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拝啓、乙女ゲーのヒロイン様へ   ~フラグの折れた先への案内状~  作者: TAKAHA
リクエスト:攻略対象者視点
4/11

失くした絆

はい、今日もお付き合いいただきましてありがとうございます。


3人目は、椎名 明斗 デス。





「みんとさま、みんとさま」


幼馴染で純粋に僕を慕ってくれていたまるで妹のようなアリアは、3桁に入ってしまうが海外の某王家の王位継承権を持つ由緒正しい血筋のご令嬢。日本育ちだけど、その血筋の大半は海外の物なんだよね。


蜂蜜色の波打つ長い髪に、キラキラ輝く青色の瞳、ふっくら膨らんだホホはバラ色でまさに人形の様な少女。


「みんとさまはありあのおうじさまなのですよ?」


純粋で愛らしくて、かわいいと思う。真摯に慕ってくれているのが分かるだけに、アリアの笑顔を見ているだけで僕の顔も緩むのがわかったんだ。


「僕がアリアの王子さまでいいの?」

「みんとさまがいいのですわ!」


キラキラした瞳でそう言い切られてしまうと、僕だってその期待に応えたいと思ってアリアの前だけじゃなくてずっと気を張って頑張っていたんだ。


家族ぐるみの付き合いがあって、僕の妹もアリアの兄達も仲が良かった。そんな中でアリアと僕の婚約も当たり前の様に自然に決まって、僕らもそれを当たり前だと受け止めてはいた。




何の疑問もなく、それが当たり前だと思っていたんだ。




そんな僕が彼女に出会ったのは、入学式が済んで教室に入った時だった。

同じクラスで隣の席。僕よりも先に自身の席に座っていたその子は緊張していたのか、座ってうつむいたまま微動だにしていなかったと言うのが最初の印象。


「きゃぁ!ミント君と同じクラスよ!」

「ほんと、ミント君かわいぃ~!」

「あ~ん、私は天清寺様が良かったぁ」

「天清寺様は隣のクラスですもの、体育は合同ですわ」


少し遅れて教室に足を踏み入れれば、僕に向けられるクラス中の女子達の視線が気持ち悪かった。さすがに同じ学年に友達でもあり、幼いころから知っている僕の家以上の大家もあるからこれでも女生徒たちの視線もだいぶ分散されているが気分の良い物ではない。




そして、前もって調べておいた自分の席へ行くと視界に入ったものがあった。




あと、俯いていて顔が見えなかったって言うのもあるかもしれない。それまでの僕は基本他人に興味なんてなかった。家柄だけで近寄ってくる鬱陶しい小蠅に、少し良い顔すればつけあがる女たち。

自分が童顔だって知っているけど、これでも男なのにかわいいかわいいって言われて嬉しがるやつがいるかっての。ただ悲しい性と言うか、期待されたことに応えるというモノが染み付いてしまっている為にかわいいと言われたらそれに合わせて答えてしまう自分が嫌だった。




今でも、クラスの大半の視線が刺さる中で目の前にいる彼女だけが僕の事を見て居なかった。




周りの声がまるで届いていない様で、一度たりとも顔を上げない彼女に近づいたのはただの興味本位だった。今まで僕から話しかける事なんてめったにない事なんだから。


「はっじめまして~、僕は椎名しいな 明斗みんとだよ。隣の席なんだね、よろしく~」


この女もそんなもんだろうと思っていつも通りにワザとらしい明るい声で話しかけたんだ。

なのに彼女はそれを無視。初めての事でびっくりしたけど、それよりも興味が出たのも事実。


「どうしたの?気分でも悪い?」

「・・・え・・えっ、えぇ?!」

「うん、君だよ?」


横にいる彼女を覗き込みながら彼女の席の正面に腰を下ろせば、自分に話しかけられたと最初は気が付かなかったのか彼女は目を見開いて僕を見て居る。


「・・・ぃ」


青い顔で何かを呟いた彼女に首を傾げて続きを待つと、彼女は意外なことに僕をキッと睨みつけてきた。


「きもちわるぃっ・・その演技みたいな顔はないよぉ!」

「・・・・は?」













+++












「みさちゃん!みさちゃん!みさちゃんの作るおかしおいしぃよ~」

「ほんとぅ?ありがとぉ~!ミントくんだ~ぃすきぃ!」


初対面のあの時から数か月がたった今、僕は学園にあるサロンの一室でみさちゃんが作ったケーキを食べていた。みさちゃんの親友と言う女の子が家庭部らしく、みさちゃんは部活にははいっていないがたまに入れてもらっているらしい。


「確かに、みさは料理が上手だな」

「・・・うん、うまいよ」

「みさちゃんの差し入れのおかげで大変な生徒会の仕事も頑張れるってもんさ」

「・・・」

「そんなことないよぉ?みさはお菓子つくるの好きだからだよぉ~!」


始めはみさちゃんと僕だけだったけど、日が経つにつれて増えて行ったメンバー。



みさちゃんの明るさに魅かれたっていう寡黙な将彦は分かる。



みさちゃんの無邪気さに救われたって言う伏見先生も分かる。



何故かいる三宮先輩も一応は理解できる・・・。



「鷹彰くぅん・・は、どぉう?」

「・・・あぁ、美味い」

「ふふふ、うれしぃ」


だけど、天清寺鷹彰様が僕らの中に入っているのがどうしても分からなかった。みさちゃんも満更ではないようで、僕も彼には敵わない・・でも、みさちゃんを好きな気持ちは彼より強い自信はあるよ。



