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例え偽りの景色でも

 今回少しキリが悪いです。8月19日細かな修正を行いました。

 2022/04/03 文章の改稿をしました。

 2022/08/11 文章の改稿をしました。

 目を覚ました時にはズタズタになった死体も穴の空いたガラス壁も原型を留めていなかった腕も全て元通りになっていた。

 

「―――」


 ベッドに仰向けに寝た状態で、腕を天井に掲げ。半ば放心状態で見つめる。

 

 傷どころか、痣やシミもない綺麗な腕と手。

 長い間太陽の下に出ていないせいか、すっかり白くなってしまった肌。

 

 ふと周りを見渡した。


「変わってる......」


 部屋が広くなってる。

 どうやら、気を失っている間に違う部屋に運ばれてしまったようだ。


 僕が暴れたせいであの部屋が使えなくなったからかどうかは分からないが、兎に角部屋が広くなったのは確かだ。


「......ん?」


 身体を起すと何時もとは違う不快感。

 何時もの繋がれている管とは別に部屋の中心から伸びてある二つの鎖が足の首輪に溶接されていた。

 急造品と言った感じで雑な溶接跡やどことなく不格好な感じが手作り感があり、それは正に猛獣を繋いでいるような大きなモノだった。

 大方、僕が予想外の力で暴れたから拘束する器具を増やしたのだろう。


「......」


 家具も前の部屋と同じようなものが置いてある。


 一通り確認すると、そのまま、後ろに倒れ壁の方に身体を向ける。


 また、泣いてしまった。

 

 此処に連れて来られてから、ずっと泣いているような気がする。

 理不尽による理不尽。

 今まで味わったことが無い地獄のような日々に精神的がすり減り続け、自分の心は限界を迎えていたのだろう。

 

 その結果があれだ。


 自分が自分じゃないような暴れよう。

 思い返すだけで怖くなるほど殴り続けたのに、身体は問題なく動く、薬物を打ち込まれた時の痛みを除いたらここに来る前より寧ろ軽くなったような気がする。

 精神面でも同じ。

 幾ら打ちのめされても時間が経つとまるで何も無かったかのような状態に戻ってるのだ。

 

 そう、まるでここに来る前。平和だったあの(・・・・・・・)日のような(・・・・・)


 そうこうしている内に、天井から伸びている管から様々な色をした液体が流れてくるのが見える。

ゆっくりと透明の管の中を液体が流れ、首に入っていく。


「うぅううあああああああああ!!」


 激痛が走った。身体の内に虫が這いずり回るような感覚、中から食い破られそうなそんな痛みが絶え間なく続く。

 ベッドから転げ落ち、床に(うずくま)り、何処かの神様に早くこの地獄が終わるよう祈る。


 転がった拍子に鎖や管が身体中に絡まった。


「なんで! 何で僕ばっかりこんな目に!」


バキッ!!


