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3章の10

 きゃらきゃらきゃらきゃら

「!」

 頭を揺さぶる笑い声が響いた。

 ばっと振り向くと、小屋の入り口に昨晩の少女がもたれ掛っていた。小馬鹿にしたような顔でこちらを見、どこから出しているかも分からない声で笑う。

 鈴音は湧き上がる不快感を押さえつけながら問うた。

「っ……何か用ですか?」

「それ、盗っていっちゃうんだ」

 少女は鈴音の手にある剣を指差して言った。

 ぐ、と喉を詰まらせる。

「……誰かの物ならば、返しますよ。無断で持って帰るつもりは無いです」

「別にー。持ち主はとっくに死んでるからご自由にどうぞ?」

 少女は両手を肩に上げ、首をすくめて見せた。

「遠慮なく持って行っていいわよ。どうせその剣、あたしたちじゃ触る事もできないし」

 言いながら、小狡い目で鈴音を見る。

「その代わり、やってほしいことがあるのよね」

「……?」

 少女は鈴音のすぐ前に立つと、直接耳の中に囁くように言った。

「天使と魔法使いを殺してくれない?」

 ばっ、と鈴音は後ずさった。

「――なっ、どういう意味ですか」

「どういう意味って、言った通りよ。その剣使っていいから、天使と魔法使いを皆殺しにしてくれない?」

「何でそんな事を!」

 少女はふんと鼻を鳴らした。

「七百年前の復讐に決まってるじゃん」

 鈴音は絶句した。

「あ、アンタ、外国人みたいだから知らなかった?」

 そうね、と納得したように頷く少女。

「じゃあ教えてあげるわ。七百年前に起こった疫病の真実。あれは天使が魔法使いに復讐するために撒いた天使の骨が原因だったのよ」

「天使の……骨」

 少女は冷たい目で斜め上を仰ぎ、続けた。

「始まりは魔法使いの〝天使の羽狩り〟。あいつら〝セルトに疫病が蔓延する〟って未来を予知して、それに備えて天使の羽を集めだしたの。天使の羽が万能薬だって事くらいは知ってるでしょ? 疫病から自分たちの身を守るために、天使を捕まえて羽を毟ったのよ」

 鈴音は呆然と目を開いた。目の奥にその映像がリアルに映し出される。

「羽を奪われて丸裸になった天使たちは、そりゃあ怒りに怒ったでしょうね。それであんな酷い復讐に踏み切ったのよ」

 顔をしかめる少女。

「知ってる? 天使の骨は羽と違って猛毒なのよ。だから天使たちは自分の体を使って復讐した。自分で自分たちの体を燃やして、残った骨を砕いて空から撒いたのよ」

「……じゃあ、セルトの天使が絶滅した本当の理由は」

「そうよ。自殺」

 単語が吐き捨てられた。

 再び言葉を無くした鈴音をよそに、少女は続けた。

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