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第67話 因縁を断ち切る戦い


 戦闘を終了させた俺は気を失ったオスニエルを連れてホテルへと向かっていた。

 そのまま放って置いていくのも後味が悪かったので、シェリル姉さんに引き渡そうと思ったからだ。

 暗黒騎士の甲冑はオスニエルの意識が無くなったのと同時にバラバラに砕け散り、殆どが灰になって消えてしまった。

 残ったのはほんの一欠片は一応回収しておいた。

 ホテルに向かっている途中でカジノ帰りのお姉さん組、それにティナ、セラフィとも合流して事情を説明。


 それぞれが微妙な顔をしていた。

 一人、ヴァリスだけはゲラゲラと大笑いをしていた。

 因みにお姉さん組はカジノで大勝ちしたようだ。



×××



 ホテルに着いた俺たちはシェリル姉さんの元へ。

 夜中で少し気が引けたが、オスニエルをいつまでも背負っているのは困る。

 シェリル姉さんは寝ていたようで、目をこすりながら扉を開けた。


「何? どうし……」

「寝てるところ悪いけど、ちょっと助けてくれないか?」


 シェリル姉さんは絶句した。



×××



 場所は変わってオスニエルの部屋。

 彼はベッドの上で寝ている。

 その様子を眺めて、シェリル姉さんは頭を押さえながら大きな溜め息を漏らす。

 溜め息を漏らす姿をうっとりした様子で見つめるイヴィー。

 いつの間に居たんだ?


「ごめんなさい。ウチの馬鹿が迷惑かけたわ」

「いや、もういいんだ」

「一体何があったの?」


 それから事の顛末を聞いたシェリル姉さんは俺が渡した甲冑の欠片を眺めながら唸る。


「暗黒騎士、ね。どんなに強力で凶悪な装備品でも装備者が実力不足だと高が知れるようね」

「では、ティナたちが戦った中の人は相当な実力者だったようですね」

「そうだね。凄く強かった」


 中に入っていたのがオスニエルだったから被害は最小限で済んだが……最悪の結果もあったかもしれないと考えると背筋がゾッとした。

 というより、誰がオスニエルを暗黒騎士にしたんだ?


「ここは……」


 オスニエルが目を覚まして上体を起こす。

 全員集合していることに首を傾げてから、俺を見て顔を俯かせる。

 だが、一瞬捉えた瞳には憎悪が宿っていた。

 もう沢山だ。


「オスニエル」

「ルーファス……」

「決着をつけよう」

「────っ!」


 オスニエルは自分が弱くなった理由を俺のせいだと思っている。

 ある意味ではそうかもしれない。

 俺はヴァリスとプネブマに視線を向ける。


「二人に頼みがある。俺から加護を外してほしい。それで、プネブマはオスニエルに加護を付与してほしい」

「貴様、何を言っておる?」

「流石に理解不能なんですけど?」

「オスニエルは自分が弱くなった理由を俺のせいだと思っている。なら、俺と旅をしていた状態にした上で戦って負ければ言い訳のしようがないだろう」


 ヴァリスは首を傾げる。


「それ意味あるのか?」

「分からない。でも、こうでもしないとオスニエルは延々に逆恨みしてくる」


 それに自分のためというのもある。

 今の俺は加護の恩恵で強くなっている。

 それじゃあ、過去を乗り越えられないんだ。

 でも、自分の力でオスニエルに勝てば、きっと過去を乗り越えられる気がするんだ。


「つか、加護をポンポン付与したり外したりするのってどうかと思ったり」

「確かにの。気軽に着け外しできると思われたら心外じゃ」

「じゃあ、今後は外したままでいい」


 元々、俺には過ぎた恩恵だ。

 別に無くなっても前の状態に戻るだけだ。

 本心を伝えて、真剣さを受け取ったヴァリスとプネブマは顔を合わせて呆れたように笑った。


「その我儘聞き入れてやる。感謝せい」

「でも、事が終わったらちゃんと付与し直すから。ウチらも契約があるし」

「────。ありがとう、二人とも」


 俺は感謝を述べてから、オスニエルを見る。


「これでお前は全盛期だ」

「ああ、大精霊の加護をひしひしと感じる。やっぱりお前のせいだったんだな」

 

 プネブマが肩を竦める。

 目の前にその大精霊が居るのに全く分かっていない。

 相変わらず俺のせいにするな。

 もう面倒臭いから、それでいいや。


「これで何もない俺に負けたら認めてくれるよな? 弱くなったのは俺のせいじゃなく自分の実力だって」

「認めるとも。なぜなら僕本来の実力でお前に負けるわけがないからね」


 どこまでも自意識過剰というか……。

 なんだかもう疲れてきた。



×××



 場所は街の外にある荒野へ。

 俺とオスニエルは対峙する。

 決闘を見守るのは各パーティーメンバーの面々。

 

 今のオスニエルからは凄まじい威圧感が出ていた。

 これまでとは全くの別人。

 構えに隙らしい隙がどこにも見当たらない。

 『大精霊の加護』の恩恵か。

 本当にプネブマってとんでもない大精霊なんだな。


 それに比べて俺は完全な個だ。

 過去を乗り越えるためとはいえ、『龍の加護』は付与したままでも良かったんじゃ……。

 いやいや、弱気になるな。

 加護が無くたって、俺にはこれまでの冒険で培った経験と大好きな魔術がある。

 自然と杖を握る力が強くなった。


「これでお前との因縁も終わりだ。行くぞ、ルーファス!」

「それは俺のセリフだ!」


 俺とオスニエルの因縁を断ち切る戦いが始まった。



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