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石神村の反対派の“い”

「エマージェンシー。緊急事態よ」


 大晦日憩いがスマホで電話をかける。朝の登校時間。生徒たちがけだるそうにあくびをしながら学校にやってくる瞬間、事件は起きた。校門の前で一人の男子生徒が人質に取られ、犯人たちは校内に侵入した。


 複数とみられる犯人たちは石神村の反対派。彼らはおおよそ正気の沙汰とは思えないようなテロ行為をやってのけた。手当たり次第に銃を乱射し、石神魅空の身柄を要求。要求に応じなければ校内に立てこもり、すべての生徒を気絶させると大々的に発表した。今回の件はアナザーアースに関係の深い事案であり、機密事項であるので警察やマスコミに報道規制がしかれ、一般人にはただの避難訓練として知らされた。


 その事件の真っ只中にいる生徒は三名。大晦日憩い、正月休憩、石神魅空。彼らは魅空が狙われていることを知り、犯人たちから一番遠い場所にいる屋上へと避難している。もっともな話一般生徒と芸術クラスは別教室に位置し、休憩と魅空は当然ながら、サボって芸術クラスに遊びに来ていた憩いを含めた三人が犯人たちの魔の手を逃れた。プレイヤー候補生の生徒たちはもちろんのこと新設された護衛クラスの生徒までもが犯人の毒牙に落ち、無力化された。


「困ったわね。現場の自己責任で行動するようにとお達しを受けたわ」


 電話を終えた憩いが苦虫を噛み潰したような顔をする。犯人が石神村の住人だと知り、日本政府は下手に動けないそうだ。これは賛成派と反対派の、いうなれば村の痴話げんかなのだから傍観するのが吉ということだ。痴話といっても兄妹での話だが。当事者である魅空はひょうひょうとしている。


「兄が~ごめ~わくをおかけしました」


「とにかく現状を把握したいです。僕たちに敵の戦力を教えてくれませんか? できるだけ詳しく」


 現場の自己責任で行動しろといわれたので、休憩はできるかぎりの打開策を考える。一つ、大人しく魅空を引き渡す。これは一番簡単で安全な方法だが即却下、護衛している魅空の安全は守らなければならない。一つ、徹底的に隠れる。これは案外難しい。敵はすでになろう高を制圧してしまった。見つかるのは時間の問題だ。一つ、頑張って戦う。いくらプレイヤーだからといって相手は戦いのプロ。休憩では難しい。そう、休憩では。


 レストを出せば勝てるのではないか、と休憩は考える。


 とにもかくにも情報だ。絶対に情報が必要だ。魅空の身内ということを最大限に利用して、他の打開策を考える。もし反対派の犯人が老婆のように金を欲しているのならば、魅空の代わりに身代金を差し出せばいい。問題を解決するには相手が何を望んでいるかを知ることが大切だ。


 魅空が反対派の話を始める。


「んっとね~。兄たち反対派は四人。というより反対派は兄と外部の構成員三人で動かしている。彼らの望みはただ一つ、傭兵国家の復活。いうなれば戦争の実現化だよ~」


 反対派は戦争に飢えていた。人を殺して生計を立てていた彼らにとって、プレイヤー以外の戦争禁止は仕事を奪われ唯一の長所を踏みにじられたようなものだ。牙も爪も抜かれたオオカミは飼い犬に成り下がった。反対派のプライドはズタボロであり、賛成派の魅空を狙っている。


「兄は~たった四人で~反対派を作り上げた。石神村の次期党首である私と政党後継者争いの真っ最中。だから捕まったら殺されるかな?」


「石神さん。その割りには余裕があるわね」


 憩いが心配する。魅空は笑って見せる。


「大丈夫~私には完全記憶能力とテイムがあるから。いざとなれば余裕で脱出できるよ」


 魅空は人を操る能力がある。休憩は安堵した。


「なんだ。それなら早く使ってよ。どうやって逃げるかを必死で考えた僕が馬鹿みたいだ」


「それは~ダメかな~」魅空が真顔になった。


「どうして?」


 疑問を口にした休憩に対して、魅空はやや怒った感じで主張した。


「私は護衛を雇った。賛成派として日本政府を信用した。なろう高は日本政府の管轄化に置かれている。今の現状は私の不手際ではない。憩いも休憩も~私を守る義務あるよね~?」


 魅空はこう主張する。現状、一人でも窮地を切り抜けられるが、反対派に遅れを取るような護衛はいらない。私抜きで、憩いや休憩だけで事件を解決する力を見せてほしい、と言った。


「正直になりなさいよ。睦月レストに会いたい。それだけでしょう? くだらない」


「ぎゃー!? 憩いさん、それ言っちゃダメです」


 魅空は揶揄した憩いをポカポカ殴る。もちろん手を抜いている。その光景を見た休憩はほんわかした。


 登校ラッシュに違法改造モデルガンを乱射し、校内に侵入した反対派が異常なのだ。幸せな日常を非日常に追いやった反対派たちに制裁を。粛清を。休憩は決心した。


 憩いがポカポカから逃げながら報告する。


「犯人たちの声明を信じるならば死傷者はゼロ。犯行時にぶっ放した本物の銃は、戦争禁止の絶対ルールによって無力化されたらしい。今のところ目立った被害は切り傷や打撲などの軽傷。数人が気絶している程度よ」


「石神さんそれくらいにして。軽傷? 良かった。それなら思いっきりケンカできる」


 戦争はプレイヤー同士のみ。他は戦争禁止。つまり一般人が銃をぶっ放そうが、柔術で絞め殺そうが、すべてはノーダメージとなってしまう。反対派は絶対ルールを知っていたので違法改造モデルガンなどを持ち出した。殺傷能力はなく当たっても軽傷で済む威力だそうだ。


 魅空が応援する。


「頑張ってレスト」


「まだ正月休憩のままです。すみません」


「あ、そう」


 なぜか休憩が申し訳ない気持ちになった。全然悪くないのに。ちょっとだけへこんだ。

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