 床に着いた指が力を入れすぎたせいで折れ曲がる。

 骨折した箇所から骨が飛び出し、血がしたたり落ちている。

 のた打ち回り、壁に頭を打ちつけ指とは別に、額から血液が流れ出る。 

 普通なら痛みで更に苦しむハメになる。

 しかし、今の僕にはそんな痛みは痛みに入らなかった。

 ただ、何かをして気を紛れさせないと、何かが壊れるような、そんな恐怖が僕を奇行に走らせた。


 一体どれだけ時間が経っただろう。


 薬物投与が終わったのか、次第に痛みが引いていく。喉が裂ける程叫び、身体が壊れるほど打ち付け疲れた僕はその場に沈むように倒れた。


「はぁ......はぁ......」


 少し大きくなった扉からぞろぞろと白衣を着た人達が入って来たのが分かる。そして、数人。研究者を囲むように兵士達が現れた。

 先頭にはあの青髪の男がいる。


「おばえっ!」


 まただ。

 小さな種火にガソリンを注いだかのような爆発的な怒りが突如込み上げてきた。


 疲弊している筈の身体が驚くほど速く動き、青髪の男に向かって駆けだす。

 だが、寸の所で足の鎖が邪魔をする。

 鎖がピンと張り詰め、顔から床に倒れてしまった。


『『『ひぃぃぃっ!!』』』


 青髪の後ろにいる研究員達は僕に怯え、尻餅を付いたり、泣き出す人もいた。兵士達が青髪を守るように前に立つと小銃をこちらに向ける。

 ちょっと前の僕ならば驚いて目の前にいる研究者達のように尻餅を付いて泣いていただろう。もしかしたら恐怖の余り失禁するかもしれない。

 だが、今なら不思議と怖くない。

 今確かに心の中にあるのは殺意だけだった。


『こんにちは六六六』


 青髪は意識を失った時の様な不快な笑顔をしている。

 声が出ない僕はせめて敵意を表そうと倒れたその場でうつ伏せのまま研究者達を睨み上げた。


『今日はそのお礼を言いに来たんだ』


 殺意を込めた視線を気にせず、丁寧な言葉遣いで話している。

 

 声を聞くだけでも気持ち悪くなって来た。


『君はいつも僕の期待の更に上を応えてくれる。今まで何人も実験をしてきたが、君ほど優秀な子供は出会ったことがない。僕は神様と言う者を信じはしないが、もし神様がいるのなら今僕に微笑んでいるのかもしれないね』


 そう言いと僕の頭を撫でた。僕はその手を掴もうと手を伸ばすが、避けられてしまう。


「う゛ぅ゛ぅ゛ぅぅっ!」


 鎖を引き千切ろうと足に力を込めた。

 金属が擦れる音と肉が裂ける音が部屋に響く、すると、研究員達全員が青い顔に変わり悲鳴を上げながら扉の方向に我先に走りだす。


『う、嘘だろ!? あの鎖は特別製だぞ!?』


『千切れる! この部屋から出ないと皆殺されてしまう!!』


『能力を使えなくしている筈なのに!』


『だから言っただろう! あれはまだ試験段階の代物だと!』


『邪魔だどけ! 俺が先だ!』


 足が千切れても構わない。

 今の僕は何を失おうが目の前にいる大人達を殺す為なら惜しくはなかった。


 軋む鎖は遂に歪み始め、床の接着部分が重々しい音が聞こえだす。

 だが、目の前にいる青髪の男はまったく怯えた様子がなく。逃げ惑う研究員を見ながら落胆した表情を浮かべていた。


『まったく......。不甲斐ない研究員ばかりでごめんね? また、時間を見つけて此処には顔を出すから。それまでいい子にしていなさい』


 もう少し、もう少しで足か鎖がちぎれる。そうすればお前の身体を引き裂いてやれる。後ろの奴らも一緒に殺してやれる。


 だから待て。

 

 逃げるな。


「逃げるな! 逃げるなこの人でなしいぃぃぃっぃっ!!


 扉が開いた。

 急いで逃げる研究員達。ゆっくりとした足取りで出て行く青髪。

 名残惜しそうに僕の顔を見ながら出て行ってしまう。それに続いて銃を持った奴らがこちらに狙いを合わせながら青髪の動きに合わせるように後退して行く。

 

 そして、部屋には僕一人になった。


「ッ! ―――」


 悔しさで顔を歪ませ涙がにじみ出る。

 また泣いてしまった。不甲斐ない。情けない。己の無力さを呪いながら、自身の運命を恨みながら

そのまま立ち上がらずにガラスの方に身体を向き直すと身体を丸めた。

 これが、全て夢であって欲しいと願うと僕は目を閉じる。






「......」


 目が覚めると傷付いていた足が綺麗に治っており、寝ているすぐ傍には食事のトレーが置かれていた。

 僕はトレーを一瞥すると足をすりながら部屋の端に歩き、足を抱えた。


 気が付かない内に胸が膨らんでおり、二つの塊が足を抱えるのに少し邪魔だ。


「またか......」


 僕の身体、どうなってるんだろう。困惑しながら片手でトレーを手繰り寄せ、飲み込むように食事を済ませる。

粘度の高いドロドロのペースト状の何かが喉を伝う感覚が不快で飲み込む度に鳥肌が立つ。しかし、幾ら嫌でも栄養を取らないと死んでしまう。いいや、今の自分ならあるいは餓死で死ぬことはないかもしれない。だが、これ以上苦しいのは絶対嫌だ。だから、嫌でも胃の中に詰め込んだ。


