自殺
1月18日に修正しました
「死ぬのか」
俺の後ろから聞こえてきた。
だが振り向かず、足元より遠くに見える地面を見続ける。
「怖いならやめろ。飛び降りるなら空を見ながら飛ぶはずだ」
勝手な憶測を言うな。
俺は死ぬ。
それが俺の逃げ道だから。
「死ねばいいんじゃない。生きてても苦しいだけだ」
確かにそうだ。
「まあ自分は苦痛があってこそ生きるのが楽しいからな」
そんな事が言えるのは幸せな奴だけだ。
「……あんたの代わりに自分がなってもいい」
俺は振り向いてしまう。
そんな下らない嘘なのに。
「ただしあんたをそこまで追い詰めた奴の安全は保証しない」
そんな意味不明な事を言う彼。
学校の屋上でパイプ椅子に座り何かの本を読んでいる彼。
そんな訳分からない事を言われた所で自殺をやめる気はない。
俺は再び前を向く。
その時、体に衝撃が走り俺は前に倒れてしまう。
永遠の眠りから覚めるような刺激が襲う。
俺はそのまま地面に落ちる。
はずだった。
下に落ちた本のように。
「すまないな。手が滑ってな。それで間違ってあんたを拾ってしまった」
彼は不敵な笑みを浮かべながら俺の腕を掴んでいる。
明らかな嘘。
「離せよ」
耐えきれず言ってしまう俺。
「ここで離したら自分は人殺しだろ」
そんな事は俺には関係ない。
腕を振り解こうとしたが、振り解く前に俺は屋上に戻されてしまった。
「とりあえず明日も学校に来てみろよ。学校生活が変わるかもしれないだろ」
彼は疲労の色を見せながら不敵な笑みを浮かべている。
こいつのせいで飛び降りる気が失せた。
今日は家に戻るか。
「あんた、名前は? 同じ学年みたいだけど」
彼は学ランの襟に付けてある数字を掴んで見せている。
俺は返事を返さない。
「なら好きに呼ぶよ。自分は屋久 宗太」
そう言う彼を一瞥すると俺は屋上を後にした。