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石神村の反対派の“み”

 レストが魅空から聞いた情報は大雑把にこんな感じ。


・ダンディな男。イースター。銃撃戦が得意。

・巨漢の男。オボン。格闘技が得意。

・キツネ目の女。ゴーウィー。剣術が得意。


 それぞれが得意としている暗殺術があるようだが、戦争禁止によりその殺し屋たちは能力を大幅に制限させられている。しかし、相手は戦いのプロ。油断大敵。テロリストたちが要求した通りに体育館へ赴く。ただし行くのはレスト一人。魅空と憩いは置いてきた。


「はーいボーイ。石神のお姫様はどこですか?」


 体育館にはダンディな男が一人。イースターだ。彼は武器を持たず待ち構えていた。


「俺は睦月レスト。魅空のボディーガードをやっている」


「ほう。ユーがお姫様の王子様というわけですね? で、何しにここへ? 我々はお姫様を要求したはずですが?」


「あんたたちの要求はのめない。魅空をどうするつもりだ?」


「少年は戦争というものを知っていますか?」


 イースターは静かにしゃべり出した。殺し屋の間で戦争はかっこうの稼ぎ場だった。兵士は次から次へと死んでいく。国は自国の軍隊を出したがらない。そこで考案されたのが殺し屋同士の戦争だった。金さえ払えばいくらでも犬死しても良い人材が手に入る。殺し屋、戦争代理人たちは国と取引し、己の戦場を求めてさまよった。


「石神村は我々の間でも名だたる殺し屋集団でした。生まれた時から傭兵の宿命を義務付けられた子どもたち。我は十歳からこの道に入りましたが、石神村はゼロ歳からで~す。殺し屋の英才教育。現代の戦争では石神村を味方にした方が勝つと言われていました」


 イースターは体育館の中央で右に行ったり左に行ったりして歩く歩く。攻撃するそぶりはない。レストは黙って聞き、イースターはしゃべり続けた。


「そんな石神村に天才があらわれました。ミスター石神。お姫様のお兄さんで~すね」


「それがどうした?」


「彼は石神村の恐ろしさを実感しました。なぜなら戦争の常勝集団。非常に有害です。そんな村は危険と独自に考えました。だから決めたのです。石神村を滅ぼすために」


「ん? 話が見えてこないな」


 レストとイースターの間に齟齬がある。レスト曰く、反対派とは戦争を解禁するために魅空を狙っている組織だと思っていた。村の長の座を兄と妹で争っているのだと。しかし、イースターの話を信じるのであれば、反対派とは石神村を滅亡させるために動いているということになる。疑問を投げかける。


