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54話 勇者パーティーの帰還①


 道中は馬車を使って移動することになった。

 いつもはオスニエルのわがままで徒歩で移動していたが、今は一刻も早く癒しの国に着きたい。

 そういう事情もありオスニエルは反論しなった。


 で、今は場所の待合所。

 私はエベリナ戦からずっと暗い表情のオスニエルに声をかけた。

 因みに彼の背中にはイアンがいる。

 好きな男に背負われているからか、イアンの表情は少し和らいでいる気がする。


「ねぇ」

「────っ! あ、ああ……シェ……賢者殿か」


 うわぁ、普通に今のは傷付いた。

 そんなに怯えることなくない?

 たかだか一回くらい怒ったくらいでさ。

 それは、あの時は勢いに任せてキツイこと言ったかもしれないけど。


「シェリルで良いよ。今さら呼び方変えられても違和感しかないから」

「あ、ああ。分かった」


 何よ。

 これまではあんなに自信満々で私にあーだこーだ言ってたくせに。

 こうやってあからさまに態度変えられるのも苛つくわね。


「私たちはこれから王国にエベリナを連れていくの。それがどういう意味か分かる?」

「それは……」

「魔王軍は恐らくエベリナを奪還、それか抹殺しようと刺客を差し向けて来る。正直、これまでの旅より危険度が増すの」

「………………」

「私だっていつ何時貴方たちを守れる訳じゃないの。自分の身は自分で守る意識はして」

「……ああ」


 分かっているのか分かっていないのか。

 曖昧な返事。

 私は溜め息を漏らすのを我慢して、エベリナを見張っているイヴィーの元に行く。


 イヴィーはエベリナに凄く怯えていた。

 まぁ、四皇将だし。

 怖いのは仕方ない。


 イヴィーは私に気がつくと、エベリナからすぐに離れて私に抱きつく。

 やめて。

 くっつかないで。


「もう、あんなのと二人きりにしないでよ。怖かったわ」


 潤んだ瞳で私を見つめるイヴィー。

 なんか、前よりも距離というか密着率が上がった気がするのだけど。

 因みに彼女はあの時のことをあまり覚えていないようだ。

 まぁ、まともな精神状態じゃなかったし。

 それと私が食らわせた電撃のせいだろう。


「あら、あんなのなんて失礼ね。私、人間よ?」


 赤い髪をいじりながらエベリナが笑みを浮かべる。

 彼女は本当に余裕というか、危機感というものが全くない。

 この現状すら運命として受け入れているようだ。



×××



 そんなこんなで馬車に乗り込んだ。

 癒しの国は数日かかる。

 その間もイアンの傷が悪化しないように回復魔術をかけて、軟膏を塗り、包帯も新品に取り替える必要がある。

 なので、ちゃんと軟膏と包帯、それと鎮痛剤と抗菌剤も購入した。


 馬車での移動はハッキリ言って楽だった。

 もうね、最高。

 汗かかないし。

 足がジンジン痛むことないし。

 

 それに、退屈することもなかった。

 なぜなら魔術に造詣が深い人がいたからだ。


「この術式なんだけど、もっと効率良くするにはどうすればいいかしら?」

「それなら、ここをこうすれば……」

「なるほど。そうすれば良かったのね。流石、賢者ね」

「いやいや、このレベルの術式を独学で構築できるなんて凄いわ」


 私とエベリナがキャキャウフフしているのを面白くなさそうに眺めるイヴィー。


「何がそんなに楽しいの?」

「この面白さと奥深さが分からないの?」

「全く」

「だから、振り向いて貰えないのよ。それに好きな人の好きなことを理解するのは楽しいと思うけど」

「────っ」


 こ、この女!

 イヴィーが私に好意を寄せていることを気付いている!

 しかも、なんてことを言い出すんの!


 イヴィーは天啓を得たように顔をハッとさせて、私に迫ってきた。


「あのね、シェリル。私の召喚術式の改善点、教えて欲しい」


 うぅ……そんなキラキラした目で見ないで。

 お願いなら適当にいなすかもしれないけど、教えを乞われると弱いの。

 私の賢者としての本能が……。

 

 それに、あのどうしようもない召喚術式を改善できるのは願ってもない。

 おのれ、エベリナ。

 ややこしいことをしやがって……でも、ありがとうと思っておこう。

 というか、今後のことを考えてイヴィーの強化を図った?


「あら、そんなに見つめても何も出せないわよ」


 考えすぎ……?

 でも、もしそうだったなら彼女はなるほど策士だ。



×××



 イヴィーの術式改善、イアンの看病。

 他の冒険者たちや御者さんとの交流をすること数日。


 私たちは癒しの国、その首都セラピアにたどり着いた。

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