みさちゃんの為なら何でもやってあげたくなってしまう、優しく可愛らしいみさちゃんの側に居る事でとても癒されるんだから。



なのに、そんな大切なみさちゃんをあの斎賀魅は虐めているらしいんだ。最初は勿論信じなかったよ、僕だってそれほど身分は高くないにしろあの斎賀家のご令嬢の事は何度も聞かされたことあったしね。




『ひど・・いのよ・・・み、みさの・・ことぉ・・・ひっくひっく・・ゴミっていうの!貧乏人は生きる価値なしってっ・・ふぇっ、そんなこと・・うぅぅぅ・・』




『おかぁさん・・ど、して・・・みさ、を、おいて死んじゃっ・・・たのっ・・うぇぇぇん』




だけど、一体あの女のせいでどれだけみさちゃんが傷つき涙を流したと思っているの?!あの斎賀家だろうと、天清寺家の許嫁だろうと僕には関係ないね!ただの古い家ってだけじゃないか!上流の家だろうと、人として言っていい事と悪いことあるって分かるだけの脳くらい持っているはずだよね?



『大丈夫だよみさちゃん。みさちゃんの事を泣かすよーな人間のクズなんて僕が消してあげるからね!』

『・・・』



僕がギュッとみさちゃんに抱きつきながら慰めてあげると、ハラハラと涙をこぼしながらも僅かに笑みを浮かべてくれた。



『泣かないでみさちゃん・・・みさちゃんの涙を見るのが辛いよ。僕の力じゃ到底及ばないかもしれないけど、みさちゃんの為だったらなんだってするよ!!』

『ほ・・んとぉ?―――――ありが、とぅ』



お互いに微笑みあうと、周りに居たみんなが僕に険しい視線を向けて来た・・・その中でも、天清寺様の視線が一番恐ろしかった。それでも、僕はみさちゃんだけは引かないからね!


仲良くお茶をしているが、一応僕らはライバルだ。優しくかわいいみさちゃんが“みんな仲良く”を望むから、仕方なしに僕らは表面上はそれに合わせているんだ。


「あれ?ミントくんとだいきセンセー今日はぁ、おうちのよーじあるっていってなかったのぅ?」

「ん?キャンセルしたよ。大した用事じゃなかったからね、みさとのお茶の時間の方が大切だよ」

「僕もだよ~」


僕らがいない間に抜け駆けなんてされたくもない。先生もたぶん僕と同じ気持ちでの行動だろうね。

不安そうな、それで悲しそうに僕らに問うみさちゃんの顔を見ると、今までとても大切だと思っていたことが本当にどうでもよくなる。





『そんなことしていて疲れないのぅ?ミントくんかわいそうぉだよぅ』





『みさはそんなことなんてぇ、絶対言わないよぉ!』





『みさといるときはな~んにもきにしなくたてぇいぃ~んだからねぇ』





――――――・・心が軽くなった。





『何をそんな簡単に・・』『庶民はこれだから』って勿論思ったさ、だけどそれでも彼女がいつもの暖かい笑顔で、優しい言葉でずっとそばに居てくれたから。



今日も本当は僕の用事は、今までは最優先していた事―――・・今日はアリアの誕生日だ。



確かにアリアはかわいいし守ってあげたくなる。でもそれは妹のようにって思ってしまうんだ。みさちゃんに対して思う気持ちとは違う気がするんだ。


「入りますわよ、お兄ちゃん!!ほら、アリアも!」

「・・・あ、あの・・明斗様?今日はどうして・・わた、しの・・お誕生日パーティーに、来てくださいませんでしたの」

「そうよ、お兄ちゃん!アリアだってずっと楽しみにしていたし、あれだけ楽しみにしていてって期待させていたのはお兄ちゃんじゃないの!」


その日の夜、自室でみさちゃんとラ●ンをしていた僕の元に怒鳴り込んできたのは、3つ年下のアリアと同い年の妹の李音いおんだ。

黙っていれば可愛らしい妹だと兄の僕から見ても言えるのだが、如何せん李音は気が強くていけない。それに、2人ともドレスを着ている所を見るとお開きになったパーティーからそのままここに来たのだろう。


「・・ごめんね、アリア。学校の用事で遅くなってしまって、少ししか祝えないくらいなら僕と二人でお祝いしなおそう?ね、その方が楽しいだろう?」

「・・え?」

「もう!お兄ちゃん!!そういう事じゃないのよ!!」


確かに僕は半年以上も前からアリアと約束していたのを今思い出した。ギャーギャー騒いでいる李音と涙目で悲しそうな顔のアリアに、一体どうしたのだろう・・・不愉快な気持ちしか湧いてこない。


こんな時でも僕の脳裏に過るのはみさちゃんのあの笑顔だけ。


不思議だった。あれだけかわいく思っていた妹達を疎ましく思うことや、なんでアリアの事をあれだけ優先していたのかの疑問ではなく、何故こんなにもみさちゃんの事しか考えられなくなってしまったのだろうということだけ。



今僕の目の前で悲しそうな顔をしているのがみさちゃんなら、ベッドの端に座り込んだまま困惑した仮面を張り付けて謝るだけではなかっただろう。



この時の僕は本当におかしくなっていたのだろう。僕がそれに気が付いたのは本当に、ずっとずっと後の事だった。







『          』








あの学園を卒業した数年後、僕の元に残ったのはたったの一つ。





僕の学園生活は今ではただの黒歴史にしかなっていない。あの女も、あの女について行った彼も・・・今はどこにいるのか僕は知らない。













おかしいな・・・もう少し子供っぽい無邪気キャラを想像していたのに・・。


鷹彰へたれクールあたりならまだ楽なのになぁ・・。

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