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石神村の反対派の“む”

 第一戦目。ゲーム『剣道』。ルールは剣道に則っているが何でもありのバトル形式。先に相手を参らせたほうの、もしくは気絶させたほうの勝ち。


 剣道の防具を着た憩いは休憩に話しかける。


「魔王汽笛という少女のことを覚えているかしら?」


 魔王汽笛。現在、大晦日憩いが引き取っている高校生の女の子。彼女はアナザーアースで役職マジシャンであり、能力は憑依。相手に自分の言葉を喋らせることができる。しりとりでは大いに苦戦した相手だ。


「その魔王さん。新しい能力の使い方を会得していたの」


「ほう?」


 本来アナザーアースからこちらの世界に戻ってくると記憶を封印させられて能力を忘れてしまう。しかし、汽笛は忘れていなかった。その秘密が解明した。


「魔王さんはこちらに戻るとき、自分自身に違う人物の意識を憑依させているの。そして、こちらに戻った瞬間、封印の対象は憑依させた意識となり、結果、封印された意識はなくなり、元の魔王さんは封印されずに戻ってくる。つまり、あなたの二重人格や魅空の完全記憶能力のように、アナザーアースの能力を自由に使えったってわけ」


「それがどうしたんだよ?」


「まあ、見てなさい。レスト」


 休憩から離れた憩いが体育館の中央でゴーウィーと相対する。ゴーウィーの顔は面に隠れている。笑っているかもしれない。大晦日憩いがいくら優秀な元剣道部員だからといって本職の殺し屋に勝てるはずがない。これはいわば捨て試合。残りの二戦でレストが何とかすると休憩は考えていた。


 体育館の隅ではイースターと魅空が和気あいあいと喋っていた。


「お姫様。我々はあなたを殺しにきたのですが、これはどういうことですか?」


「はいはい~。試合が終わるまで静かにね。今はゲーム中だよ」


「まったく。とんだじゃじゃ馬ですね」


「ん~生意気言っちゃうと公共の場で裸のまま散歩させるぞ」


「ガッデム。勘弁してくださいよ~」


 主導権は魅空が握っている。敵同士なのに旧知の仲で、実質は魅空が兄を通して支配しているようだ。ほっといても問題ないだろうと休憩は思案する。それよりも心配なのは目の前の対決だ。相手のゴーウィーは凄腕の殺し屋だけれど武器はただの竹刀。それだけでは憩いに大怪我は負わせないだろう。もしもの時のための応急処置を考える。休憩は校内からAEDを探して準備しておいた。


「お姫様の気まぐれは置いておきまして。これからショーを始めます。ゴーウィーVS大晦日憩い。彼女らのエキサイティングなゲームに期待しましょうね!」


 かくして火ぶたは切って落とされた。


 剣道が始まる。殺し屋のゴーウィーは試合開始直後に突進。剣道の動きではない。明らかに我流。けれども意表を突いたその動きは憩いの予定調和を狂わせる。ゴーウィーから繰り出される連続の突きに憩いは後退を余儀なくされる。胴、胴、胴、しつこいように胴だけを狙った連続突きは憩いに確実にダメージを与えていた。


「すっばらしい。さすがはゴーウィーですね」


「イースター。そうでもないよ~」


 一番最初に気づいたのは魅空だった。憩いは突きによるダメージを受けて後退しているように見せかけてその実、ほとんどの攻撃を紙一重で避けていた。ゴーウィーの剣戟はノーダメージ。一度として憩いの胴を捕らえることができていない。ゴーウィーは焦っていた。剣を扱えば拳銃の弾丸を予測して空中で真っ二つに切ることができる剣の達人が、たかが剣道で遅れを取っていた。


 魅空が状況を説明する。彼女は完全記憶能力を使い、一つの仮説にたどり着く。


「ゴーウィーに剣で勝てる者はこの世にいない。そう、この世にはね。でもアナザーアースにならいるんだよね~。大晦日憩いという日本最強のプレイヤーが」


「ワット。ゴーウィーと戦っているJKはお姫様と同じ能力者ということですか?」


「そゆこと~」


 大晦日憩い。彼女は魔王汽笛の憑依を自分に利用して本来封印されているはずだったアナザーアースの記憶を覚えていた。日本最強のプレイヤー。大晦日憩いの職は『ナイトシーフ』。ナイトとシーフの上位職である。能力は『上位ソードスキル』と『スカイウォーク』その他もろもろだった。


「体が温まった。もういいかしら?」


 憩いが人間離れした動きでゴーウィーから距離を取る。居合切りの形で剣を構える。まったく剣の届かないロングレンジ。されどゴーウィーは死を覚悟した。そしてその予感は当たっていた。


「上位ソードスキル。無機物切り」


 憩いが居合切りの要領で下から上へ竹刀を振り上げる。すると体育館の床が真っ二つに裂かれ、ゴーウィーの防具が半分になり、体育館の壁が左右に切れた。広範囲にわたって無機物だけを切るスキル。憩いは静かに竹刀を仕舞う。


「私の勝ち」


「負け、た」


 ゴーウィーは腰が抜けてなよなよ座り込む。大晦日憩いの勝利だった。


「勝者、憩いちゃん。おめでと~」


 魅空が拍手する。憩いは一礼すると後ろを向き、休憩の場所へ戻っていった。


「魔王さんのおかげで思い出したわ。私はプレイヤーたちの鬼教官。ナイトシーフ。日本最強の戦士。私に勝てるのはアナザーアースのNPCではただ一人、もう一人の正月君、マスターシーフのショーガツだけ」

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