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黄金の瞳

遅くなりましたが新年あけましておめでとうございます。お久しぶりです。十数年使用していたPCが天寿を全うしましたのでこの度、新たにPCを買い替えた為届くまで執筆活動が出来ない状況にありました。

これからボチボチ活動を再開していきますので、どうぞよろしくお願いします。


「会議を始めます」


泊まっている建物に帰って直ぐ、職員を呼び出し今後の予定についての説明と打ち合わせを行った。さっきまでの中佐の説明を職員達にすると六六六の状態について聞く。


「身体魔力値共に良好。安定しています」


「因子の適応値も依然変わらないまま。いいえ。それよりも高い数値を出しています。まるで、移植する前の本人の数値を測ったような感じですよ」


「本人も大人しく暴れる様子はありませんでした。予定の変更に支障はないと思われます」


「現状六六六は能力を百パーセント引き出せると思う?」


「何とも言えませんね。適応値や魔力値を見る限りだと可能だと思われます。しかし、能力の出し方は個々人によって様々......。以前使用できるようになった念動能力(サイコキネシス)なら兎に角、今回使用するのは初めてですから......。不測の事態が起きる可能性は十分ありえます」


この実験には不確定要素が多すぎる。十分とは言えない設備に職員。事前に変わる予定。幸いにも六六六が安定しているが、不安定になる要因は少ない方が良い。いいや。限りなくゼロにしておくべきなのだ。それなのに、実験の一環であるとは言え戦闘へ投入。最悪、他国に被検体の存在を知られてしまう恐れがあるにも関わらずだ。

一体、所長は何を考えているのか。私には分からない。まるで、つり橋を目隠しで歩かされている感じがする。一歩間違えば、途端に全てが壊れてしまう。そんな危ない感じが......。


「主任? どうかなさいましたか?」


「―――いいえ。何でもないわ。不安な事しかないけれどこれは所長の命令。頑張って最後までやりきりましょう」


「「「はい」」」


「じゃあ次に持っていく薬品の事で―――」


それから、細かな所を詰めていると気が付くと一時間も時間が経っていた。職員達からの食事の誘いに断りを入れると、あの子の居る部屋に行く。


「―――......中佐?」


「先ほど振りかな? さっきはきつい言い方をして悪かったね」


部屋から出て直ぐに前から中佐の歩いている姿が見えた。軍服ではなく私服で歩みを進めるその姿はまるで遊園地に行く子供のような軽い足取りだ。


「中佐はどうしてここに?」


「あの子から聞いていないのかな? 少し時間が出来たのでね。こうして会いに来たのさ」


「私の許可なく六六六に接触を持つのはお止めて下さい」


「あの子はロプト帝国の資金で出来た研究所で生み出された物。つまり、ロプト帝国の物であり、ここの支配者である私がどう運用しようがそれはロプトの意思であり君にどうこう言う権利はない筈何だけどね」


一遍の悪意のない、まるで子供と話す大人のように話す。その言動に思わず顔を顰めた。


「確かに六六六はロプトの所有物です。しかし、今あの子の維持や管理は私達研究所に一任されています。その研究所主任である私があの子に会うのはお控え下さいとそう申し上げているのです」


「それは、君が私に当て付けで会うのを禁止しているのかな? それとも他に理由が? 良ければ教えて欲しい」


「私個人的に中佐に何の恨みもありません。ただ、大事な実験の直前に安定を脅かす要因を排除して起きたいだけです。ご理解下さい」


「―――致し方なし......か。よろしい。今回は君の言う通り会うのは控えることにしよう」


中佐は『しょうがないしょうがない』と言いながら踵を返し、元来た廊下を戻って行く。それを見届け、はぁっと小さく溜め息を吐くとあの子の待つ部屋へと向かうのだった。






足を投げ出しベッドに倒れこんでいる僕。ここは兎に角やる事がなく暇で暇で仕方ない。暇だから外に出ようと言う訳にはいかず、狭い部屋をぶらぶら歩くしかない。それも直ぐ飽きてしまいどうしようかベッドで寝ながら考えていた所にハンナがやって来た。


