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第42話 暗黒騎士


 不吉な魔力を纏う暗黒騎士と対峙するのは黒髪の少女と茶髪の少女、そして彼女と契約している幻獣だ。

 鋼と鋼がぶつかり合う甲高い音が響き渡る。

 音は四方八方から聞こえてくるが、斬り合っている二人の姿はあまりに早すぎて目視するのが困難なほどだ。


 ティナと暗黒騎士は高速の世界で斬り結ぶ。

 彼女の移動はまるで旋風だ。

 捉えたと思った瞬間にはすでに別の場所に居る。

 最高到達速度になれば残像すら作り出してしまうほどだ。


 それ故に大抵の者はティナの速度に追いつくことはない。

 しかし、暗黒騎士は喰らいつく。


 ティナは左右に大きく動きながら暗黒騎士に迫る。

 暗黒騎士はティナの行動予測をして剣を構える。

 漆黒の剣に魔力がほとばしる。


「ア゛ァァァァァァァ────」


 人間の断末魔のような叫び声が甲冑の中から聞こえてきた。

 まるで、これから少女を斬ることを誰かが拒絶しているのかようだ。


 剣が勢いよく振り下ろされる。

 だが、ティナの華奢な体が両断されることは永久に来なかった。


 ティナの姿が暗黒騎士の目前から消失した。

 次の瞬間、背後から衝撃を受けて仰け反る暗黒騎士。

 

 ティナは凄まじい俊敏性に加えて、空間跳躍というスキルを持っている。

 先のように行動予測をしても空間跳躍によって全てがご破算となってしまう。

 高速移動と空間跳躍の組み合わせはあまりにも凶悪だ。


 しかし、問題が一つ。

 華奢で可愛いティナには決定打となる攻撃力がないのだ。

 暗殺となれば彼女の右に出る者はいないかもしれない。

 だが、真っ向勝負となるといささか分が悪い。


 そこで、セラフィ&ラピスの出番だ。

 暗黒騎士が仰け反り、ティナの姿が消えたタイミングでセラフィが指示を出す。


「今っ!」


 ラピスが瑠璃色の炎弾を放つ。

 高速で飛来する一撃に対応できない暗黒騎士。

 着弾。

 瑠璃色の炎が弾け、暗黒騎士の甲冑を容赦無く蹂躙する。


「ア゛ァァァァァァァァァァ────!!!」


 炎に焼かれ悶える暗黒騎士。

 何とか逃れようとして意味もなく剣を振り回す。


 セラフィの隣にいつの間にか居たティナが呟く。


「これで終わってくれればいいんですけど」


 暗黒騎士が断末魔の咆哮を上げる。

 その瞬間、纏っていた魔力が吹き荒れる。

 衝撃によって暗黒騎士を飲み込んでいた炎が弾け飛び、地面に火の粉が撒き散る。


「ちょっとダメそう……」


 とはいえダメージは確かに通っている。

 暗黒騎士の甲冑には至るところにヒビが入っている。


「暗黒騎士は甲冑が本体ですが、中に誰か入っていなければただの甲冑です」

「じゃあ、中の人をどうにかすればいいのね。でも……あれ、人入っているの?」

「入っていました。でも、生きているとは到底言い難いです。ティナたちで供養してあげましょう」

「うん」


 セラフィは傍に居るラピスに視線を落とす。

 視線が交わり、そして互いに頷く。

 それから、暗黒騎士に視線を向けた。


 ティナが再び陽動を行う。

 ナイフを構えて疾走。

 その姿はまるで黒い流星だ。


 暗黒騎士は先ほどのダメージが抜け切れていないため動きが明らかに緩慢だ。

 動く度に甲冑の破片が散らばる。

 ティナの速度に追いつけずに、一方的に攻撃を受ける。


「ア゛、ア゛ァァァ、ア゛ァァァァァァァァァァ────!!!」


 剣での対処を出来ないことを察した暗黒騎士は魔力の波動を放つ。

 全方位をカバーできる一撃。

 ティナは攻撃が当たる瞬間に空間跳躍。

 攻撃範囲外にすぐさま退避する。


 魔力の波動が収まると同時にに暗器を投擲。

 暗器は暗黒騎士の甲冑の隙間に吸い込まれ顔面に突き刺さった。

 絶叫がこだまし、ドス黒い血液が地面を汚す。


「セラフィさん、お願いします!」

「うん! ラピス、燃やしちゃって!」


 ティナがセラフィの元に出現。

 それを確認したセラフィが声を上げる。


 ラピスは誇り高く吠えた。

 体に纏う瑠璃色の炎が激しく燃え盛る。

 九本の尾先が一点に集まり、そこに瑠璃色の炎が集中していく。

 限界まで圧縮された炎が一気に解き放たれる。


 それは、瑠璃色の閃光だ。

 一瞬にして閃光は大地を抉り、延長線上にいた暗黒騎士も真っ二つに両断する。

 直後、瑠璃色の炎が吹き出して大爆発を引き起こした。


 バラバラになった暗黒騎士の甲冑の破片が空から落ちていく。

 中に居たであろう者は跡形もなく燃えて消えただろう。

 その証拠に肉片や骨の類いは一つも落ちて来なかった。


 ティナは落ちてきた破片を拾い上げて、ジッと眺める。

 大活躍したラピスを撫でて労っていたセラフィが声をかける。


「どうしたの? ティナちゃん」

「……いえ、甲冑が本体って不思議だな、と思って」

「本当だよね。というか、ティナちゃんよく知ってたね」

「誰かから教えてもらったんです。えっと、誰だったか……?」

「もしかしてルーファス?」

「いえ、お兄様との会話なら確実に覚えているはずですから。きっと冒険者の誰かでしょう」



 暗黒騎士との戦いはティナ&セラフィ、ラピスの勝利で終わった。


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