石神村の反対派の“ん”
「ごっめ~ん。弾切れしちゃった」
サバイバルゲームが始まる、とはいかず。
校内に侵入する際、拳銃の弾を全部打ち尽くしてしまった青チーム。これにより赤チームが拳銃を奪うことは不可能に。ゲームは引き分けに終わった。
魔王汽笛に会いに行こうとした赤チームは、ゲーム終了のアナウンスを聞き、釈然としないまま体育館に戻る。魅空が慌てて謝罪した。
「ごめんね。私のミスだよ~」
この時、休憩は考えた。魅空がわざと弾切れを引き起こした可能性について。彼女はなんとしても大晦日憩いに作戦がバレるのだけは防ぎたかった。勝率の分からないゲームを進めるよりも先に引き分けを確定したほうが後々プラスに働くのでは? と考慮したに違いない。そして実行したのだ。あの女狐め、と呟く。
魅空は頬を触りながら困ったように苦笑する。
「警察官はこのまま放置しておくから。後始末は任せていいかな~、憩いちゃん?」
「別に構わないけれど。あなたはどうするの?」
「それは~決まってるよね。私たちは今からお兄様に会いに行きます。レストと二人で」
「え?」休憩、驚く。
「ちょっと待ってよ石神さん。それは浅薄だよ。私はまだ全然準備できてなくて」
「ゲームの約束なんだから絶対強制じゃん。今から二人で会いに行くよ。精鋭三人は待機してて」
魅空がイースター、ゴーウィー、オボンに当面の資金を渡して彼らにさよならをする。
「ありがとうございますね。お姫さま」
「シェイシェイ」
「サンキュー」
最後にオボンが休憩の柔道を褒めた。
「素晴らしかた」
「いえいえオボンさんも石神さんに比肩する立派な殺し屋でした。今度は肩を並べて戦いましょう」
休憩は笑顔で返した。
強引な魅空の提案にあれよあれよと話が進み、休憩は気づくと魅空と二人っきりで石神村行きの新幹線に乗られていた。魅空の兄に会う、という約束のほかに、レストは魅空の仲間になる、という約束も入っていたので旅行を拒否はできなかった。憩いから「お土産は食べ物でお願いするわ」と命令された。
新幹線の車内。魅空の横の席に座る。売店で買った弁当を広げて箸で摘まむ。どんどん流れていく窓の景色を何も考えずに見つめ続けた。
少し経った頃合い。乗ってから10分後くらいだろうか。横の席にいた魅空が食べ終え、喋り始める。
「さて、そろそろ種明かししてほしいな~。正月さん?」
休憩は口をもぐもぐさせながらとぼける。
「もぐもぐ。なんにょこと?」
「う~ん。ミステリーでいうところの種明かし編かな~。正月さんは食べたままでいいから話を続けるね?」
「もぐもぐ。どうじょ」
「私は完全記憶能力を持っています。だからレストの言葉は一語一句暗唱できます。ついでに休憩の言葉も暗唱できます。だから、分かるんだよね、オボンと戦ったのはレストじゃなくて休憩だって」
なぜか休憩は身の危険を感じた。新幹線の中で逃げ場はない。口の中の食べ物を飲みこみ、箸を置く。
「石神さん。続けてください」
「でね~。そう考えるとおかしいじゃありませんか。なぜ無能力者の休憩がオボンに勝てたのか? それを解明すると、たぶんもう一つの謎も解明するんだよね」
さすがは石神魅空。勘の鋭いやつだと思った。
休憩は黙ったまま、魅空の言葉を待った。
「謎ってのは、あなたが今までのレストとも休憩とも違う語彙を使い始めたことだよ。口癖が『浅薄』と『比肩』になってるんだよ。あれ~おかしいな~。たぶんレストも休憩もそんな言葉は使わなかったはずだよ~」
気づかれた。大晦日憩いはやり過ごせたのに石神魅空は無理だったらしい。休憩は慎重に言葉を選ぶ。
「石神さん。私は頭が悪いから、ちょっと強がりで、難しい言葉を使おうとしただけで」
「私。正月さん、一人称が私になってるよ」
「――は、しまった!?」
平凡なミス。ケアレスミスといったところか。
魅空は休憩がオボンに勝った時点で探りを入れ、ずっと疑い、今になってようやく真相を理解した。
サバイバルゲームでなぜに魅空は引き分けを選んだのか。それは正月休憩という男を不審に思ったからだ。正月休憩の中にいる人が、レストではない、別の人になっていたから。
「真犯人に言い渡す。レストでも休憩でもない今の正月さんの中にいる人。それ『憑依』能力だよね?」
「……」
「無視? 私すっごく怒ってるんだよね~。勝手にレストの中に入られて、しかもゲームまでめちゃくちゃにされて。そんで私の脳内から検索した結果、『浅薄』と『比肩』ついでに『私は頭が悪いですから』が口癖の女の子って、魔王汽笛がヒットしたんだけど。あなただよね~魔王さん?」
正解だった。
汽笛は大晦日憩いに隠していたことがある。それは能力のことだ。憑依能力ではプレイヤーは憑依できず、言葉しか操ることができない。そう言っていた。しかし、それは嘘だ。本当はある程度の潜伏期間を得て、プレイヤーに憑依することができる。
休憩と老婆のゲームの後、魔王汽笛は昏睡状態に陥り、ラノベ警察の部屋で保護されていた。ただしずっと寝ていたのではなく、休憩に憑依していたのだ。そして、潜伏期間の終わりが近づき、休憩はレスト化と呼んでいたが、レストと休憩の意識が混じっていた。それは汽笛に憑依されている影響であり、だからオボンに勝つことができたのだ。
「口癖からバレるとは浅薄でしたね。はい、私の名前は魔王汽笛。正月さんに憑依しています。石神さんの言う通りです」




