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魔王の“ま”

「りんご」


 老婆が言葉を発する。丸いテーブルを囲み、休憩と老婆のゲームが開始する。ゲーム名はしりとり。ただのしりとりではない。虫食いしりとりという老婆が考案した縛りのあるしりとりだ。


 虫食いしりとり。

一、基本は普通のしりとりと一緒。ん、が付くと負け。

一、三文字の言葉のみ。真ん中の文字は使うとお互い使えなくなる。例えば、らっぱ、の場合、「っ」と「つ」が使えなくなる。り「ん」ご→ご「り」ら→ら「っ」ぱ→ぱ「ん」つ、の場合ぱんつを発言した者の負けとなる。

一、制限時間は十分。紙と鉛筆のみ使用しても良い。

一、妨害工作あり。ただし妨害工作をした場合、種を明かさなければならない。

一、三回勝負。先に二勝したほうの勝ち。一日に一勝負で三日かけて行う。


 休憩のターン。メモ帳に「ん」と書きこむ。老婆を見やる。彼女はなろう高の魔女と呼ばれており、なろう高設立に多額の資金を提供している資産家だ。痩せこけた頬。ミイラのような皮膚。見た目は死にそうなのにその目に宿る殺意は爛々と輝き、若者を食ってしまおうと意気込んでいる。今回のゲームはプレイヤー同士に見られる強制力はないが、お互いに署名しており、あるものを賭けている。


 あるものとはマクガフィンと呼ばれるアナザーアースのマジックアイテムだ。休憩は詳細を聞かされていないが、今後の日本政府を有利にするアイテムだそうだ。所有権は老婆にあり、この虫食いしりとりに勝てばマクガフィンは休憩のものとなる。逆に老婆が勝てばマクガフィンは老婆のものとなる。


 憩いに「死んでも勝て」と命令されたゲーム。休憩のプレッシャーは重い。責任重大だ。りんご、の次の言葉を返すだけで汗がにじみ出る。休憩は一息ついて冷静になり、部屋の様子を観察する。古びた館に骨董品の数々が置かれており、休憩たちがゲームしている客間ではシカの剥製が飾られている。中世貴族のお屋敷のようだ。ここが城だと言われても休憩は驚かない。年代物ではあるが、それだけ広いお屋敷だった。


 脳内で「りんご」の次の言葉を考える。正攻法でここは「ごりら」に決める。休憩はメモ帳に「り」の文字を書きこんで、そのまま言葉を発する。ごりら、と。


「ごはん……んん!?」


「ごはん、と言ったね。お前さんの負けだよ。一回戦目は私の勝ちだ。ひっひっひ」


 ごはん、と言った瞬間、休憩の負けが確定し、老婆が喜びの声を上げる。休憩の頭にはハテナマークが立ち並ぶ。彼は確かに、ごりら、と言ったはずだ。それなのに口から出てきた言葉は、ごはん、だった。老婆が何かの妨害工作を使ったと気づいたときにはもう遅い。休憩は老婆の屋敷から追い出された。


「また明日来な。妨害の種はあとで大晦日の小娘にメールで送っておくよ」


 これが10分前の出来事。


 老婆の館を追い出された休憩は、一言目で敗北を喫し悔しさに顔を歪ませていた。


 しりとり。そう言われたとき休憩は勝ったと思った。なぜなら、しりとりとは語彙力が豊富な方が勝つゲームだからだ。曲がりなりにも読書家の休憩は、資産家の老婆よりもよっぽど自信があった。しかし、負けた。結果は即敗北。これは正々堂々の勝負ではなく、お互いにいかに妨害工作を働くかのゲームだったようだ。気づいたときにはもう遅い。休憩はすでに負けてしまったのだから。なろう高に戻り、憩いと合流して明日の対策を練るのであった。

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