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なろう小説作家、異世界転生する

作者: 仁見ヒロ
掲載日:2026/02/26




「――本日は、仁見ヒロ先生にお越しいただきました」



 スタジオのライトを浴びながら、女性アナウンサーの明るい声が響く。



 雑誌の取材と聞いていたが、用意されていたのは本格的な対談形式のセットだった。

 雑誌記者やカメラマンがこちらを窺っている。

 小説の制作秘話や、サラリーマン生活との両立について聞きたい、というのが今日の主旨だ。



『英霊少年〜三百年前に転移した少年が魔法理論を解明して世界を救うまでの物語〜』



 それが俺の生み出した作品だ。

 書籍はシリーズ累計八〇万部を突破。世の中には怪物級の有名作品がひしめいており、それに比べれば俺なんて、という思いはあるが、それでもコミカライズにアニメ化と、今の状況は自分でも出来過ぎだと感じる。



「本日はお越しいただきありがとうございます。司会を務めます、アナウンサーの里村です。

 本日の対談は雑誌への掲載と、後日YouTubeの公式チャンネルにもアップロードされます。

 よろしくお願いします」


「…よろしくお願いします」



「さて、今話題の『英霊少年』、物語の根幹の詠唱ともかけて、『エイショー』と呼ばれていますが、まずは、アニメ化、本当におめでとうございます!」


「ありがとうございます」



 改めて言葉にされると、やはり少し照れる。

 自分の空想が公共の電波に乗る。その事実は、何度聞いても気恥ずかしさが勝るのだ。



「私も大好きな作品なので、アニメで見られるのが本当に嬉しいです。

 また、仁見さんといえば、会社員と両立されながら小説を書いていると公表され、SNSで大きな話題となりました。

 これほどの実績を残された仁見さんに、本日はお仕事と執筆活動の両立についてお聞きしたいと思います」


「よろしくお願いします」



対談が本格的に始まる。



「――まず、小説はいつごろから書き始めたのでしょうか?」


「書き始めたのは、本当に最近のことなんです」


 偽らざる本音を口にする。


「今となっては書いていることが当たり前に感じますが、それまでは、創作の経験なんて全くと言って良いほどありませんでした」



「――最近だったんですね。書こうと思ったきっかけは、何だったのでしょうか?」


「本当、こんなことを言うのも恥ずかしいんですが…」


 少しだけ視線を落とし、俺は白状した。


「最近話題のAIチャットが流行り出して、なんとなく自分でもできそう、面白そうだからやってみよう、くらいの軽い気持ちで始めました」


 改めてミーハーな理由だなと恥ずかしくなる。



「――AIチャットですか、それは意外でした。AIがあっても、実際に小説を書き上げる人はなかなかいないと思いますが、やはり、大変だったのでしょうか?」


「大変という気持ちは、ほとんどなかったですね。よく、サラリーマンと並行して作品を作ることを褒めていただくのですが、私にとっては趣味の一環というか……。気づけば、何よりも楽しい時間になっていました」



