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王太子テオドリアス

お久しぶりです。



ちょいエロといっていいのか・・ちょっと、いや暗い表現も入っておりますのでお気を付け下さい。

R指定?R15位?どの位の範囲を言っていいのかわかりませんが、”アウトーー!!”とか思ったら教えて頂けたらと思います!!


そこまでにはしていないと思いますが、気になる方がいましたら書き直したいと思います。





『兄様、私も参ります』


切れ長の瞳に少し冷たく感じる表情の1歳年下の弟は全体的に父似である。焦げ茶色の髪は後ろをさっぱりと短くしているくせに、前髪は長めにセンター分けにして顎のラインで切りそろえられている。実は極度の人見知りで恥ずかしがりの癖に意地っ張りだけど、良い子過ぎてついつい構ってしまう可愛い弟だ。


『にぃさま、ぼくもぉ』


6つ離れた弟は祖母似で、少し癖のある蜂蜜色の髪を母の趣味で伸ばしている。大きな瞳はくりっとしていてまるで教会で見た天使様の様。まだ幼い弟は肩に着くまで伸ばされた髪にリボンを付けられているせいで、妹と言っても誰もが納得する愛らしさは今にも悶えそうだ。


そんなかわいくて、かわいくて仕方がない俺の2人の弟は、俺が少しでも移動するといつでもどこでも俺の後をついて回るような子供だった。


『またかい?仕方ないなぁ』


困ったようにそんなことを口にしつつも、まだ3歳にもなっていない末っ子の弟の手を引き、転ばない様に気を付けながらも駆け寄ってくるそんな2人を俺は笑みを浮かべてその場で待つ。




―――――――何やってやがる!俺様があんな奴らを気にかけるなんてっ




俺の行動を咎めるかのようなそんな声が聞こえた気がして、ムッとした表情になるのを必死でこらえる。

どういうわけか、幼い時から俺にはもう1人の自分と言うのだろうか?そんな意識が存在していた。


ちょこちょこと俺の後をついてくるかわいいかわいい2人の弟に、頬が緩むのが自分自身で分かるのだが、その反面で『ちっ、なんで俺様の後をついてくるんだ鬱陶しい』などと蔑んでいる自分もいた。


物心ついた頃からあったそんな感情と言うのか意識は、始めの内は不思議だったのだが時が経つにつれて少しづつ霧が晴れるかのように色々なものが見えてきた。



俺の名前はテオドリアス。テオドリアス・サトリクス・ルースディルア。



ヨーロッパにある某王国の第一王子で王太子。祖母譲りの蜂蜜色の髪は末の弟とは違い全体的には母似の為さらっさらのストレート。文武両道で周りの信用も厚く、そこにいるだけで女が寄ってくるような美貌を持つ上に、生まれながらの権力者。

普段はその演技じみた笑みの下に隠している顔は鷹の様な猛禽類の様な瞳をしていて、尚且つ性格は自己中で自分自身の見せ方を知っている腹黒な悪役中の悪役と言ってもいいだろう。

自分につき従う下の弟の事など都合のいい従僕程度にしか思っておらず、年の離れた弟なんて邪魔者以外の何者でもない。



物語の中では・・・。



そう、俺はこの世界の事を知っている。俺の中のもう一人の自分こそこの世界に本当に存在するはずだったテオドリアスなのだろう。だけど、この体は俺の意思で動いていて“テオドリアス”の意思は奥に存在するのみだ。

転生と言うのがしっくりくるだろう。うっすらとした記憶のある俺は成長するにつれていろいろ思い出したのだが、それでも本当にうっすらとだった。


生前の俺が住んでいたところは日本。この世界にも日本は存在しているが、皇族の存在の意味とかその周りの環境、そして俺の住むこの国や所外公国がその記憶と違うと言う観点からこの世界は似ているが別の世界なのだろうと納得した。


「兄様、今日は何の勉強をされますか?!」

「ておにぃさま!えどはれきしをききたいのぉ」


俺の元まで来たルイフェイスとエドワルドは興奮したように頬を上気させ、キラキラした瞳で俺を見上げてくる。慕われるのは気恥ずかしいが嬉しくもあり、俺も頬が緩むのが分かる。

