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1日目
僕の名前は藤森 晃、この春から大学生となり、都内某所のアパートで晴れて一人暮らしを始めた。
部屋の間取りはアパートの一階の隅のワンルーム。ユニットバス、キッチン付き。6畳と広さはお世辞でも広いとは言えない。1.5畳分のロフトがあるのがせめてもの救いだろう。
しかし、3万6千円という破格な値段に魅かれ、僕と両親はここを選んだのであった。
すぐに引っ越しが開始され、僕の私物はここへと運ばれた。実家の部屋とはほとんど変わらないところに冷蔵庫やレンジ、テレビといった現代の生活必需品が運び込まれてくるのだ。そりゃ部屋は狭くなる。
お金持ちのボンボンから見れば、ここは豚小屋のように見えるのかもしれない。
それでも引っ越しが終わるころには、私物が運ばれてきて部屋も僕色に変っていた。
「じゃあね。元気でやれよ」
そう言って両親は笑顔で扉を閉める。その瞬間に何とも言えない解放感が込み上げてきた。
この瞬間から念願の一人暮らしが始まったのだ。
その日の夜は引っ越しの疲れなどもあり、早めに就寝するのであった。
今思えばこの日の夜が最後の平穏であった気がする。