「――趣味ですか…本当に楽しまれていたんですね。お仕事への影響はなかったんですか?」


「いや、結構寝不足になることがありましたね。没頭していて気づいたらもうこんな時間か、みたいな。

 朝の新聞配達のバイクの音が聞こえてきて、『やばい、寝ないと』ってなることもよくありました」



「――すごい集中力ですね。次の日、お仕事は辛くないんですか?」


「それが意外と、小説を書き始める前よりも仕事が充実していたんです。ずっとハイになっているような、不思議な感覚がありましたね。

 それに小説を書き始めた頃、実はちょうど仕事の繁忙期で、体力的にも限界が近かったんですけど…意外と仕事の成績も良く、会社の評価も上がりました」



「――いいことずくめですね」


「そうですね……ただ、やっぱり反動もあって、第一章を書き終えたタイミングで、更新が止まってしまったんです」



「――それは、なにかブランクのようなことでしょうか?」


「いえ、アイディアが思いつかないというよりは、なんとなく投稿サイトを開くのがめんどくさくなって。

 今思うと疲れていたのかもしれませんが、疲れを自覚したり、休みたいと思ったりしておらず、自然とやめちゃってたんですよね。」



「――その間はどのように過ごされていたんですか?」


「ただ普通に過ごしていました。それこそ、小説を書き始める前みたいに、仕事が終わったら、ゲーム、漫画、動画…」



 空白期間、俺はただのサラリーマンに戻っていた。



「ふと忘れた頃に、通勤電車でスマホを見ていて。

 いつも見ているホーム画面、ずっとあったはずの投稿サイトのアイコンが、なぜか無性に気になったんです。

 久々に見てみよう、という気になりました」



 饒舌に語る俺に対し、里村アナは相槌ではなく、深く頷くことで話を促す。



「それまでは毎日投稿していたんですけど、PV数もあまり伸びなくて。

 そもそも趣味だし気にしないと決めていたんですが…久々に開いてみると、すごいPV数になっていたんです」



「――そんなに大きな反響があったんですね」


「はい。正直驚きました。

 ただ趣味でやっていたことが、知らないうちにこれほど多くの人に見られている。

 全世界に公開されるインターネットの力を、どこか甘く見ていたのかもしれません」



「――そんな制作秘話があったんですね。あの…」


 里村アナの口調が急に砕ける。


「実は私も、リアルタイムで原作を追っていたんです。朝六時の投稿を、本当に楽しみにしていました」


「えっ、そうだったんですか?

