一部設定変更により修正致しました、

雲一つない晴天の日。巨大な王城、エイル城の一室に彼女は居た。


一人で住むには(いささ)か大きすぎる部屋に必要最低限の家具、そしてまた一人で寝るにはかなり大きいベッドに彼女は規則正しい寝息を立てている。

セミロングのプラチナブロンドの髪はまるで絹のように柔らかく枕全体に広がり、染み一つない肌はまるで陶器のよう。


ピピピ!!


枕元に置いてある時計型の端末が音を鳴らし、持ち主に起床時間を知らせた。


整いすぎる程整った顔は少し歪み、目を瞑りながら手探りで端末を探しだす。


「―――はぁ......」


重々しく片目を薄っすらと開き、端末に表示されている時刻を確認する。

それから一度息を深く吸い込み身体中に酸素を行き渡らせ、身体を覆っている薄い布を捲くると、ベッドから起き上がった。

ワイシャツの上からでもはっきりと分かるスラリとした完璧なまでのスタイルの良い身体。寝惚け眼の目は翡翠のように深い緑色。美人と言う言葉にすっぽりと当てはまる程の美人。


暫く、ベッドの上で朝だという事実を受け入れる準備をする。それが私の一日の始まりだ。


深呼吸。目が完全に開き、ベッドから降りると洗面台に足を進めると扉を開いた。

顔を洗い、歯を磨く。

それが終わると洗面台から出て、それから、棚から着替えを取り出した。

ワイシャツを脱―――。






割愛






身支度を整え、鏡の前で確認する。


「―――」


(完璧)


椅子にかけたベルトを腰に巻き、机の上に置いてあるナイフを腰の後ろの鞘に仕舞う。そして、枕の下を(まさぐ)り、取り出した拳銃を遊底(スライド)を半分程引き、焼室(チャンバー)に弾丸が入ってないのを確認すると安全装置(セーフティー)が掛かっているのを確かめ、腰のホルスターに挿しこんだ。

そして、最後にコートを肩に羽織るともう一度深呼吸。

最後に部屋を見回し。外に扉を開いた。


今日も私。ライラ・エインへリアルの一日が始まるのだ。





ラグナロク暦五百六十年。


この世界、ユグドラシルでアースの神々と巨人との戦争ラグナロクが終戦して二千年の時が経った。

ラグナロクで主神オーディンをはじめとするアース神族の殆どの神は死に絶え、私達人類も全滅まで後一歩というところまで陥った。

だが、諦めなかった人類は少しずつ力を付け、数を増やし、国を作り。ラグナロクの時代とは比較にならない程人間の技術は発展した。


その多くは魔力を用いた技術である。


元来人間は魔法が使えない。

使えるのは人間以外の種族(・・・・・・・)であり、人間が全滅し掛けた原因でもある。

しかし、魔力は存在した。

それを知った人間はその魔力を取り出す技術。そして、その取り出した魔力を動力源(エネルギー)として動かす事が出来る装置を造り出した。

結果、大小あれど人間の国々は目覚しい程発展し、今ではスヴァルトアルフヘイムのドワーフやダークエルフは勿論、ヨトゥンヘイムの巨人族までも優位ではないにしろ自分達の国を守るまでの力を付ける事が出来た。

私の国、エイル王国もその力を付けた国の一つだ。


「ライラ!」


後ろから私を呼ぶ声がする。

聞き慣れたその声のする方向に身体を向けた。


「どうしたの?」


「もう! どうしたのじゃないでしょ。隊長から連絡。任務だって」


肩まで伸びた栗色の髪の一部を後ろで纏め、ハーフアップにした髪の毛を揺らしながら問いただしてくる。そのやや垂れ目な碧眼は何時もの優しさはなく咎めるような視線を私に向けてきた。

