776回の転生の記憶が邪魔をしてくるとは......。泣
※誤字直しました。
PVありがとうございます。少しでも皆さんに読んでいただけるように書いていきます!
「一生ついていきます‼︎」
一生とは大げさすぎる。たかが余っていた服を渡しただけだぞ。それともモンスターは義理や人情に厚いのかと思い感心をしていると、イムは恥ずかしそうに【婚約指輪】を装備する。
......ん? え? 今何を装備した? 何かキラリと光るものだったような......。
少しだけ俺の思考が止まってしまった。再起動出来た時にはイムはすでに装備を終えている頃だった。
「イム、お前何を装備した?」
「はい。貴方が用意してくれたもの全部です」
貴方? この時ばかりはザワッとし、変な汗も出てきた。体は何かを察知しているようだ。その答えはイムの左の薬指にあった。
涙の理由、そして何度も繰り返し確認をしてきたこともそれで合点がいく。
俺はいつの間にかプロポーズをしてしまっていたようだ。
【文句は言わせないぞ。お前以外いないだろ】
亭主関白もいいところだ。出会って間も無い女性(少し前はスライム)に婚約指輪を渡すなど、恋愛初心者の失敗するテクニックじゃないか!
そして俺は好意を寄せてもらっていた分、成功してしまったが、大失敗だ!
レイラに文句が言いたい! レイラよ、婚約指輪くらい自分でどうにかしてくれ。確かにだ、俺も焦って確認もせずにアイテムボックスに入れてしまい、そのまま渡してしまった責任はあるが、普通なら遊者に返すべきだ。
絶世の美女を目の前にこんなことを言うと全世界の男を敵に回すとは思うが、俺にはまだ婚約を撤回出来る言い分がある。
俺がアクセサリーとして装備しているものは【勇者の証】であり、【婚約指輪】は未だに遊者の指に......付いていない。いつ外したんだあいつは!
常識というハードルをいつも超えてきやがる。
すると遊者は俺に近づき、俺の手の中に【婚約指輪】を渡してきた。
「いつかセブンにこの指輪を渡そうと思っていたんだ」
いや! 嘘だろ! いつかっていつだよ。今日出会ったばかりなのにいつかの表現はあまりにも不自然すぎるだろ! 分かりきった嘘をつくんじゃない!
「おいどんがデザインしたんでごわすよ」
嘘の玉手箱や‼︎ こいつらの目的はなんだ? 見え透いた嘘をついてまで手に入れたいものはなんなんだ!
「二人ともありがとう」
遊者とカルバンは頭を掻きながら、照れた表情を隠そうと努力している。このことから推測するに、二人は......
【ただ褒められたいだけだ!】
なんだ? その息の合ったコンビプレイは? いやお前らさっきまでイムを取り合うバトルをしてませんでしたか? そしてこの指輪、また生温かい。ということはイムと出会ってから外しやがったな。どこまで根性が曲がっているんだ。
イムは目を瞑りこちらを見ながら俺との未来を想像しているかのようだ。そう、俺はそのレールに乗らなければならない。
ニコルの村が目の前にある。あの村に行くためには俺はこの婚約指輪をはめるのが絶対条件になりそうだ。
(なんという選択なんだ!)
それを拒めば結果はおそらくこうだ。
イムが「私のこと遊びだったのね」と泣かれ、
カルバンに「見損なったでごわす」と言われ、
遊者「こんな美女をお前、ひどいやつだな。そんなやつとは一緒に旅は出来ない」
冒険を続けるためには自らのプライベートを投げ捨てなければならない。
遊者とレイラの関係を知り、伴侶を冒険に連れていくなと思ってしまっている節もある。
本来なら喜ばしいこと、ああ776回という過去がなければ何たる幸せな冒険ができたのであろう、俺は初めて776回の記憶を恨んだ。




