2章の14
「まあ、マルベルの魔法使いと知り合いって時点で普通じゃねぇよな」
魔法使い
エルは路地から躍り出た。
「おっ?」
不意に現れた少女に、男たちは戸惑って足を止めた。
「あ……確か嬢ちゃん、クラットの連れの」
「生きてるの?」
は? と男たちは首をひねった。
エルは俯きながら、絞り出すように問うた。
「……ホントに魔法使いが生きてるの?」
頭の中に〝やつら〟の顔が回り出す。
笑顔 笑顔 笑顔 歪んだ笑み
四方から伸びてくる手
手
手!
手!!
『ほら! こんなに採れたよ』
背の翼が強烈にうずいた。
「っ!」
ばっ、と翼を広げた。
硬質な輪郭がローブを跳ねのける。細い骨が夜風の吹く虚空へと突き上がった。
背を飾る白骨――
それは魔法使い達の一方的な仕打ちによって作り上げられた、痛みと恨みの記憶を刻んだ翼のなれの果てだった。
生きているのなら殺す。
魔法使いが生きているのなら、全員殺す!
唖然と口を開く男たちへ、エルは再度問いをぶつけようとした。
しかし、彼らが見ているのはエルではなかった。
「あっ、あっ、あっ」
「ま……まっ」
エルより高い所を指差し、がくがく震えている。
「マルベルだ!」
男たちは叫ぶと同時、弾かれたように踵を返して走り出した。
「あっ」
エルは追おうと翼をしならせかけた。
急速に流れ込んできたイーゼルに、はっと後ろを振り返った。
巨大な何かと目が合った。
瞳に宿る憎悪に息を呑む。エルはとっさに翼へとイーゼルを込めた。
しかし突然、ぐらりと意識が傾いた。
「――っ?」
視界の先でマルベルの影が鞭のようにしなる。エルは上空へ飛翔し、発射されたイーゼルの攻撃をやり過ごした。
滞空したまま再び、己のイーゼルに意識を送った。
どくん
嫌な動悸が全身に響き、またも意識が遠のきかける。湧き上がった風は途中で切れ、翼の周りに渦を巻いただけだった。
何で。
霞みかけた意識を叩き、エルは無理やり風を起こそうとした。
瞬間、何かが底に触れるのを感じた。
体を持ち上げていた気流が急激に崩れていく。落ちる。頬を滑っていく風圧にその事実を自覚する。
夜空から吐き出されるように、少女の体は落下していった。
その時。
凄まじい強度のイーゼルが体の下を通り抜けた。
え――だれ?
ぼすんっ、と何かの上に着地した。




