第76話 勇者パーティーの帰還⑨
三人の適性を調べるために色んなことを試してみた。
剣術、武術、魔術、策術などなど。
どれが得意なのかを知るためにはトライアンドエラーを繰り返すしかない。
流石に私一人では負担が大きいので魔術関連に関してはエベリナに任せた。
彼女も自分の命がかかっているということで協力的なのはありがたがった。
そして、数日後。
大方の得意分野を把握することができた。
なので、再構築した陣形を三人に発表することにした。
三人の表情はかなり疲れている。
自然公園でこんなに酷い顔をしているのは彼ら以外には恐らくいないだろう。
ごめん、嘘ついた。
多分だけど、私が一番酷い顔をしていると思う。
とはいえ、今後の快適さを取るためなら多少の無理は通さないと。
必要投資と思えばこれくらいの疲労なんともない。
「まずはイヴィー。前衛を担当してもらうわ」
バレーをした時から薄々感じていたけど、イヴィーは身体能力がかなり高い。
それに武器の扱いが上手い。
色んな武器を触らせてみたけど、感覚でどう扱うか直感で分かるみたいだ。
その中でも特に剣の扱いは素晴らしい。
「分かったけど……激しく動くと胸が痛いから嫌なのね」
痛いならもぎ取ってやろうか?
気持ちは分からんではないけど、生き残るためなんだから我慢して。
「イヴィーは昔から運動神経良かったものね。剣を振っている姿とってもカッコいいと思うわ。戦乙女みたい」
「そ、そう? 戦乙女ね……」
イアンに褒められて、イヴィーは少し嬉しそうに体をくねらした。
「イアンは支援を担当ね」
彼は魔術が得意だった。
その中でも支援魔術に突出していた。
出来れば攻撃魔術も欲しかったけど贅沢は言ってはいけない。
才能を見出したのはエベリナで、私に報告してきた時の少し羨ましそうな表情はやけに印象に残っている。
「頑張るわ!」
うん、言うことなし。
「イアンが支援魔術ね。前だったら違和感を感じるけど、今なら凄くしっくりくるわね」
「ありがとう、イヴィー。しっかり支援するから覚悟しなさいよ!」
「え、ええ。お願いするわ」
まだ、イヴィーはイアンの素には慣れてないみたいだ。
まぁ、二人は昔からの付き合いだから違和感は簡単に拭えないだろう。
「オスニエルは後方を担当ね」
彼は召喚術及び使役が得意というか適性があった。
最初は意外だと思った。
でも、よくよく考えてみれば、なるほどと腑に落ちた。
しかし、オスニエルの性格と適性が致命的に合っていないのが痛すぎる。
「分かった」
その証拠に後方と言われた瞬間、オスニエルの表情が明らかに渋くなった。
いや、どんだけ前に出たいの?
その才能が、自分の立場とどれほど噛み合っているか気付かない辺りオスニエルらしい。
まぁ、オスニエルに関しては思うところがあるがとりあえず新しい陣形が完成した。
本当はもっと時間をかけてそれぞれの地力をあげたいところだけど、そう悠長にしていられないのが現状。
なので、一週間ほどを修行に費やした後に次の街へ向かうことにした。




