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第70話 因縁の終わり


 勝った。

 俺は勝ったんだ。

 自分の実力で、加護を持ったオスニエルに。


 とはいえ相当なダメージを負った。

 腹部と肩口から溢れる血は思ったよりも多い。

 一瞬、視界が暗くなる。

 戦闘が終わったことで気持ちが緩んだせいか、体が一気に重くなってきた。


 俺はオスニエルにかけていた重力操作魔術を解除する。

 反撃を一応考慮して、距離を取った途端に崩れ落ちて尻餅をついてしまう。

 体が酸素を欲しがって、呼吸が荒くなる。


 オスニエルは反撃することはなく、ずっと呆然としていた。

 固まって全く動かない。


「お兄様!」

「ルーファス!」


 ティナとセラフィが心配してくれて集まってきてくれた。


 その後ろからゆっくりとした足取りでお姉さん組が来てくれた。

 ヴァリスは満足そうに頷き、フェリシアはどこか嬉しそうに頬に手を添えている。


「見世物として中々の面白さじゃったぞ」

「本当に男の子って元気ねぇ」


 プネブマはしゃがんで俺に向けて手を伸ばす。

 すると淡い光が全身を包み込んで痛みがスーッと消えていく。


「ありがとう」

「お安い御用じゃん」


 あっという間に完治させてくれたプネブマは立ち上がって、オスニエルの方へと歩いて行った。

 彼はプネブマを見て、少し頬を赤らめて目を逸らした。

 なぜかイヴィーも目をキラキラと輝かせている。


「ルーファスの仲間が僕に何か用か?」

「結構ダメージヤバイっしょ? 癒してあげるっつーか。あと、加護返してもらう的な?」

「癒す? 僕を? ルーファスを殺そうとしていた僕を? 信じられないな」


 オスニエルの言葉を聞いているのかいないのか、プネブマは自分の爪を眺めながら、もう一方の手を伸ばす。


「それって、ちゃんルーとちゃんオスの問題っしょ? ウチには関係ないし。それに怪我してる人間がいるのに無視とか大精霊的に有り得ないって感じ?」

「ちゃんオス? 大精霊……?」


 オスニエルが光に包まれて、すぐに完治する。

 互いに戦いの傷は残っていない。

 オスニエルは驚きながら、プネブマを熱のこもった瞳で見つめる。


「こんな一瞬で……それに大精霊と。貴女が、この加護を僕に……」

「まー、間接的にって感じだけど」

「あぁ、麗しの大精霊様。悪の甘言に乗せられた僕には貴女様の加護を受けるには値しません」

「ん? そもそも加護ってないし」

「ですが、僕は必ずこの罪を洗い流し、もう一度貴女様に認められるように精進します!」

「全然話聞いてねーし、ウケる。とりまガンバ」


 まるで憑き物が取れたかのようにオスニエルの表情が晴れやかになった。

 それから、俺の方へと来て深々と頭を下げた。

 今までのオスニエルからは到底考えられない行動に、俺だけではなくシェリル姉さん、イヴィーも驚愕した。


「ルーファス、これまですまなかった。僕が弱くなったのは君のせいじゃなく、僕自身が原因だった。加護はあったままだった。その証拠に大精霊様は僕に慈悲をくれた。きっと僕の心の中にいた悪魔が加護の効力を消していたんだ」

「あ、ああ」


 なんか、物凄い勘違いをしているようだが……。

 まぁ、これで逆恨みをされずに済むならいいか。

 まさか、プネブマがオスニエルを更生させるとは思わなかった。

 大精霊マジ半端ねぇ。



×××



 こうして、俺とオスニエルの因縁は終わりを告げた。

 色々と勘違いをしたままだが、結果的に彼は良い方向へと変化しようとしていた。

 しかし、少し困ったこともある。

 戦いから二日が過ぎたが、俺たちはセラピアでの慰安旅行を続けていた。

 その間、オスニエルがストーカーのごとくプネブマにつきまとっているのだ。


「大精霊様、僕はどこを直せばいいでしょうか?」

「大精霊様、なんて美しい輝き!」

「大精霊様、僕にできることは有りませんか? これまで加護を与えてくれた感謝をしたいのです!」


 凄いのはプネブマが一切嫌な顔をしないで対応していること。

 大精霊の懐の深さ半端ねぇ……。


 そんなこともありつつも最終日。

 トラブルがあってゆっくりできたと聞かれたら首を捻ってしまうが、それでも過去の清算を出来たと考えれば良い慰安旅行だったかもしれない。


 部屋で帰りの準備をしているとノックが聞こえた。

 ティナかヴァリス辺りだろうと思いドアを開ける。


「え?」


 そこに居たのはイヴィーだった。

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