「今日の実験夜に変更になったわ」


「そうなんだ」


興味なさそうに答えると、ハンナは小さく笑った。


「明日には帰れるから我慢してね」


「うん」


そう言いながらバタバタと足を動かす。隣に座るハンナを見るとゆっくり起き上がり髪の毛を整えた。


「暇つぶしの道具持って来れば良かったわね」


「―――今何時?」


「えっと......二時を少し回った所ね。六時から移動を始めて十一時に始めるわ」


「結構移動するんだ」


「そうね。でも車で移動するから貴方は寝ていても良いわよ」


「あの格好で?」


「そうね。少し寝づらいかもしれないわね。―――私が膝枕して上げましょうか?」


あの拘束具を付けて寝ている姿を想像し、顔を顰める僕にハンナは少し考え、僕に提案をしてくる。

その顔を見ると冗談を言っているようには見えない。

本気で言っているのか? この年で年上の女性に膝枕をされるのは流石に色々と不味いような気がする。僕だって身体はこんなでも心は男。何も感じない訳ではないのだ。


「―――............やめとく」


思考を巡らせ結論を出す。ハンナは『そう?』と一言言うと


「そう? でもして欲しくなったら何時でも言うのよ?」


「うん」


それからしばらくハンナと雑談を交わすと、他の研究員が呼びに来て連れて行ってしまった。


「......寝るか」


別に眠たくないのだが、時間が有り余って仕方ないから僕は眼を閉じた。不思議とすんなり夢の中に入る事が出来たのは良かった。







「―――ねぇ......」


どれだけ寝ていたのか分からない。虚ろ虚ろしていると、何処からか声が聞こえてくる。その声は何故か懐かしく、聞き馴れたそんな声。

自然と眼を開くとそこは白く空間。概念がないそんな世界。

何処まで続いているのか分からない程広大、いいや、もしかしたら直ぐ傍に壁があるかもしれない。見れば見るほど感覚が狂うような感じがする。そんな場所。

目を覚ました僕は声のする方向に視線を向ける。

そこには純白のワンピースに身を包んだ少女が立っていた。

病的に白い肌、黒いミディアムの髪。その顔立ち、姿、言葉、それは紛れもなく日本人のそれだった。

ただ、彼女のその黄金の瞳は日本のモノではない。その、金のように淡く光り輝く黄金びその瞳は不思議そうに僕のほうを見る。

庇護欲を掻き立たせる幼い顔立ちをした綺麗な少女。


「......」


呆けている僕の直ぐ傍にしゃがみ込み、両手を顎に当て見下ろしている。


「おーい。起きてるか少年」


「―――ここ何処」


「ここは君の心の中だよ」


「じゃあ、お前は誰だよ」


「君の心の中に住む妖精さんだよ」


そう言い自分を妖精だよ言う少女は笑う。


「ここに来てから変な事が良く起こる」


「そうだね。君の居ていた世界ではこんな事絶対になかったものね」


「っ! 日本人なのか?」


無意識に女性から距離を取る。僕の反応を見た少女は笑いながら立ち上がり、腰を下ろしている僕に向かって手を伸ばす。


「そりゃ知っているとも。君の心に住んでいるんだから」


自分の知らない所で何かが進んでいると思うとイライラする。


「いい加減にしろ! お前は誰で何でこんな所に僕が居るんだよ! はっきり答えろ!」


「コラコラ。レディーに向かってそんな事するものじゃないぞー」


僕は目の前の少女の胸倉を掴もうと手を伸ばす。しかし、彼女の身体をすり抜けそのまま顔から倒れてしまう。


「ちょわっ!」


身体の中を通り抜ける事を予想していなかった為間の抜けた声を出してしまう。


顔から火が噴出しそうな程赤くなる。それを見て少女は笑いを堪えながらまた僕に手を伸ばす。


「ちょわだって。ぷぷぷ」


心の底から恥ずかしい。


「もう良い! 早くここから出る方法を教えろ!」


どうせ掴めないと、伸ばした手を払いのけ自分で立つと、そのまま少女に詰め寄り出る方法を聞きだす。


「私が許可したら起きるよ」


「じゃあ早くここから出せ!」


「まだ話しが終わっていないじゃないかー。話が終わるまでは帰せないよ」


「なら早く済ませろ」


「君さ、まだ自分の力上手く使えてないでしょ?」


「力?」


少女は僕の周りを回りながら話し始める。


「そう、力。あっちの世界では祝福って呼ばれてるの。基本的には一人に一つ。持ってない人の方が多いの」


「一人に一つ? でも僕は―――「そう。君は複数使える」」


少女は正面に立つと指を指す。


「あなたは特別。貴方の身体には複数の力が眠っているわ」


「そんなの知るか! 早く元の所に返せ!」


「貴方、今のこの現状を変えたいと思わない? あんな所で身体弄られる一生でいいの?」


「っ!? ......」


「力を使いこなす事が出来たならあんな人達みんな倒すことが出来るよ? 倒すことが出来たなら痛い思いをしなくていいのよ?」


身体に電気が走る感覚。


いつの間にか忘れていたあの場所から逃げたいと言う思い。アンナやヘズと言う存在があの研究者達への怒りを薄めさせていたのだ。


そうだ逃げないと。力があるのなら誰も僕を捕まえられない筈だ。例え追ってきたとしても、彼女の言う通り倒せばいい。


「でもそんなことしたらヘズ達に」


「会えなくなるって? 良いじゃない別に。偶々一緒の場所に居たってだけの話でしょ? それとも今味わっている苦痛に耐えてまで一緒に居ていたいと思っているの? 一生、身体に薬を入れられて大人達の研究動物として一生地獄の苦しみを味わいたいの?」


「でも......」


「君が逃げたいと思っているのなら私が力を貸してあげる。君が今の状況から脱したいと願っているのなら君の中に眠っている能力を目覚めさせてあげる」


「......」


研究所(あそこ)で元の世界に戻る方法を考えるより、一度逃げてからゆっくり考えた方が良いと思うんだけどなー。あそこに居たら君死んじゃうかもしれないよ?」


確かにあの場所から逃げれるならそうしたい。しかし、逃げる事を考えると何故かヘズの顔が思い浮かぶ。その、穏やかな顔が思いとどまらせる。

頭の中で色々な事がごっちゃになり何が何だか分からなくなってくる。


顔を上げる。すぐ目の前に立っている少女はまるで全てを知っているかのような余裕に満ちた笑顔で「どうする?」と僕に問いかける。


「ひっ」


獲物を狙うかのように金色の瞳は僕の身体を硬直させた。


「ふふふ。可愛いんだからー」














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