彼女の名前はオリヴィア・ラングナー。

私と同じ部隊に所属している幼馴染である。


「―――本当だ」


「はぁー......。朝ごはん食べてからでいいって書いてたけど、貴方の事だから絶対気付いていないと思ったわ。お願いだからもうちょっとしっかりしてね?」


「オリヴィア」


「? どうしたの?」


「ご飯食べに行こう」


「......そうね」


こちらまで気の抜けそうな程おおらかな性格に中てられ、ほっと息を吐くと改めて落ち着いた有様でアリアの言葉に答えた。






二人は並ぶと食堂に足を進める。


「相変わらず空いているわね」


「王直属部隊専用だから」


百人以上入る食堂には十人程しか人はおらず、天井のスピーカーから流れるクラシック音楽はせっかく目を覚ました私の眠気を誘う。


「寝ないでね? ......」


「......分かってる」


先を読むようにオリヴィアは私に対して注意をしてきた。

眠っていないとオリヴィアに見せ付ける為に何時もより少しだけ瞼を開き、注文口へ早歩きで向った。


「ちょっと待ってよ」


朝食は何時もビュッフェ方式。

多彩な料理が並ぶ中で私はパンとコーヒー、それと目玉焼きとベーコンを皿に載せた。


「ライラって何時もそれよね?」


「出来れば朝は何も考えたくないから」


「―――私もそれにしよっと」


オリヴィアも私と同じように皿に載せると二人で席へ向った。

途中、同僚に挨拶を交わすと席に座る。


「任務って何だろう」


「さぁ、私達に降りてくる任務なんだからよほど重要なものなんでしょう」


コーヒーで喉を潤しながら任務についてオリヴィアに質問を投げ掛けた。

だが、オリヴィアも詳しくは知らないらしく、手でパンを千切り口に入れながら当たり障りのない返事する。


私達の部隊。王直属部隊グングニルはその名の通り、他のどの部隊には属さないエイル王の部隊だ。

任務の内容は王やその親族の護衛は勿論、危険人物の暗殺、敵対国家への工作といった通常の部隊では行えないような難しい様々な任務を主にこなしている。

だからなのか、他の部隊より待遇が良く、隊員が生活する為の個室、専用の食堂や訓練施設といったものは勿論、通常の兵隊の数倍の給料に更に任務成功時には多額の報奨金が受け取ることが出来る。さらに、グングニルの入隊試験で合格し、入隊した時点で子爵の爵位を授与され、貴族になる事が出来るのだ。

その為、毎年入隊試験を受ける人は多く、その全員が落とされるといったことはざらにある。

それ程難しい試験なのだ。

そして、度重なる試練に合格し、最終試験に合格することが出来たら証としてエイル王。ディビット・ニコライ・エイル国王陛下直々に背に王家の紋章が刻印されたコートとバッジ、それから宝飾された剣が授与される。

つまり、王直属部隊グングニルの隊員は超が十個付く程のエリート集団。一人一人が一騎当千の猛者達なのだ。


そんな猛者の一人であるオリヴィアと私はゆっくりと朝食を楽しみ、コーヒーを飲みながら他愛の無い話をする。


「二人は?」


「―――何時も通り。アランは実家で妹と朝食。アレクサンドラは寝坊」


二人とは同じ班の隊員のこと。

アラン・リーリァは私達の班の仲で唯一の男性であり最年長者。重度の妹好きで個室で寝ずに何時も城下町の実家に帰っている。

うってかわってアレクサンドラ・スクルネンは最年少者。入隊試験を十五歳。最年少で合格した天才。驚くほどメリハリが付いており、任務の時は頼りになるのだが、任務外だと自堕落で面倒くさがりの上、めったに部屋から出ない引き篭もり(ニート)である。

