第一話
「…んっ……はぁ…もう朝か…」
私の名前はユキ。私立の高校に通う一年生だ。
「ユーキー。起きてるなら早くご飯食べに来なさいね。」
この人は私のお母さん。とっても美味しい料理を作ってくれるんだ。
「はぁい。すぐいきまーす。」
体を起こして制服に着替える。うちの高校は校則が緩く、制服は自己流にアレンジを加える事が可能である。ちなみに私のはいわゆる普通のセーラー服だ。手早く着替えて一階のリビングに降りる。
「お母さん、おはよ。」
「おはよう。早く食べちゃいなさい。遅刻しちゃうわよ?」
そう言われて私は時計を見る。なるほど、確かに遅刻しそうだ。
「…ふぅ……ごちそーさまっ!」
「ちょっとーご飯食べないの?」
「遅刻しちゃうっ!いってきます!!」
私は中身がほとんどない鞄を持って家を出る。学校までは自転車で通っている。川沿いの道を自転車で走る。風でスカートがはためく。まずい、このままじゃパンツ見える。川沿いなんて走るんじゃなかった。とりあえず今日のところは見られても仕方ない。我慢しよう。どうせ見られても減るもんじゃ…
「ちょっとユーキ!パンツ見えてるっ!」
「げっ…この声…」
そーっと後ろを見るとそこには我が幼馴染様がいらっしゃった。とても恐い顔で。
「まったく、あんたはいつになっても子供のままね。」
むっ。今のはちょっと馬鹿にされた気がする。確かに私は背も小さいし貧乳で、彼女ーモモはスタイル抜群だけどさ。
「なにシンキングタイムに入ってんのよ。あんた、遅刻するわよ?」
「…そーゆーモモこそ。いいの?学級委員長が遅刻だなんて、示しがつかないよ?」
「あぁ私は大丈夫よ?」
「なんでよ。私が遅刻するなら今ここにいるモモだって遅刻圏内じゃん。」
「あのねぇ…私の教室は手前の新校舎一階。あなたの教室は奥の旧校舎四階でしょ?」
「あっ…」
そうだった。モモ達二年生と受験生である三年生は最近出来た新校舎、私達一年生はボロボロの旧校舎だった。新校舎なら校門から歩いて二分で着くが、旧校舎となると十分くらいかかる。まずいなー、間に合わないなー。
ふと顔を上げると、そこにはモモの姿は無かった。どうやら私を見捨てて先に行ったらしい。
「……あんの……薄情者がぁああああっ!」
その日、私は遅刻した。