それは…ありがとうございます」


「はい。ですから、更新が止まった時は、私もめちゃくちゃ心配しました」


 それまで凛とアナウンサー然していた彼女の雰囲気が柔和になり、心地よい微笑みに胸が躍る。


「それは、それは…なかなか古参ですね。ご心配をおかけしました」


素直に嬉しい。けれど、それ以上にこそばゆい。



「こほん、では、すみません。話を戻しまして…。

――復帰されてからは完結まで止まることなく投稿されましたが、継続できた秘訣を聞けますか?」


「復帰後は、皆さんの期待に応えたいという思いも出てきましたが…基本的にはやっぱり趣味として楽しくて…。

 なんというか、自由度が極限に高いゲームをプレイしているみたいで。

 次がどうなるか自分でもわからない。作者ではありますが、同時に一読者のような。

 自分で無限の選択肢から進められる物語って、めちゃくちゃ贅沢ですよね」


 言葉がノってしまい、相槌を待たずに話してしまう。


「ちょっと恥ずかしいんですけど…第七話に、星空の下でアルトがリィナを励ますシーンがあるんです。

 恋愛描写なんて恥ずかしくて書くつもりはなかったんですけど、この時のアルトとリィナは手を重ねる方が自然だと思ったんですよね。

 そうしたら、次の話で、修行の一環でリィナから手を繋ぐ提案をする、っていう流れが勝手に思い浮かんで。

 正直、自分で考えた話なのに、うるっとしたり、ドキっとしたりしました」



 …流石に話しすぎた。今の俺、客観的に見て相当きもいな。


 俺は気まずさに耐えきれず、彼女と目を合わせることができなくなった。



「あのシーン私も大好きです。

 それにうらやましいです。私にもその才能があれば、きっと面白いんでしょうね」



 そんな俺をファンらしく微かにうっとりとした表情で見つめる。

 演技も入っていると思うが、少しだけ救われる。



「才能という才能は、私にはあまりないと思っています…。

 AIチャットがなければ、私に小説なんて絶対に無理だったと思います。

 そもそも、間違いなく自分からやろうとしなかったはずですから」



「――きっと対談をご覧のみなさんも気になっていると思いますが、仁見さんはどのようにAIチャットを使われているのでしょうか。

 …この質問、お聞きしても大丈夫でしたか?」


「もちろん、何も問題ないです。

 私の場合は、アイデアを整理したり、文章を素早く組み立てたりすることに活用しています。

 AIに全て書かせるようなことはしていないですね。というより、まだまだ面白いストーリーを作り上げることはできないイメージです。

 一方で、私の文体を綺麗に整えたり、情景描写や心情描写を少し足したり、そういったサポートは得意で、時短としてはすごく助かってます。

 頭の中で繰り広げられる登場人物の会話や情景描写、心理描写を書き連ねるだけで、それが綺麗な文章に近づいていく。そんな使い方をしています」



「――仁見さんが原作者で、AIチャットが編纂や編集を担っているようなイメージなんでしょうか」


「そうですね。ただ、AIが出した文章をそのまま投稿することはまずありません。

 読んでいくとニュアンスが違ったり、もっと自分らしい表現に直したくなったりして…。

 結局、推敲にめちゃくちゃ時間がかかって、何周も読み直して、気づけば夜中や朝方になっていることもありました」



「――AIを使っても簡単ではないんですね」


「もっとうまく使える人はいると思いますが、私の印象ではAIって結論を急ぎすぎるんですよね。

 頭の中で想像したり考察したりしたい、一緒に登場人物の苦悩や心情を体験したい。

 どうでもいい日常回だって楽しみたい。そこを考えるのが人間の役割なのかなって思います。」



「――AIに置き換えられない部分があるんですね。」


「そうだと思います。どんなに技術が進んでも、やっぱりゼロからイチを作り出す作家には勝てないと思います。

 …最近はAI作家なんて別称じみた表現もありますが、これはただAIが出したものをコピペしただけ、もしくはちょっと書き換えただけのもの。

 もちろん、みんなツールとしてAIを使うことには賛成できるはずです。Wordじゃなくて手書きで書け、言葉の意味をネットで調べるな紙辞書使えって言うようなものですからね。」


