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第60話 姉弟子との語らい


 俺たちはシェリル姉さんたちと別れて宿に向かっていた。


「災難でしたね、お兄様」

「そうだな」


 ティナの言う通りだ。

 癒しの国という戦いからもっとも遠いようば場所で決闘を申し込まれるなんて。

 相手はかつての仲間。

 しかも、逆恨みとなれば災難としか言いようがないだろう。


「あの人たちがルーファスと魔王討伐に向かっていたパーティーなの?」


 セラフィが覗き込んで質問してきた。


「シェリル姉さんと赤髪の人は違うけどな」

「イヴィーって人、かなりの美人だったね」

「まぁ、そうだな」


 確かに顔は綺麗だ。

 綺麗だけど、あの性格を知ってしまったらな……。

 俺はハッキリ言って苦手だ。


「シェリルさんも凄い美人だったね」

「シェリル姉さんは昔から変わらない。ずっと美人なままだ」

「ふぅん」


 セラフィがどこか拗ねたように相槌を打つ。

 なぜ拗ねるんだろう?

 セラフィだって美人じゃないか。

 こうやって一緒に歩いているだけで結構ドキドキしているんだが。


 とか思っていると、ラピスが俺の足に尾を叩きつけてきた。

 地味に痛いし、熱い。

 それから俺の足は宿に着くまでずっと攻撃され続けるのだった。


 で、宿についてチェックインをしようとすると……。


「シェリル姉さん?」

「あ、ルーファス君たちもここに泊まっていたんだ」


 再会は凄まじいくらいに早かった。



×××



 その日の夜。

 部屋でくつろいでいるとシェリル姉さんが訪問してきた。

 セラピアを一望できる展望台に行こうとのことだった。

 俺はシェリル姉さんと話がしたかったので、提案を承諾した。


 そして、現在。

 俺たちは展望台に来ていた。

 ここから見るセラピアの夜景はとても綺麗だった。


「にしても、ルーファス君の仲間には驚いたわ。何をどうしたら龍や大精霊、幻獣が集まるの?」

「そう言われてもな……。巡り合わせとしか」

「それに、あのフェリシアって人は何者? とんでもなく禍々しい魔力を感じるんだけど」

「お母さんは悪魔を取り込んだお母さんだ」

「ちょっと何を言っているのか分からない」


 眉間にシワを寄せるシェリル姉さん。

 そこで俺たちはこれまでの事を話し合うことにした。

 元よりそのつもりだったんだが。


 最初は俺が話した。

 勇者パーティーを追放された後に故郷に戻って、ティナと冒険者稼業を再開したこと。

 セラフィとパーティーを組み、ヴァリスと戦ったこと。

 ダンジョンで裏ボスと出会ったこと。

 呪われた屋敷でフェリシアに出会ったこと。

 そして、プネブマと出会い、ヘルムートを倒したこと。


 シェリル姉さんはその都度、疑問に思ったことを質問をしてきた。

 こういうところは昔と変わっていない。

 好奇心が高く、気になることはとことん追求しないと気が済まない。

 彼女の好奇心に付き合って、何度死にかけことか……。


 ひと通り話し終えるとシェリル姉さんは感慨深そうに声をこぼした。


「ルーファス君なら四皇将を倒せるとは思っていたけど、実際に聞くと凄いの一言ね」

「みんなが居てくれたからこその勝利だ」


 次にシェリル姉さんの話を聞いた。

 俺の抜けた穴を埋めるために勇者パーティーに入ったこと。

 あらゆる方法でオスニエルたちを王国に帰還させようとしたこと。

 そして、それが殆ど徒労に終わったこと。

 その旅を語る表情には疲労と苦痛、呆れ、怒り、あらゆる負の感情がこもっていた。


 俺が何よりも驚いたのは四皇将を一人で……正確にはオスニエルたちを守りながら戦い、勝利を納めたという話しだ。

 というか、赤髪の女性は四皇将だったのか。


「やっぱりシェリル姉さんには敵いそうもないな。特に魔術の複数行使なんて人間業とは思えない」

「まぁ、私は賢者だし、ルーファス君の姉弟子だから。簡単に乗り越えられるほど私は低くないわ」


 全くもってその通りだ。


「そうだ、一つ相談したいことがあるんだ」

「なに?」


 俺は魔術の威力制御が出来ないことを打ち明けた。

 特に強化と回復魔術はどうしようもないということを。

 流石のシェリル姉さんにもそれは難題だったようで、腕を組んで首を捻っていた。

 それからしばらくして、シェリル姉さんは口を開けた。


「うーん、それって魔力量が問題じゃないと思うんだよね」

「えっ?」


 予想外の答えに俺は思わず声が漏れてしまう。


「魔力量と魔術効果はある程度比例するよ。でも、ある段階まで行ったら効果は頭打ちになるもの。それに調節しても高威力になるのも不自然。だって、私が魔術を教えていた時のルーファス君はちゃんと調整できていたもの」

「じゃあ、何が原因なんだ?」


 シェリル姉さんは一つの答えを提示した。


「加護のせいじゃない?」

「加護……」

「ちょうどパーティーに加護をくれた人たちがいるから聞いてみた方が良いかな。多分、どっちかの加護が原因だと思うから。私の予想だと、大精霊の加護ね」


 そう言われて、俺はヴァリスとプネブマに聞くことを決めた。


「ありがとう。やっぱりシェリル姉さんに相談して良かった」

「悔しいけど、私は何もしていないわ。今度は加護のことも勉強しておくわ」


 その後、会話が無くなり夜景を眺めていた。

 しばらくして、シェリル姉さんが言う。


「オスニエルのこと謝るわ」

「シェリル姉さんが謝ることじゃない」

「いいえ、アイツがルーファス君を逆恨みするようになった原因は私にもあるから」

「そんなこと」


 シェリル姉さんは溜め息をついた。


「オスニエルは筋金入りだったわ。イヴィーはイヴィーで面倒なことが続きそうだし」

「………………」

「でもね、イアンだけは思っていたのと違ったわ」


 イアンか。

 いつもオスニエルと一緒になって俺の陰口を言っていたが、不思議と二人の時は何も言ってこなかったな。


 すると、シェリル姉さんがある提案をしてきた。


「ねぇ、イアンに会ってみない?」


 俺は驚くが、気付くと頷いていた。


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