物語の中では二人とも表情も乏しく、氷刻のルイフェイスと人形のエドワルドという二つ名がついていた。意味はそのまま。

二人の共通点は表情らしい表情もなく、エドは言われた表情を作れるが・・・ルイはその性格も冷たく非道だったからだ。


だけど、生前も今世も俺には弟が可愛くてかわいくて仕方がなかった。


「ル~イ、今日は馬術だと伝えてあっただろう?俺は先生がお見えにならないので今日は自習だ。エドはきちんと言われた勉強をしなさい」


きちんと決められた勉強に、それについての専門の家庭教師がいるにもかかわらず、かわいいかわいい2人はいつも俺と同じことをしたがる。

内心は可愛いなぁとデレそうになる顔を引き締めて眉をひそめつつ注意すれば、ルイはしゅんとして俯いてしまい、エドはその大きな瞳に涙を浮かべてルイの服の裾を握りしめた。




――――――あぁぁぁぁぁっ!!うちの弟ちょおぉぉぉかわえぇぇぇぇーーーっ!!!




2人の姿に思わず叫びそうになったのをぐぐっとこらえて引き攣る顔で何とか笑顔を作ると、エドに合わせるように屈んでその頭をなでてやる。


「俺の今日の自習は復習も兼ねてエドの勉強している姿を見ようかなぁ?部屋は西のティールームにしようか、そうすればルイが馬に乗っている姿を見る事が出来るね」

「「!!!」」


にっこり笑ってそう言った俺の言葉に、2人ともが弾かれた様に顔を上げて驚きと嬉しさをにじませた笑みを浮かべた。


「明日にはアリアが遊びに来る。おば様達に胸を張れるよう今日は頑張るんだ、な?」

「はい、兄様」

「はぁい、がんばる!」


母の従姉が日本へ嫁ぎ、俺らのハトコにあたるアリアは年に数回遊びに来るほど俺達は家族ぐるみで仲が良い。エドもおれ達よりも年が近いアリアとよく一緒に勉強している姿を見ると、まるで姉妹の様で母たちもキャーキャー騒いでいる。


「テオドリアス、わたくし自ら貴方を鍛えましょう。諸国を周りますのでついておいでなさい」

「はい、おばあ様」


女王陛下として君臨していた祖母も、俺が15になった時に早々に退位して父にその王位を譲り、俺に期待していてくれた祖母は俺を育てる事にしたようだ。

そして俺が成長するにつれて“テオドリアス”は少しずつではあったがその存在が薄れていき、俺が15歳の頃にはもう俺のすることや周りの環境について悪態をつくことや意見してくることもなくなっていた。


「時にテオドリアス、良くない噂を聞きましたがリンデル嬢の耳に入ったなどという事はないでしょうね?」


リンデル嬢と言うのは俺の婚約者の名前だ。“良くない噂”に心当たりがありすぎる俺は、思わず顔を顰めてしまったがすぐに表情を引き締めておばあさまと向き合う。


「・・・えぇ、おばあ様。迅速に処理いたしましたので問題ありません」

「貴方はわたくしの自慢の孫です。ですが、愚かしい行いだけは許しませんよ」


ふぅとため息をつきながらも厳しい視線を送るおばあ様も、若いころは女好きだった今は亡き祖父にだいぶ苦労させられたと聞く。


「はい、心得ております」

「よろしい」


しっかりと頷き俺の視線を受け止めた祖母は、その言葉にようやくその硬い表情に笑みを受かべて前に置いてあるティーカップに手を伸ばした。



自分でいうのもなんだが、俺は勉強も運動も、その上容姿にも恵まれている。

幼いころに決められた婚約者は隣国王家の血を引いていて従順ながらも自分をしっかり持っているし、見目も性格もとてもいいお嬢様だし、何より俺を慕っていつもキラキラした顔をしているのにくすぐったく感じるが嫌ではない。


うん、慕われるのは嫌ではない。


時折めんどくさい令嬢がいてうんざりしてしまうが、自分でも自分自身が異性にモテると言うのを理解している為にそれ相応の対応はしているし、婚約者への節度を守りつつも男として最低限の欲望だけは処理させてもらっている。



―――――今回、1夜の為だけに選んだ相手はとてもめんどくさかったから使いたくなかった権力に頼ってしまったが・・。



留学という形で有名大学へも通ったが、恵まれ過ぎた俺は留学期間をはるかに下回る期間で行程終了してしまい行く気のなかった大学院へも進んでしまったほどだ。

たしかにあの物語では程々の学力などが出てきてはいたが、院へ進んだ様な話はなかった気がする。

まぁ、それも物語は物語だし、今の自分とは一切関係ないかとこの暮らしを楽しんではいた。



物心ついた頃からうっすらとではあったが前世の記憶があった俺は、他人とは違うのは重々理解していた。でも、記憶そんなことなど些細なことで俺は俺、前世まえ前世まえそう割り切ってはいた。




