23
メルタックはミーコの言葉に眼を伏せた。
「そうだ、君が正しい。私は罪人だ」
「怪我の治ったあんたは、ここの人たちに戦闘技術を教えたってことか。何で『教祖様』と呼ばれてる?」
俺は疑問を口にした。
「それは…」
メルタックは一瞬、言い淀んだ。
「彼らは戦う事を恐れていた。しかし、この星の状況では戦わねば、いずれ殺されるだろう。彼らの恐怖を軽減する為に都合の良い宗教感を取り入れた。仲間を守り、戦う事は神の教えだと…」
「ハッ」
ミーコが、また笑った。
床にツバを吐く。
「彼らは次第に訓練を受け入れ、いつからか私を『教祖』と呼ぶようになっていった」
全員が黙った。
チェイミーがモッキュにグイグイしてる。
「さあ、どうやって決着する? 俺たちは賞金首のあんたを連れていきたい。ミーコは…」
ミーコをチラッと見ると表情が少し落ち着いてた。
「『端末』を探してる」とミーコ。
「ああ、『端末』なら、この建物にある。案内しよう。私は君たちについていく。だから、彼らに危害は加えないで欲しい」
もちろん俺は、関係ない人たちを戦いに巻き込むのはゴメンだ。
メルタックが本当に俺たちに大人しくついてくるなら、良い落としどころだろう。
ミーコたちが案内される「端末」の場所へと、俺とモッキュも行くことにした。
ここを無事に出るまでは、離れないほうがいい。
もし、メルタックが嘘をついてたら危ない。
実際は悪いことは何も起こらなかった。
ミーコは「端末」から欲しがってた情報を引き出して、あとはメルタックが俺たちについてくるだけになった。
ここでまた、ひと悶着。
コミュニティの人たち、特にガスマスクたちが、メルタックが出ていくことに、なかなか同意しなかったからだ。
狂信的なまでにメルタックを崇拝してる。
弱かった自分たちに戦う術を教えてくれたのが嬉しかったのか、リンクさせたウソ宗教にハマり過ぎてしまったのか。
一時は、男たちが俺たちに襲いかかりそうな不穏な雰囲気になったが、メルタックの「罪を償ったら帰ってくる」の言葉で無理矢理、納得させた。
これは嘘だ。
メルタックの罪は、どう考えても生きてるうちに償えるものじゃない。
結局は、この嘘が決め手になった。




