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俺の手刀が、ジェミニの銃を叩き落とした。
もちろん引き金が引かれる前に。
ジェミニの胸ぐらを掴んで引きずり倒す。
ジェミニの右腕をアームロックに極めて力を込める。
腕が折れる感触。
次は左腕だ。
アームバーで肘関節をへし折った。
ジェミニの上に馬乗りになって、両手で首を絞める。
「う…そ…だ…」
ジェミニが呻いた。
「お前が研究所の奴らを痛めつけるのに必死になってる間に、俺は増強剤を手に入れてた。気づかなかったのか?」
そう、ジェミニが引き金を引こうとした瞬間、俺はブレスレットから増強剤を血管に打ち込みブーストONモードになった。
「地獄に…送って…やる」
「それは俺の台詞だ」
俺は両手の指に更に力を込めた。
兄弟たちの絆を踏みにじった者に裁きを下す。
ジェミニの両眼が血走り、酸素を求めて全身がのたうつ。
あと、ほんの少し力を加えれば、この世の最後の兄弟は死んで、俺は本当の独りぼっちになるだろう。
「がはっ!」
ジェミニが大きく喉を鳴らして、息を吸い込んだ。
徐々に顔色が元に戻っていく。
俺が両手を離したからだ。
俺は立ち上がった。
ジェミニが落とした銃を拾う。
ジェミニは獣のようなスピードで、ジャングルの木々の中へと姿を消した。
「次に会うときは君を殺す」
ジェミニの声が風に乗って、微かに聞こえてきた。
これでよかったのか?
唯一の家族のような存在が消えてしまうのが怖かっただけなのかもしれない。
俺は天を仰いだ。
満天の星空が、今にも俺に向かって降ってきそうだった。
「ムニャムニャ」
モッキュが寝言を言いながら、俺の上に乗っかってきた。
かわいい。
そうだ、今の俺はモッキュの相棒、ジロー。
レオと呼ばれることは、もうない。