そこに私とオリヴィアが入り四人で一斑として任務にあたる。

因みに今は十班まで存在し、全体的な指揮官である部隊長を合わせ合計四十一人が今の部隊の人数だ。


「起さないでいいの?」


「大丈夫よ。貴方と違ってあの子はそう言うところきっちりしているから。私が部屋に行く前に『後五十分。食べたらもかえにけて』って連絡きたわ」


「もかいにけて......」


「半分寝ながら文字を打ったんでしょ」


「それぐらい察して上げなさい」と言いながら相変わらず綺麗な姿勢でカップを傾けた。


「―――」


私はそんなに抜けているだろうか。

確かに人より少しだけ抜けてるような気がしなくはないが、こうも正面から言われると自分が心配になってくる。


そう考えている内にコーヒーを飲み干してしまった。


「じゃあそろそろ行きましょうか」


「......うん」


トレーを片付け私達は食堂を後にした。






「アレク! アレクサンドラ! もう、朝ですよ! 起きなさい!」


「起きなさい」


場所はアレクサンドラの自室の扉の前。

オリヴィアは扉を叩くようにノックをし、早く起きるように促す。


「大丈夫大丈夫。今着替えるからちょっと待って」


すると、小さな声が聞こえ。それから更に暫く待つと、扉が開いた。

幼さが残った可愛らしい顔立ち。前髪を頭の上で止めたポンパドールの薄い緑色の髪はボサボサで、桜色の瞳は完全に睡魔が引ききっておらず何処か眠たげである。


「ちょっとコートは?」


隊員は自室から出る時はコート、バッジ、宝飾剣の最低一つ、目に見えるように持っていないといけない。これは、有事の際誰が見てもグングニルの隊員と分かるようにと言う理由の他に、自分自身が名誉ある王直属部隊の一員である事を忘れない為でもある。

そんな訳でどれか持っていないといけないのだが、剣は邪魔、バッジはなくしたら面倒。必然的にみんなコートを選ぶのだ。持っていさえすれば着方は自由なので各々好きなように着ている。私も戦闘になった時に直ぐに脱げるよう袖を通さず羽織っている。


「あ......―――あった」


「ちゃんと洗ってるの?」


「失礼な洗ってるよ......多分」


「はぁ......行くわよ」


「はいはーい。―――アランは?」


アレクは欠伸をしながら、コートを肩にかけるように持つと手首に付けている端末を扉のドアノブ部分に翳し、部屋に鍵をかける。


「先に作戦会議室(ブリーフィングルーム)に行ってるって」


「そうなんだ。じゃあいっちょ頑張りますか」


私が端末で確認しながらアレクに教えるともう一度大きく口を開けながら「ふ~ん」と中途半端な返事をした。


オリヴィアが寝惚け眼でフラフラ歩くアレクを真っ直ぐ歩くように促しながら普通に歩くと到着する二倍の時間を要しながらやっとの思いで目的の作戦会議室(ブリーフィングルーム)に到着した。

扉の前には灰色の髪をした青年が腕を組んで立っている。


「遅いぞ」


「ごめんね。アレクが真っ直ぐ歩いてくれなくて」


オリヴィアがそう言うと青年はアレクの正面に立ち、見下すように未だに虚ろ虚ろしているアレクを睨みつけている。


「やっぱりお前のせいか......」


「―――何だ、誰かと思ったらシスコンか」


「ああそうだ、シスコンのアランだ。そう言うお前は引き篭もりのクソニートのアレクサンドラか」


「ああそうだ、引き篭もり天才ニートのアレクサンドラ様だ」


そう言うとアレクはアランの足を勢い良く踏みつける。


「いっ! このクソガキ!」


「やんのかシスコン!」


お互いにお互いを睨み合い、犬猿の仲と言う感じのピリピリとした空気が二人の間に漂っている。

何時もの出来事にオリヴィアは呆れた様子で首を振ると手を叩き、二人の争いを中断させる。


「ほらほら! 隊長を待たせてますから早く入りましょうね!」


二人を押すように扉の前に促すと、扉は独りでに開く。

中断されてもしばらく睨み合っていたが、二人同時に目を背けそのまま部屋の中に入って行った。


「失礼します。オリヴィア・レングナー以下三名。第一斑。只今到着しました」


「来たか。―――掛けたまえ」


手に持っていた本を閉じ、机の上に置く。

今まで喧嘩していた二人は隊長を見るや否や切り替えるように今までの空気を霧散させ、表情を引き締めた。アレクは持っていたやや大きめのコートに袖を通し、跳ねた髪を手で軽く整える。

