◆ヴォルガ膠着戦( 1942–1944) 〜極東へのソ連軍事負担とレンドリース縮小が引き起こした「史実とは異なる膠着の大 河」〜
■ 前提条件(この世界線)
• ソ連は 1939–41年に対日戦に戦力の大半を投入
→ 史実でシベリア方面に温存していた精鋭部隊・装備の多くが消耗。
• 1941年モスクワがドイツにより陥落。スターリン政権はヴォルガ流域のサマラ(クイビ
シェフ)へ大部分が後退。
• 極東では 満州・朝鮮の占領と軍政が続き、20~30個師団規模が動かせない。
• 西側は
• ソ連の「極東侵略(満州・朝鮮)」に強い疑念
• よって レンドリース供給量は史実より少なく、開始時期も遅延
• このため、ソ連は “総崩壊はしないが反攻能力が不足する” 独特の状態に陥る。
---
◆ 1942年:ヴォルガ戦線の形成
■ ドイツの進撃は史実より速く・深くなる
• ソ連が極東で戦力を食われているため、「シベリア師団」の大量投入は起きない。
• 日本との停戦は 1941年末〜42年初頭 に成立したが、
ソ連は疲弊しきっており、停戦直後に西へ師団を大規模転用する余裕がない。
その結果、
● ドイツは 1942年初頭にヴォルガへ到達
• 史実のスターリングラードのような市街戦ではなく、
「モスクワ陥落後の広域戦線の押し合い」としてヴォルガ流域に達する。
• スターリングラードにも戦闘は発生するが、
市街戦の大虐殺的な膠着ではなく、補給線の限界による停止という形が強い。
---
◆ 1942〜1943年:ヴォルガ両岸での決定的な膠着
■ 地理的要因:
ヴォルガは依然として
東西交通と補給を完全に分断する天然の障壁。
ドイツ軍は橋頭堡を築こうとするが、
● ドイツ側の問題
1. 補給線が長大化(モスクワ占領によってやや改善するが限界)
2. 東岸は草原で遮蔽物が少なく、ソ連砲兵の良い射撃場
3. ドイツ軍も史実より戦車・燃料の補充が少なく、遠征限界に達する
● ソ連側の問題
1. 史実より深刻な航空機不足(レンドリース遅延)
2. 寒冷地装備・車両・トラックが不足し、機動戦が成立しない
3. 西方戦線での大規模反攻作戦を計画できない
→ 結果として、両軍とも大河の突破ができず、ヴォルガは“新しい前線”へ固定される。
---
◆戦闘の性質
● 1. 「スターリングラードの代替」:広域砲撃戦
• 市街での肉弾戦は史実ほど長期化しない。
• その代わり ヴォルガ全長600km以上の区間で砲兵戦と空襲が続く。
• ソ連側の戦術:
• 対岸に砲兵陣地
• 夜間の渡河工作
• 補給船団の小型化・分散化
• ドイツ側の戦術:
• 対岸制圧のための大規模な砲兵射撃
• 空軍によるヴォルガ航路遮断
• 補給拠点の都市化
● 2. 消耗戦の深刻さは史実のスターリングラードほどではない
両軍ともに“決戦”を挑むだけの兵力がないため、
代わりに **中強度の戦闘が延々と続く「慢性戦線」**になる。
● 3. 1943年には膠着が決定的に
• ソ連は極東軍の再配置も進まない(朝鮮・満州の統治維持が必要)
• 連合国のレンドリースは政治的に絞られたまま
「スターリングラード的な逆転劇」は発生せず、
ヴォルガ西岸をドイツ、東岸をソ連が保持したまま固定化する。
---
◆ 1944年:広正面の均衡と「持久戦化」
• ドイツはヴォルガを越える作戦能力を失い、
• ソ連も補給・装備・航空機不足で大規模反攻はできない。
結果として、
・ヨーロッパの戦争は“史実より長く続く”
・寄せ集めの東部戦線ではなく「長期の大陸膠着戦」と化す
・英米は「ソ連が弱体化したままの方が都合が良い」と判断しレンドリースも抑制
---
◆この膠着がもたらした世界史的影響(あなたの世界線へのフィット)
1. 独ソ戦全体の消耗が大幅に減少
2. ドイツ軍の戦力が史実より温存され、ノルマンディ作戦に与える圧力が増大
3. 連合軍が欧州戦線で人的損害を増やし、日本の参戦を求める理由が強まる
4. 日本はソ連と停戦済みで英米と敵対しておらず、連合国入りが現実味を帯びる
---
まとめ:ヴォルガ戦線の本質
この世界のヴォルガは
「スターリングラードの悲劇的消耗」ではなく、
**“ドイツ軍もソ連軍も突破不能の長期静態戦線”**として固定される。
これは極東戦争によるソ連の衰弱と、西側支援の抑制が引き起こした
完全に新しい欧州戦争構造である。




