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1RooM  作者: 千ノ葉
11/11

444日目

「――かあさん。そんなに心配しないでも、ちゃんと食ってるって。ああ――彼女ともうまくやってる」


月一回かかってくる母の電話に対応しながら、僕は部屋の片づけをしていた。

一年以上も住んだ部屋は物置化して、客を呼ぶ度にこうやって大掃除をしなければならないのだ。


「あ――そろそろ、友達がくるわ。じゃあね」


半ば強制的に電話を切り、僕は掃除に専念する。

母には友達といったが今日来るのは、彼女だ。そりゃ、掃除にも気合いが入る。


掃除の途中、棚から何かが落ちた。

それは赤い小箱だった。


嫌な思い出だが、捨てるにも捨てられず部屋に置いていた。

あれからこの箱を開けてはいない。おそらく一生開けないだろう。


小箱を棚に置き、掃除を再開する。

作業は捗り、すぐに掃除は終わった。


ピンポーン――――


チャイムが鳴った。時間より少し早いが彼女だろう。

早足で、玄関に寄った途端、携帯電話が鳴った。


この着信メロディーは彼女だ。

僕は携帯を取って、通話ボタンを押した。

内容は玄関先に居るから開けてというところだろう。


「あ――晃君? ごめん。電車乗り遅れちゃって、少し遅れるかも」

「えっ?」


彼女の話の内容に僕は疑問を感じた。


「今どこ?」

「●●駅。あっ、今電車来た」


受話器からはしっかりと電車のアナウンスが聞こえる。

彼女は嘘などついていない。

じゃあ、玄関先にいるのは誰なのだろうか――――


僕は通話を切り、覗き穴から外を覗いた。


「――っ!」


心臓が飛び出しそうになり口に手を当てる。

玄関の先には目があった。


虹彩がはっきりと見えるほどに近くに。


「晃。いるんだろ? オジサンだよ」


玄関先からは不気味な声が聞こえた。

男性の低い声が一段と不気味さを醸し出している。


「晃。返してくれよ? それがないと俺は――――ごほごほ」


嫌な音がした。ボタボタとペンキを床に零すような鈍い音。


「あきら――あきら――あきら――」


ノブが回る。

ガチャガチャガチャ――――



僕は怖くなって、布団を被った。何が起きているのか理解できない。

僕に何を求めているのだ?

分からない。分からない――――



急に音がしなくなった。気配もなくなった。

僕は布団から顔を出し、部屋の中を見た。


何もいない――

奴は消えたのだ。


ゾクリ――――

この感覚は久しぶりだった。


だから思わず僕は振り向いてしまった。

そこには――――


「あきらぁ、かえしてくれよぉ――――」


死体がいた。全身から血を流し、胸がぱっくりと割れている。

僕は分かった。彼は死んだはずのオジサンだと――――


彼の手が伸ばされた――

僕に―――――


「みいつけた…………」


僕は失神した。

目を開けて、部屋の隅々を探したが、あの化け物はいなかった。



その日を境に僕の周りでは怪奇現象は起こっていない。

だが不思議な事に、あの赤い小箱を見つけることは出来なかった。

あの箱の中身は多分、彼の心臓だったのだろう。


ともかく、僕は短い間に色々なことを経験した。

この体験で学んだことは、下調べもしないで安い物件に手を出すのは危険だということ。

生者でも死者でも人の恨みを買うと恐ろしいということ。


この2つだ。


あと、覚えておくと良い。悪事を働けばそれが自分に返ってくるということを。


思い付きで書いたホラー作品なので、深くも面白くも怖くもないと思いますが――後悔はしていません。

むしろ、いつもとは違う感覚で楽しみながら書けて、いいリフレッシュになりました。


ご感想などありましたら、お気軽にお願いします。


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