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向こうからは見えない強化ガラスの先に、拘束された1人の男が座ってる。
最後に別れたときはスキンヘッドだった頭には、黒い長髪が生えていた。
俺はジロー。
隣にはモッキュ。
モッキュは心配そうに俺を見てる。
「我々の開発した爆弾、仮に『惑星爆弾』とするが…」
惑星グスターヴの軍将校が、口を開いた。
「それを強奪した犯人グループの1人が奴だ。『惑星爆弾』はひとつで大型の惑星そのものを破壊する威力を持っている。我々は何があっても爆弾を取り戻さねばならない」
将校の軍人らしい鋭い瞳が、正面から俺の目を見た。
「我々の軍施設は、ほぼ壊滅させられ、3個の『惑星爆弾』が奪われた。応援に向かった部隊が大きな損害を出しながらも捕らえたのが」
ガラスの向こうに将校が顎を向ける。
「奴だ。尋問したが、何も口を割らない。だが、奴はあなたになら全てを話すと言っている。我々には時間が最も重要だ。犯人グループが『惑星爆弾』を使い、何処かの惑星を破壊するようなことがあれば、多大な人命が犠牲となり、惑星同士の外交問題にも発展しかねない」
将校の語気が強まった。
「あなたが名前を変えていたために、居場所を特定するのにかなりの時間が費やされた。早急に奴らの情報を訊き出して欲しい」
別にグスターヴ軍を助ける義理はない。
だけど、惑星をぶっ飛ばす爆弾なんて言われたら協力するしかなくなる。
もう、俺と交わることはないと思ってた過去が、後ろから突然追いついてきた。
「分かった」
俺は将校に頷いた。
「ジロー」
不安そうなモッキュ。
「大丈夫だよ」
俺はモッキュに笑って見せた。
仕方ない。
過去と向き合わないと。




