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「私自身が一番驚いている」
メルタックが、部屋に入って最初に言った言葉だ。
鉱山施設の大きな建物の3階の1室。
部屋にはメルタックと俺とミーコ、モッキュにチェイミーが居る。
坑道で俺たちの前に現れたメルタックは「停戦」を申し出た。
俺は状況を計算した。
まず、このまま戦い続ければ奴らの人数(30人は居るかな)から考えて、こっちは手かげん出来なくなる。
この場所は広すぎて、人数が多いほうが有利だ。
一斉に攻撃されたら、モッキュとチェイミーが危険にさらされる可能性もゼロじゃない。
メルタックは生きたまま捕まえたいし…。
俺はミーコを見た。
ミーコが肩をすくめる。
2回、頷いた。
俺と同意見みたいだな。
「停戦を受け入れる」
俺の答えにメルタックは安堵の表情。
で、この建物のある区画まで、通路を奥へと移動してきた。
建物のあちこちに女子供や年寄りが居る。
俺たちといっしょに来たガスマスク隊よりも、この人たちのほうが多い。
コミュニティの非戦闘員?
どうやらメルタックはこの星での1年間の生活の中で、このグループのリーダーにまで、登り詰めたらしい。
メルタックが俺たちとだけ話したいとガスマスクたちに告げると、彼らはとても嫌がった。
やれ「教祖様を1人には出来ない」とか「こいつらは信用出来ない」とか。
少し時間はかかったけど、結局最後は「教祖様」メルタックの意見が通った。
で、俺たちはメルタックに続いて、ボロボロのソファーが2脚置いてあるだけの窓の無い部屋に入ったわけ。
「私自身が一番驚いている」
メルタックが言った。
まあ、こっちも驚いてる。
「爆弾から宗教に乗り換えた?」
俺の質問にメルタックは首を横に振った。
「君の言いたい事はよく分かる。私は最低の犯罪者だ。それは認める」
メルタックは、ソファーに腰かけた。
俺たちにも座るように促す。
スプリングが所々、飛び出してるから、全員が座るのに苦労した。
俺がメルタックの横に座り、ミーコが対面。
モッキュを抱いたチェイミーが、ミーコの横に座る。
「私の生い立ちなど君たちは聞きたくないだろう。とにかく私はひどい人生を送り、気がつけば爆弾で何人もの人命を奪っていた。その行為に強い喜びを感じていた。」
メルタックは、うなだれた。




