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新手の気配は無い。
ヴァルゴはどこだ?
俺とモッキュ、2人の特殊部隊員は「惑星爆弾」へと近づく。
たどり着いた隊員の1人が爆弾をチェックする。
「大丈夫です。起動されていません」
隊員が言った。
安堵の表情だ。
次の瞬間!
空中から発射された一条のレーザーが、隊員の頭部を撃ち抜いた!
連射の2発目で、もう1人の隊員も撃ち倒される。
戦闘用のロボットポッドが、いつの間にか背後の空中に浮いていた。
俺のハンドガンがポッドを撃ち落とす。
「ジロー!!」
モッキュの叫び声!
俺が振り返ると、2階テラスに立った女の姿が目に入った。
ヴァルゴ!!
ヴァルゴの銃の弾丸が俺のハンドガンを弾き飛ばし、2発目が右太ももを貫いた。
くそっ!!
俺はその場に倒れた。
「ジロー!!」
モッキュが俺に駆け寄る。
「レオ、久しぶり」
ヴァルゴが言った。
「ジェミニが、ここを教えたの? あいつはバカだけど、この星を破壊するのは賛成だと思ってた。あなたたち、意外と仲良しだったのね」
ヴァルゴが、研究所に居た頃は生えて無かったブロンドのショートヘアをかきあげ、クスッと笑った。
「ヴァルゴ!!」
俺は吼えた。
「こんなことをして何になる!? 俺たちの過去は消えないぞ!」
ヴァルゴが首を横に振る。
蛇のような冷たい目で俺を見つめた。
「この星の存在そのものが、私たちの生い立ちを思い出させる。私たちが呪われた存在だと。この世界に望まれない子だと」
「違う! この星じゃない、俺たちの心の問題だ! 考えかたを変えるんだ!」
「レオは平気なんだね。羨ましい。私はダメだった。今でも夢に見る。厳しい訓練。研究所員たちの嘘の笑顔、励まし。そして『あなたたちは正義の戦士なのです』って言う所長の顔、声」
「こんなことをしなくても俺たちは乗り越えられる!」
「いや。あなたは間違ってる。さよなら、レオ。私の兄弟」
ヴァルゴが俺に銃口を向けた。
俺とヴァルゴの間に立ち塞がる小さな影。