 何時もの様に薬を打たれ、また耐える。暫くしたらまた楽になる。そう思いながら虚ろな目で見上げた。

 伸びきった髪の隙間から見える白い天井には、おそらく監視カメラだろう物体が天井の中心に取り付けられており、光が僕のいる方向に常に向いている。


 何時の間に取り付けたんだ?


 いや、前から付いていたのか......。


 そんなくだらないことを考えながら、それを無意識に目で追う。

 

 そうしていると首輪の痛みが走った。多分、カメラの向こう側に居た誰かが流しているんだろう。

そのまま両腕でを抱えるように痛みに耐えた。



 扉が開いた。



 銃を持った人たちが入ってくると即座に照準を合わせ、発砲。


 手の平で突かれたような衝撃と共に力が抜け、地面に崩れ落ちる。


 意識が朦朧とする。


 頭に靄がかかったように上手く考えることが出来ない......。




 倒れて動かなくなった僕を確認した兵士達は身体から管と鎖を外し、両手に大きな手錠を付けられる。

 そして、二人に脇を抱えられ足を引きずるように部屋の外に連れて行かれた。

 前に一人、後ろに二人。常に銃口を向けながら連行された。

 初めての部屋の外に何も感じない。

 白い廊下。

 何人もの研究者が僕に道を明けながら小走りで横切っていく。

 そして、笑いながら子供達が遊んでいた。


 ―――......幻覚か?


 走っていた足を止め、抱えられている僕の方をみんな見ている。


『綺麗な髪......』


『黒い髪なんているんだね』


『なんだお前知らないのか?』


『知らないって何が?』


『怖いよ。早く行こうよ』


 子供達は口々言うと僕が連れてこられた道を走っていった。


 何でこんな所に子供が。

 首輪もしていない。

 苦しそうな様子もない。

 みんなが笑っている。手を繋ぎりながら走り回 り、大人が混じって追いかけっこをしているのも見えた。


 幸せそうだ。


 胸の底で何かが芽生える。

 嗚呼、まただ。

 感情が誰かに切り替えられるような不快な感覚。

 身体中に力が溢れ、疼く。

 手足が制御できず、痙攣に似た動きを見せる。


 僕だけなのか? 僕だけがこんな目にあっているのか? 


 何で? 何で? 何で? 