――――なのに・・・



「どぉしたのぉ・・?」


気づいてしまった。俺は前世の自分に縛られているという事に・・・。


「おうじさまぁ?どう・・なさったのぅ?」


セットされていた髪は乱されて、上着は床に無造作に広がっている。はだけた俺のシャツからは自分でも惚れ惚れするような割れた腹筋が覗いている。

そんな俺が組み敷いているのは今宵のパーティーで知り合ったブルネットの髪に琥珀色の瞳が綺麗な美人で、血筋も家柄もいい勝気な美女だ。大胆なドレスは先ほど俺が脱がしたためにあられもない姿でベッドに横たわって俺を見上げている。


俺は今まで一切女を抱いたことがない童貞―――ではない。婚約者には頬にキス以外はしたことないが、俺も男だ。それ相応の生理現象だってあるし、今までも何度か都合のいい女で処理をさせてもらってきた。


なのに、なぜこんな今になって・・・。


たった今までこの手で高めていたその欲望、俺の半身は疼いているのに頭は冷水に付けたかのように冷え冷えとしてしまっている。


「・・・・・あ、あぁ・・君の姿に見惚れていた」

「まぁ」


熱に浮かされながらも急に行為を辞めて無言の俺に、困惑した彼女がゆっくりとその裸体を起こして潤んだ瞳で見つめてくるのに嫌悪した。

だけど、その感情を奥に押し込んだ俺は自分の中で一番と思われる笑みを持って彼女に答えた。


「どうせなら君が俺に奉仕してくれ―――――・・乱れた姿がみたい」


起き上がった女を押し倒してその耳にささやくようにそういえば、女は狼狽した様な様子を見せた後に小さな声で頷いた。


「っは・・っは・・・あぁ・・テオ・・ドリアっ・・アスさまぁぁ」

「・・・っ」


星明りの部屋の中で俺の上にのって夢中になって腰を振っている女を冷えた目で見ながらも、俺の下半身はまるで別の誰かの者の様にその行為に反応している。




俺の前世は女だった。




享年は23で暴行レイプの末に殺された―――可愛がっていた弟と妹の目の前で、あの子の代わりに・・横目に逃げた姿は確認したが、あのまま無事でいてくれたらいいと思った。

ただ、自分のせいでトラウマが残らなければいい、後悔を抱えてくれなければいいと思ったところで記憶は途切れている。

そして、この世界は物語であってはいるが、小説か何かだと思っていたのは確か友人がクリエーターでやってみて感想が欲しいと言って頼まれてやった乙女ゲームだったと思う。


自分のせいで色々とストーリーに誤差が生じてしまっているのではないかと思うが、別に今この世界に生きている自分が現実なのだからどうなってもそれが真実としてもいいだろうと勝手に完結させた。


それからの俺・・・―――私は散々だったと思う。

本来の“テオドリアス”はもういないが、国への愛着心だってあるし後継者としての責任感だってきちんと持っている。




だけど、あの夜以来女が抱けなくなった。




後継者としての責務はTOPとして民を導いていくとともに、のちの後継者を作るのも含まれる。

あれからも男としての生理現象だって来るし、何度か試したけど女を前にすると一切機能しなくなっていた。だからと言って男に反応したという事は、断じてない。女だった前世を思い出したと言っても今を男として生きている分そちらの方が強い。




婚約者との話も進んでいき、私は覚悟を決めて家族に話し―――――逃げた。




卑怯で無責任だと自分でも思う。




それでも私の家族は提案を受け入れ、世間的には私を死んだものとしそのように扱ってくれた。


けじめとしてもう2度と国へは戻るまい、家族には会うまいと決めたのだが、親たちはともかくあのかわいいかわいい弟たちはどうやって居場所を突き止めたのかは知らないが、何かにつけて私に会いに来るようになる。






ゲームのストーリー通りに王太子になった末の弟エドワルドは、日本で見初めた可愛らしい妻を伴って私を訪れる。



可愛らしくも美しい未来の国王夫妻は、穏やかな笑みを浮かべた後の宰相のルイと共に歴史深い国を背負って行ってくれるだろう。




物語では本当は死ぬはずだった自分テオドリアスルイフェイス。だが、意図せずして私も彼も生きてこの穏やかな今世を生きている。




見守っていこう何所までも、前世で出来なかった分の愛情を君たちに贈るよ。






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