 言葉が止まらない。一呼吸だけおいて話を続ける。


 「ただ、自分で作品として続けていくと、絶対もっとこうしたい!この方が自然!ってなることが多いと思います。

 私も、最初、右も左もわからなかった時は、AIが出力したものの方が、自分が考えるより正しいって思ってしまいました。

 でも続けると全然違うんです。拙いかもしれませんが、私の言葉を見てくれて、気に入ってくれる人がいる、それが嬉しいから続けられるんだと思います。」



「――AI作家になったのではなく、AIを利用して作家になった、成長した、と。」


「はい。…そう言っていただけたら嬉しいです。

 ただ、こんな偉そうなことを言ってますが、私自身、自分を作家とはあまり思っていません。

 あくまで趣味の延長、本業はサラリーマンというのがしっくりくる肩書です。

 これまで、その身ひとつで作品を作って来られた作家様には到底及びませんが、自分の身の丈で、面白いと思える作品を作りたいと思います」



「――本業の会社員についてもお聞きして大丈夫でしょうか」


「もちろん大丈夫です。」



「――仁見さんは普段、どういったお仕事をされているんですか?」


「そうですね…簡単に言うと『人に関わる仕事』でしょうか」



「――人に関わるお仕事。具体的に伺ってもよろしいですか?」


 好奇心を含んだ問いかけに、少し引いた笑みが浮かぶ。


「はい。本業に迷惑をかけたくないので、直接的な名称は避けますが…。

 悩みや不安を抱えた人の話を聞き、『将来どうなりたいか』という願いを叶える、そのお手伝いをしています」


「それは、とても素敵なお仕事ですね」


「ありがとうございます」


 今日一番の賞賛に、気恥ずかしく、小さく会釈した。


「日々の仕事の中で、毎日、違う誰かの想いを聞き、それを叶えるために考える。その繰り返しの積み重ねが、小説を書く上での土台になっている自覚はあります。

 頭の中で勝手に会話が繰り広げられるんです。

『こう言ったら、この人からこう返ってくるかな』

『今日の話の続きはどうなるかな』

『もう一回同じ面談があったら、他にどんなパターンがあったかな』

 何度も何度も同じシチュエーションを振り返る……。

 そんな思考のプロセスが、物語を紡ぐ作業と驚くほど似ているんです。

 だから、私は書くことが楽しくて仕方ないのかもしれません。」



「――先ほど、お仕事も順調だと伺いましたが、仁見さんのお話を聞く限り、職場での評価も相当高いのではないですか?」


「恥ずかしいですが、頼ってくださる方がたくさんいて…。身に余る評価をいただけているとは思います」



「――それだけの能力があれば、フリーランスとして独立したり、ご自身で発信の場を広げたりすることも考えられたのではないですか?」


 里村アナは少し身を乗り出す。これまで以上に気持ちの乗った質問に答えを迷う。


「…考えたことがないと言えば、嘘になります。今は個人の発信が容易な時代ですから。

 けれど、私にとってそれは、会社に対する『裏切り』のように感じてしまうんです」



「――裏切り、ですか」


「ええ。仕事で得た知見や繋がりを、自分だけの利益のために切り離して使う。それをやっている自分を、たぶん私は『楽しい』とは思えない。

 仕事で関わる人との信頼関係、これまで受けた恩、義理、それらを蔑ろにして、自分の利益を追うことは、私にはできないし、続けられないんです」



 誠実すぎるほどの言葉に、スタジオに一瞬の静寂が流れた。アナウンサーは深く頷き、話題を作品へと戻した。



「――なるほど。その実直さが、作品の根底にあるのですね。

 では、どうして今回『異世界ファンタジー』という題材を選ばれたのでしょうか?

 仁見さんなら、もっと現実に即したノンフィクションなども書けそうですが」



 話が戻りますが、と前置きして続ける。



「一番の理由は、それが『息抜き』だからです」



 仁見の表情が、少年のような純粋な笑顔に染まる。



「仕事の合間に、自分が一番楽しいと思える世界に浸りたかった。

 恥ずかしながら、異世界ファンタジーが大好きなんです。

 『無職転生』や『幼女戦記』、『ニセモノの錬金術師』そういった圧倒的な物語から、明日を生きる活力をもらってきました。

 だから、書くならこのジャンルと自然と決まっていました」



「――でも、仁見さんの描くファンタジーは、少し”特殊”ですよね」


「そうかもしれません。私は、チートスキルや血統だけで道が開けるような、ご都合主義的な展開があまり好きではないんです。

 もちろんそれらも物語のキーパーツですし、最後に主人公が強くなり輝くっていうのは当然求めますが、そこに至るまでの『努力』、過程を大切にしたい。

 運命に翻弄されても、自らの手で道を切り開く、そんな強さを描きたいんです」



 仁見は少し照れくさそうに、けれど自信を持って続けた。



「それに、大学で化学を専攻していたせいか、魔法にも理屈を求めてしまうんです。ただ『使える』だけじゃなく、なぜ使えるのか。魔法という事象を化学の視点で解釈したい。

 そんな知的好奇心を満たせる物語を、私自身が読みたかったのかもしれません」



「――確かに。使い古されたジャンル、いわゆる王道ではありますが、その理知的な鋭さが読者に『新しさ』として評価されているのでしょうね」

 


 アナウンサーの言葉に笑顔で応えた。



「…それは、最高に嬉しいお言葉です。ありがとうございます」



 里村アナは深いお辞儀で仁見の感謝を受ける。



 対談の終わりが近づいているのを肌で感じた。



「――本日は長時間の対談、ありがとうございました。最後に、仁見さんから読者の皆様へメッセージをいただけますでしょうか」


「はい。こうやって対談のお声をかけていただいたのも、アニメ化できたのも、全てこの作品を好きでいてくださる皆様のおかげです。

 私自身、たくさんの作品に助けられてきました。仕事していて辛い時も、会社を辞めたくなるときも、何度もありました。そんな時に大好きな作品が支えてくれたから、今笑って過ごせています。