 どす黒い気配が後ろから迫って来る。



 僕だけがこんな目にあわなくちゃいけないんだ。



 急に頭の靄が晴れた。

 身体の体温が上がってくる。

 心の底から湧きあがる憎悪が全身の血を沸き立つ。


「う゛う゛う゛う゛ぅうう」


『まずい! 薬の効果が弱まっている!』


『クソッ! 大人しく寝ていればいいものの! おい! 打ち込め!』


 両脇に抱えれた兵士達が腰のポーチから拳銃の様な形の注射銃(スティムピストル)を取り出し、それぞれ左右の首筋に打ち込む。


「......ふざけ゛る゛な」


 手で拳を作る。


『ダメです! 効いてません!』


『何だと!? こちら輸送班! 実験体を運んでいる途中に薬の効果が切れた! 至急応援を頼む! 今にも目を覚ましそうだ! 繰り返す! 応援を送れ!』


「ふざけんな! この悪魔共がぁぁっ!!」


 手首に付けた腕輪で仲間を呼ぶ兵士。

 僕を抱えている兵士はもう一度薬を打とうと空になったカートリッジを外し新しく装填する。


 しかし、注射銃を打とうとした時には僕の意識ははっきりとしており、腕を振りほどき注射器を兵士の手ごと握りつぶした。

 それから、腕を掴んだ兵士をもう一方の注射器を持った兵士に叩きつける。

 振り切った状態で手を離すと投げつけられた兵士共々廊下の壁に叩きつけられ風船が弾ける様に鮮血が辺りに飛び散る。


『こちら輸送班! 実験体が完全に目を覚ました! 兵士二人が負傷! このままでは皆殺しにされてしまう! 早く応援を送れ! ―――お前達! 銃の発砲を許可する! 撃て!! 撃てぇっ!!』


『首輪を起動させろ!』


『やってます! 何で効いてないんだ!』


 絶叫のような叫び声で他の兵士に命令を下しながら同時に素早く照準を合わせて引き金を引いた。

乾いた音が連続して廊下に響き渡り、大量の空薬莢が床に降り注ぎカランカランと軽い音が聞こえてくる。

 兵士達が発射した弾丸は僕の身体に命中した。だが、身体に伝わるのはトントンと指で突かれるような感覚だけ。

 撃たれた箇所は温かさが帯びる。

 ただそれだけだ。不思議と痛みは感じない。


 それが、何故か心地よかった。


 廊下に大きな警報が鳴り響き、子供や研究員は悲鳴を上げながら僕から逃げていく。

 遅れて他の兵士達も撃ち出した。

 全身から伝わる衝撃の数が増えた。

 しかし、今度は打ち放たれた銃弾は僕の身体の皮膚を打ち抜くことなく、手前で塵になっていく。


 不可解な事象に不思議に思っている最中も兵士達の銃弾は身体に届かない、あるいは壁に当たり跳ねた銃弾が僕を挟んで向かいにいた兵士達に直撃し倒れる。

 それを、虚ろな目で眺めていると銃弾の一発が額に直撃し、衝撃で後ろに倒れてしまった。


『こいつまだ能力を使いこなせていない! 今の内に処置を行う!』


 周囲の倒れた兵士達から滲みでるように血が溢れ出し、周りを血の海のように真っ赤に染める。

その赤い水溜りに倒れた僕は全身に血が飛び散り、白い服は一瞬で真っ赤な深紅の服へと変貌を遂げた。


『やったか?』


 動かないでいる僕に兵士達は構えながらジリジリと近づいてくるのが分かる。

 小銃を片手に、もう片手は腰に付けたホルスターから同じように注射銃を取り出している。

 すると、何故か兵士達の銃が軋みだす。段々と銃身が曲がっていく銃器に驚愕の表情を浮かべる男達。


『こいつ一体幾つ―――』


 兵士は最後まで言葉を言うことなく頭部が潰れ、倒れる。


『死んでないぞ!?』


『退避! 総員退避!!』


 遂に完全に折れ曲がってしまい、使える状態ではなくなってしまう。兵士達は即座に壊れた銃を捨て徐々に下がってくる退避扉に向かって走り出した。


 自由になった。これで動ける。

 

 今度はあいつだ、あの青い髪の男。

 あいつを見つけて殺してやる。グチャグチャにしてやる。


 

 ......あれ? 何時からそんな事考えていたんだっけ?



 ふと思い出すように頭の中に浮かんだ疑問。

 足を止め、考えようとした瞬間、黒い感情が疑問を飲み込み、怒りへと変化した。

 

