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「他の星は黙ってるの?星域連合は?」
「星連は何も出来ないよ。常任国家のひとつがザホーンに肩入れしてて、何も決められない。近隣の星々も無干渉。ザホーンは武力は強力だから。何よりシュトレルには資源が何ひとつ無い。何の得も無いのに助けてくれるお優しい星なんて居ないんだよ」
「そんな…」
モッキュの表情がまた曇る。
俺は抱き締める手に少し力を込めた。
「ザホーン帝国は『コロッセオ』のライブを盛り上げる為に、どんな犯罪者でも受け入れてる。どうやらメルタックも、そのルートで逃げ込んだみたい。他の賞金稼ぎに先を越されないうちに捕まえたい」
「うん」
「『コロッセオ』のルールでオートガンやレーザー系の武器は持ち込み禁止。警察も居ないからコンバットゾーンに入ったら最後、自分たちで身を守るしかない。実弾系で使えそうなのを見繕っておいて」
「ラジャー」
モッキュの顔は晴れない。
「モッキュ?」
「どんなに理不尽なことが起こっていても、ボクたちには世界を変えられないんだね、ジロー」
「モッキュ」
俺はモッキュの身体を動かして自分の方に向けた。
ギュッと抱き締める。
「正義や悪なんて立場で変わってしまう。モッキュは優しいから悲しくなるんだね。俺たちは自分の出来ることをするだけ。悪者を捕まえて賞金をもらう。そしてゴハンを食べる。モッキュは何も考えずに、こうして俺と仲良くしてればいい。ずっと一緒に居て、笑い合ってればいいんだよ」
「ジロー、好き」
モッキュが抱きついてくる。
「うん、俺もモッキュが好きだ」
そうさ。
何も深刻になることはない。
モッキュが居るじゃないか。
2人でメルタックを確保して、報酬でご馳走を食べよう。
いつものように必ず上手くいくに決まってるんだから。