 できる限り投稿頻度を落とさずに続けたいと思いますので、引き続き皆様の一日を少しだけ豊かにできれば幸いです。

 本日はありがとうございました!」



「ありがとうございました! 仁見ヒロさんでした!」



 スタッフたちの小規模な拍手が会場に響く。鳴り止むまで、俺は真剣な表情を維持する。


「はい、オッケーです!」


 監督らしきスタッフの声がかかった瞬間、張り詰めていた緊張が一気に弛緩した。


「すみません、最後に写真撮影だけいいですか」


 カメラマンの依頼でアナウンサーと並んで集合写真をとる。里村アナの肩が近づき、さっきと違う緊張感が走る。



 撮影を終えたカメラマンが去ったあと、里村アナが歩み寄ってきた。


「今日はありがとうございました。あの、さっきも言っちゃったんですけど、本当に大ファンで…今日を楽しみにしてたんです」


 凛とした仕事人の顔から一変、柔らかな笑顔を間近に感じて、思わずドキリとする。



「あ、はい…すみません、ありがとうございます」


 焦りから口ごもってしまう。



「良かったら、私も一緒に写真撮ってもらえませんか? …どこにも出さないので」


 上目遣いにそうお願いされると、断る勇気も湧かない。


「あ、えっと、はい、大丈夫です」


 先ほどの対談では流暢に話せていたのに、二人きりになってから、完全に挙動不審になっている。


「ありがとうございます!ちょっとだけ待っててくださいね」


 彼女はわざとらしく手で「待ってて」とポーズし、早足でマネージャーからスマホを受け取る。



 戻ってくると、インカメラを起動して一気に肩を寄せてきた。

 彼女の頭が当たりそうなほど接近する。パーソナルスペースを完全に無視した距離感に、どきどきよりも若干の怖さを感じる。



「…ありがとうございました。大切にします」



 スマホを大切そうに胸の前で抱き抱えた後、彼女は小声で囁いた。



「…あの、もし良かったら……今度、ご飯とかどうですか?」



 予感はあった。だが、まさか本当に誘われるとは思わなかった。



「えーっと、えー…メンバーは……?」



「二人で……」



 試すような目で見つめられ、俺は焦りながら口をパクパクと開く。


 指輪をつけているのは見えているはず…あえて誘われているのだ。



「あー、あの、ごめんなさい。妻と娘がいるので……二人きりは、ちょっと」


 誘惑と戦いながらも、なんとか断りを伝える。


 里村アナは一拍置いてその機微を理解し、直前までの女性らしい柔らかさを消した。


 一瞬にして、対談でのアナウンサーの顔に戻った。



「そうですか、残念です。また機会があれば、お願いします!」


「はい、ぜひ。…今日はありがとうございました」


 決心がブレないうちに、そそくさとスタジオを後にする。


 スタッフの挨拶に反応しながらビルを出ると、見慣れた街道が広がっていた。



「ふぅ……疲れた」


 特別扱いされる空間から、普通の一人に戻る。


(里村さん、可愛かったな。やっぱり勿体なかったかな…。)


 そんな調子乗った思考が頭をよぎる。



 目の前の信号が点滅するが、急ぐ気にならない。ぼーっと赤信号で立ち止まり、無意識的にポケットからスマホを取り出した。



 妻からのLINEが三件。「がんばってね」というメッセージとスタンプ二つ。


 少しにんまりしつつも、「かえります」とだけ淡白に返した。


 スタンプで返す方がいいかもしれないが、男がスタンプを使うのは、どうにも照れくさい。



 信号が青に変わり、横断歩道を歩きながら携帯をポケットにしまおうとしたが…



 ガチャン。



 手元が狂い、スマホが落ちる。


 音で気づき、振り返る。自分のスマホがアスファルトに転がっている。

 反転して拾おうと腰を屈めた瞬間、視界の端に減速のゆるいトラックの影が映り込む…




 ――意識は真っ暗な闇に飲み込まれた。




 どれほどの時間が経っただろうか。時間が経ったのかもわからない。



 前屈みの姿勢のまま、途切れていた意識が繋がる。



「おっと…あれ…」



 脳が視覚情報を処理し始めると、手を伸ばした先にスマホはなく、さっきまで見ていた灰色のアスファルトも、草花や木の根が這う黄緑色の土へと変わっていた。



 ゆっくりと体を起こし、顔を上げる。



「え、なにこれ…」



 目の前には、木漏れ日が差し込む、雄大な森が広がっていた。




「もしかして……俺、異世界転生、した?」




 なろう小説作家、異世界転生する。


別作品「英霊少年〜三百年前に転移した少年が魔法理論を解明して世界を救うまでの物語〜」の第一章プロットが完成した勢いで書いた作品です。


妄想を垂れ流してすみません。

この物語は今のところ全てフィクションです。

本当になったら嬉しいな。

(休載とトラックに轢かれること以外は)


※一発ネタのつもりで書いたので、異世界転生後の仁見先生の活躍はあまり期待しないでください。読切 or 短編のイメージでお付き合いください。気が向いたら続きを書きます。すでに書く構想はありますが、先に英霊少年の第一章を書き上げます。


※本作品は 春チャレンジ2026「仕事」 に参加します。通勤中にバナーが目に入り、妄想が始まったのが執筆の背景でした。今の仕事しながら作家の仕事できたら最高だよなぁ

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