「何でもいいや」 


 今の僕には逃げると言う選択肢は無く。

 あの青い髪の男を見つけて殺したいと言う気持ちだけが、身体を動かしていた。


 分厚い退避扉。

 普通ならここで詰みだが、何故か僕は壊せる自信がある。目の前の分厚い金属板に触ろうと手を伸ばすと見えない力で金属は崩れ、ひしゃげ、穴が出来た。

 穴を通り抜けて直ぐ、通路に大量の兵士達がこちらに向って銃を向けているのが見える。


『撃てっ!!』


 耳が壊れるほどの銃声と共に無数の銃弾が僕を襲う。


 今度は身体を貫いた。

 しかし、痛みは僅か。

 いいや、あの痛みが強いだけで普通なら銃弾の痛みも十分痛たいのだろう。

 銃弾が命中した箇所がジワジワと血が滲み出て仄かに熱を帯びているのが分かる。

 幾ら撃っても倒れない僕に驚く兵士を他所(よそ)に兵士が密集している所に向って駆けた。

 途中で何度も、何度も撃ってきた。

 その度に大雑把に避け、命中した銃弾を数発に抑える。

 十メートル......五メートル......一メートル......遂に兵士達へ辿り着く。

 拳を作り、躊躇も無く殴りつける。


『ぎゃ!』


 肉片が辺りに飛び散り、臓物と血が他の兵士の身体に振りかかる。

 二人、三人と数秒の内に兵士の命を砕いた。

 反撃が出来ず、悲鳴を上げながら死んでいく命達に「ざまぁみろ」と思いながら殴り、蹴り続けた。

 約半分程の兵士達を殺し終わると気の狂った一人の兵士が爆弾の安全ピンを引き抜いた。


『バカ! お前なにやってるんだ!?』


『し、しに、死にたくない!!』


 撃つのに夢中で多くの兵士達が気付いていない。気付いている兵士達は我先に逃げようとするが、気付いていない人がその邪魔をして、逃げることが出来ない。

 ついに逃げることが出来ず、爆発した。

 叫んでいた兵士達の四肢は辺りに飛び散り、僕も衝撃で扉に激突し部屋の中の壁に激突した。


『ひぃっ!』


 頭を打ち、キーンと高い耳鳴りが頭に響く。

 それも、一瞬で鳴りやみ、身体の傷がなくなっているのを確認すると立ち上がり声の聞こえた方向に目を向ける。

 

 そこには子供達が居た。

 

 怯え、必死に声を抑え、部屋の隅に固まっている子供達を守るように僕と同じぐらいの子供達が座っている。


『こっちへ来るな!』


 子供達の一人が傍にあった本をこちらに向って投げてきた。勢いがなく足に当たってポトリと足元に落ちる。


「......」


 見下ろすとその本は絵本だった。

 丘の上に少年と少女が座り、空を見上げている絵。

 もうずっと見ていなかった外の景色がそこにはあった。

 膝を付き、その絵を手でなぞる。


「あれ......」


 ......何やってんだ僕?


 どす黒い感情が波のように引いていき。

 自分の身体が戻って行ったような感覚を感じながら、死んでいた心が少しだけ温かさを取り戻したような気がした。

 

 絵ではあったが、物凄く綺麗だった。


 血塗れの身体で構わずページを捲る。

 澄み渡った青い空、真っ赤に煮えたぎった火山、野鳥が飛び交う青々と生い茂った山。色々な場所を旅する少年と少女が堪らなく羨ましかった。


『......ねぇ。貴方、泣いているの?』


 怯えた子供達の中の一人が話しかけてくる。

 子供の方を見るとふと頬を伝う感触を覚えた。

 手で掬いそれを確かめるとそれは紛れもなく自身が流した涙。


 あれほど殺したいと思っていた思考が完全に霧散した。


 夢中で絵本を見ていると次第に子供達の警戒が解け、僕の近くに近寄っていた。


『綺麗な髪』


『髪で隠れて見えなかったけど綺麗な顔してる......。お姫様みたい』


 髪を撫でたり、顔を覗き込んでくる。


『見つけたぞ!』


 兵士達が部屋の中に雪崩れ込んで来て、後ろから押さえ込まれる。


「ッ!!」


『キャッ!』


『子供達をそいつから離せ!』


 注射銃を首筋に打たれ、気を失ってしまった。






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