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プロローグ 『魔王のいない世界で』
何もない空間で俺は目を覚ました。
「どこだここ?俺は…」
死んだはずだ。だというのに意識はある。体に傷も見当たらない。死んだ後のことは知らないが、こういうものなのだろうか。
真っ白な空間で何もない。あるのは、俺の体だけ。
…寂しいもんだな。
しかし、その空間がそのまま白いことはなかった。だんだんと、地面に草木が芽生え、壁だったものがなくなり、空には青空が見えるようになった。
どうにも訳が分からない。死後の世界というものはいろいろ不思議なことが起こるのだろうか?
「おぉ~よしよし。もうちょっとこっちまで歩いてこれるか~」
気が付いたら声が聞こえてきた。男の声だ。いつもうんざりしていた聞き覚えのある声だ。
そちらに視線を向けると、声の主が赤ん坊を抱きかかえていた。
「あの子がお前のお姉さんなんだぞ。仲よくしろよ」
あぁ、そういうことか。なんとなく分かった。
俺は死んで、どうやら意識だけがこの赤ん坊の中に入ったらしい。何の因果かよりにもよってこの人の赤ん坊だなんて。
赤ん坊の体を動かすことはできない。ただ見ていることしかできないようだ。まぁそれでもいいか。
これからは、この赤ん坊の行く末を見ることになるのだろう。何が起きるかは知らないがどうかこの魔王が倒された世界で幸せに暮らしてほしいものだ。