「イースターさんとやら。あんたらの狙いは何だ? なぜ魅空を狙う?」


「それは~ですね。お姫様こそがミスター石神がキーにしている存在であり、想像以上に化け物に育ってしまったので、やっぱり殺してしまおうということになったので~す」


「魅空が? 化け物?」


「は~い。彼女は石神村を滅ぼすだけでなく全世界を手中に収めようと考えているはず、」「ストップ」


 声がかかるとイースターが動きを止めて硬直する。テイムの能力。レストの後方、体育館の入り口から魅空が顔を出す。


「勝手にペラペラ喋っちゃダメかな~。反対派は大人しく兄の言うとおりに従ってほしいな」


 置いてきたつもりが勝手についてきたようだ。魅空は突っ立っているレストを追い抜き、そのまま硬直しているイースターに近づいて懐を探り始める。


「お、あった。あった」


 手元には拳銃。魅空は首をポキポキと動かし手慣れた手つきで弾倉に弾丸をこめる。その口径はレストへと向けられていた。


「どういうことだ?」


「レストには嘘が付けない絶対ルールがあったね~。正直に言うよ。プレイヤー同士の戦争は認められている。だからいくらレストでも不用意に動けば~死ぬよ」


 魅空の目が笑っていない。レストは両手を広げて少しだけ上げ、フリーズした。口だけを動かし魅空を追求する。


「魅空、今思っていることを正直に言え」


「ああ、兄がわざわざ精鋭三人を寄こしたのは日本政府への警告だったんだなって今、気づいたかな~」


「警告とは?」


「石神魅空は賛成派として協力しているように見えて実は日本をぶっ潰そうと考えています」


「つまりお前は大晦日憩いのスパイではなく、二重スパイとして俺たちを裏切ってたんだな?」


「嘘が付けないってめんどくさいね~。はい。私は日本政府に協力しているように見せかけて実は裏切る気が満々です。反対派もそのために作りました」


「何?」レストは衝撃の事実を知った。「魅空、話を続けろ。正直に白状しろ」


「反対派は私が日本政府に取り入るためにわざと敵対関係にして作った組織です。兄も、石神村を潰せるなら、と喜んで協力してくれました。しかし、こうしてうまく取り入った結果、反対派は邪魔になっちゃいました~。だから私は兄を操って反対派に無謀な作戦を立てさせたのです。なろう高校乱射立てこもり事件をです」


「嘘だろ?」


 レストは魅空の狡猾さに驚く。信じがたい事実。しかし、嘘の付けない魅空は否定しなかった。


「レストのことは好きだよ。ファーストキスの相手だし。でもこれは私の自作自演。唯一の想定外が、兄があなたたち日本政府に助けを求めたこと。おそらく私の知らないところで、私が首謀者であるとレストたちに話すように命令されていたはずだよ~。偉いよね~兄もイースターもオボンもゴーウィーもみんな私に操られると分かっていながら反抗してきたんだから。これは死刑かな~?」


 魅空はまるでパンを食べるように何気なく死刑を実行すると宣言した。戦闘民族、石神村の怖さに背筋がぞっとした、そう、正月休憩は。


 この時点で睦月レストは眠っている。今、体育館にいるのは睦月レストのフリをした正月休憩だった。

魅空はレストに嘘が付けないが、休憩には嘘が付ける。現在進行形でペラペラしゃべっている魅空は、嘘が付けないと思い込み、休憩に真実を喋っているに過ぎない。


「石神さん。ゲームをしないか?」


「いいよ。レストが私の味方をする。その条件で~。今後、日本政府を倒すときにじっとしててくれないかな。私のボディーガードとして。もっち~このことは秘密だよ」


「分かった。俺の条件は石神さんのお兄さんに会わせてほしい」


「そんなんでいいの? おっけー。ゲーム内容はどうしようか」


 休憩には考えがあった。一つはレストのフリが周りに通用するかどうか。それは成功した。もう一つは魅空対策。今後、魅空と戦う時が必ず来る。その時に備えて魅空兄という切り札を必要としていた。


 憩いがいないのをいいことに魅空は自分の考えをはっちゃける。ゲーム内容も魅空が勝手に決めた。


「せっかく精鋭三人もいるんだし。ゲーム内容は三本先取でどうかな? それぞれの殺し屋が得意とする『サバイバルゲーム』、『柔道』、『剣道』で勝った方が勝ち」


「ああ、いいぜ。ただし味方に憩いちゃんを入れてほしい。俺だけでサバゲー、柔道、剣道を制するのは苦労する」


「いいよ~。私は傍観者ね。今からゲームを開始する。イースター、オボン、ゴーウィーの反対派チームとレスト、憩いの日本政府チーム。反対派が勝てばレストは秘密を守り、私の味方に。日本政府チームが勝てばレストは兄に会わせる。これでどう? ちなみに事件が終わったら、反対派は全員逮捕壊滅だよ」


「乗った。ゲームルールに追加で、精鋭三人は憩いちゃんに魅空の秘密をばらさない、を追加で」


「そだね~。憩いにばれたらその場で殺しちゃうかもだし。おいで、オボン、ゴーウィー」


 お互いが光り輝きゲームが成立する。五分後には無表情のオボンとゴーウィーが体育館に入ってくる。まったくもって魅空の顔を覚えていれば簡単な命令を下し操ることができる能力はチートだと思った。


 なろう高校の人質を解放し、警察を高校周辺に待機させた後、憩いがやってくる。テロリスト三人と相対している魅空を眺めて呆然とする。


「結局テイムを使ったのね。で、今、どんな状況かしら?」


 レストのフリをした休憩は憩いに剣道の防具一式を手渡す。


「犯人たちとゲーム中だ。とりあえず勝てば解決する」


 真の敵、魅空をボディーガードしつつ反対派と対決するハメになった正月休憩だった。


 なんだこれ?

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