なんだかんだ言っても彼らも部隊の隊員。仕事を円滑に進めるために弁えているのだろう。


「それではこれより作戦の説明を始める。―――イングリット」


席を立ち上がり、大きな画面の傍に立つと反対側の席に座っているイングリットと呼ばれる彼女に開始の合図をかける。

イングリットは銀縁のメガネの位置を整え、机の端末を操作した。


「今、(ちまた)で流通している違法薬物、別名『ブラックパウダー』をご存知でしょうか?」


「あぁ。今朝も一人密売人が捕まっているのを見た」


「名前の通り真っ黒なんでしょ?」


アレクは机の上に置いてあった資料を読みながら言った。


「そうだ。他の薬物と違いこいつは黒い粉状の薬物。一度服用したら気分が高揚し、身体能力が上がり、集中力が高まる」


アランとアレクに隊長が説明をする。


「気持ちが良くなって、強くなる事が出来る......」


「まるで魔法の薬ですね」


「そんな都合の良い薬存在しない」


「エインへリアルさんの言う通り、ブラックパウダーには強力な副作用が存在します。吐き気やめまい、筋力や記憶力の低下。その上に依存性を非常に高く。そのお陰で流通し始めて直ぐに爆発的に広まりました」


「今回の任務はこの薬物に関係があるんですね」


「はい。今回、ブラックパウダーを精製、出荷をしている胴元の組織にエイル王国警邏警戒捜査隊が突入し、トップを押さえることが出来ました。そのトップを尋問したところ、生成方法の入手先である研究所の存在確認。密偵を送り裏を取りました。―――その時撮った写真です」


イングリットが端末を操作し、密偵が撮った写真を流す。


「うわ......」


「これは......」


「非人道的です......」


「酷い、人体実験......」


私を含めて全員が言葉を失う。


写真の中には年端もいかない少女が四肢と首にチューブの様な物に繋がれ、部屋に監禁されていた。


「次は動画を流します。一部残酷な場面があるので注意してください」


そう言うと画面に動画を映す。




『あぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛ぁあああああああああっぁああっっ!!!』


先ほどの写真の少女がガラスの向こう側で悲鳴を上げながら拘束している右腕のチューブを引き千切り、こちらと仕切られているガラスを勢い良く殴り付けた。

すると、分厚いガラスにヒビが入り、砕け穴が開く。

長い黒髪の間から覗かせる目の端から涙が溢れており、その瞳は淡く輝きを帯びていた。

そして、場面が変わり少女の身体に薬が流されている。

少女はガラスに頭を打ちつけ額から血が顔を伝い、床に滴り落ちていた。


『もうイヤだっ! 誰か殺して! 殺してよ!』


「素晴らしい。予想以上の成果です。被験者六六六。今はおやすみなさい」


そして、少女はそのまま床に倒れ落ち意識を失ってしまった。


そこで動画は途切れる。






「「「「......」」」」


余りの映像に私達は言葉を失った。


「物凄く違法だね」


「今まで見つからなかったのが不思議なくらいだ」


確かに。見るからにお金の掛かった設備だった。動画の中だけでも銃を持った兵士の様な人と研究員が見える。

違法組織がここまで人材と施設を用意出来るわけがない。裏で莫大な資金を提供している誰かが居るのは火を見るより明らかだ。


「裏に何かいると思う。じゃないとこんな施設を運用するのは不可能」


「動画の子もしかして覚醒者(・・・)じゃない? この実験って能力(・・)に関係あるのかも」


「そうだな。恐らくこの研究所の裏には莫大な資金を提供する何かが存在する筈だ。それに、能力の研究をしているのは断定できないが、関係している可能性は否定できない。何にしてもこの施設の情報を漁れば何かしら出てくるだろう」


「つまり今回の任務は―――」


オリヴィアはイングリットに視線を向けると頷いた。


「はい。今回の任務は当施設に侵入し、抵抗勢力を制圧です。アレクサンドラ・スクルネン、アラン・リーリャ、オリヴィア・レングナー、ライラ・エインへリアル、以下の四名第一斑は作戦開始地域まで魔道強化外骨格(パワードスーツ)ハウンドで移動。事前に密偵に進入路を開いているのでそこから進入してください。また、情報収集も目的の一部なので施設を破壊しないようにお願いします。作戦指揮官は隊長。作戦補助には私、イングリット・アーデルヘイトの第六班が担当いたします。作戦地域は―――」


イングリットが読み上げる機密作戦文書を私達四人は頭に叩き込み、作戦内容、持って行く装備品、作戦開始地域への到着時間などを頭の中で復唱する。


「ディビット陛下の命令は既に下っている。グングニルは必ず敵を貫き、持ち主が何処に居ようと必ず主人の下に帰ってくる。その名に恥じない働きを諸君らに期待する。以上解散!」



























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