表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/63

3章の18

 海から吹き付ける異国の風。その中にぽつりと佇んでいた淋しげな背中。

 驚きながらこちらを振り返り、そして笑ってくれた両の瞳。

 二つの目は、たまらなく澄んでいた。

 ――ねぇ、この風はどこから来たのかなぁ。

「壊しちゃダメ」

 はっ、と鈴音は我に返った。

 すぐ眼下から聞こえた声。そこにはエルが座り込んでいた。

 風が運んだ何かを、手を伸ばして掴み取った所だった。

 それを力無い仕草で掲げた。

「アリストの目、壊しちゃダメ」

 澄んだ瞳が、こちらを見つめた。

「……ぁ」

 十字架の真ん中に埋め込まれた水晶球。問いかけに正しい道を示してくれる千里眼。

 そして、彼の目。

 願うべき今を気づかせてくれた、彼の右の目。

「アリスト様」

 アリスト様。

 私はあの人の願いを叶えるんじゃなかったの? 一緒に笑うんじゃなかったの?

 またあの海辺の夕陽の中で、あの日みたいに笑うんじゃなかったの――?

 白骨の剣が滑り落ちる。

「何やってんのよ!」

 甲高い叫び声が上がった。

「さっさと殺してよ! その天使にとどめを刺してっ!」

 続けざまに笑い声。

 耳の中で暴れまわる、頭の中を軋ませて仕方が無い笑い声。

 鈴音は歯を食いしばった。

「……リンネ」

 エルが陽色の瞳をしばたたく。

「殺して! 殺して!」

 からり、と床に落ちていた剣が音を立てた。鈴音は再び、その手に刃を握った。

「……」

「さあ、とどめを刺すのよ!」

「リンネ」

「殺せ!」

「リンネ」

「殺せぇっ!」

「――っ!」

 右腕を、突き出した。

 ずしっ、と重たい感触が返ってくる。

 鈴音は食いしばった歯の間から、短く息を漏らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