伝説のチャンピオン、闇の騎士
闇の騎士は冷たい視線を投げ、巨大な剣を軽く振る。松明の光が、黒い甲冑に不気味な輝きを宿す。
「なんだ? 挑戦者か? 良い、お前が10,000人の犠牲者となるだろう。だが、戦うか?」
球一は闘技場の砂を踏みしめ、にやりと笑う。
「負けた方は相手の命令に従うと言う事でいいか?」
闇の騎士は興味深げに眉を上げ、指先で顎をなぞる。観客のざわめきが一瞬静まる。
「ほう、面白い提案だ。受けて立とう。」
球一は拳を握り、声を張り上げる。
「もしも、俺が勝ったらお前には野球部に入部してもらうぞ。」
闇の騎士は冷笑を浮かべ、剣を抜く。黒い刃が松明の光を吸い込み、アリーナに重い気配が広がる。
「ふっ…愚かな人間よ。そんな些細な要求など造作もない。さあ来い! 貴様の命運もここまでだ!」
球一は闘技場の隅に転がる石を拾い、152キロの剛速球で闇の騎士目掛けて投げつける。石が風を切り、砂埃を巻き上げる。
闇の騎士は驚きつつも冷静に剣を構え、防御する。石が刃に当たり、カチンと金属音を立てて弾かれる。
「ぐっ…小癪な真似を…だがこの程度で私を倒せるわけがない!」
怒りに燃えた目で球一を睨みつける。観客席からどよめきが上がる。
球一は再び石を拾い、153キロの直球を投げつける。砂地に足を踏み込み、渾身のフォームで放つ。
「何をしている……!? 打ち返す事ぐらいお前なら容易いはずだろう!? やってみろ!?」
闇の騎士は焦りながらも剣で打ち返す。石が弧を描き、闘技場の壁にぶつかる。額に汗が滲み、彼はそれを拭う。
「く…っ! まさか本当に投げるだけとは…これほど虚仮威しだったとはな…失望したぞ、人間。」
球一は打球の行方を指さし、声を張り上げる。
「あぁ、俺も失望したよ。石の弾き飛んだ場所を見てみろ? あそこはショートの守備の定位置じゃないか? 今のお前はショートゴロでアウトだ。その体格は虚仮威しなのか?」
闇の騎士は歯噛みし、後ずさる。険しい表情で剣を構え直す。
「ちっ…なるほど、そういうことか…だが野球ごときに私は負けん!」
球一はさらに石を拾い、闘技場の砂を蹴り上げる。
「もう一球いくぞ……!? 野球に負けたくないなら、俺を唸らせるようなホームランを打ってみろ!? うおおおぉぉ!」
153キロの直球を投げつける。石が火花を散らす勢いで飛ぶ。
闇の騎士は全力で剣を振るう。渾身のスイングで石を打ち返す。石が空高く舞い上がり、観客席を越えて遠くへ飛ぶ。
「ふん! この一撃で貴様の野望を砕いてくれる!」
球一は打ち返された打球を見つめ、信じられない様子で呟く。
「なっ……!? い、いや……今のはライトフライって所か……ふう、助かったぜ……」
闇の騎士は驚愕の面持ちで打球を見送る。恥ずかしさで顔を赤らめ、剣を握りしめる。
「ば、馬鹿な…私ともあろう者が、こんな遊戯に熱くなるなんて…くっ…屈辱的だ。」
球一は再び石を拾い、肩を落とす。
「あぁ、俺も屈辱的だ。お前を完全に空振りに抑えてやるつもりなのに、ここまで全て撃ち返されている……おまけに今のは完全に流し方向への打球だ……お前、ただのパワー野郎じゃなかったのかよ……もうプライドがズタズタだ……」
闇の騎士は剣を地面に叩きつけ、荒々しく呼吸する。観客の歓声が闘技場を揺らす。
「黙れっ! 貴様ごときに侮辱される覚えはない! まだ終わってはいないぞ…次こそ本気を見せてやろう!」
球一は闘技場の砂を踏みしめ、渾身の構えを取る。
「いくぞ! 闇の騎士! これが俺の本気の投球だ! うおおおおぉぉ!」




