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第41話 冥府ノ門


「クハハハ! 壊し甲斐のある奴じゃ! もっともっと破壊してくれるぞ!」

「流石に疲れて来ちゃったわ」

「マジありないわ。これこっちが消耗し続けて詰みじゃね?」


 こうして話している間にもゴーレムは再生しつつある。


「つか、ママさ、さっきの爆発魔術でまとめて吹き飛ばせないん?」


 プネブマの問いにフェリシアは頬に手を添えて首をかしげる。


「そうねぇ、あの大きさだとどうしてもお残ししちゃうと思うわ」

「だよねー。ちゃんヴァロは何か名案ない感じ?」

「再生できなくなるまで破壊し続ける」

「それ名案じゃなくて力技じゃね?」


 落胆するプネブマ。

 ヴァリスは最初と全く変わらないテンションで再び攻撃を開始しようとする。

 すると、フェリシアがゆっくりと手をあげた。


「お母さん、いいこと思いついちゃった」

「マジ?」

「ええ! 倒しきれないのなら、この世から消してしまいましょうよ!」


 奇妙な提案にヴァリスとプネブマは首をひねる。


「それは……殺すということじゃろ?」

「ちゃんヴァロに同意。それができなくて四苦八苦中なんですけど」

「お母さん言いたいのはね、別次元に飛ばしちゃえばいいってことなの」

「それヤバくない? つか、できんの?」

「実はできちゃうのです。えっへん」

「ママヤバし」


 というわけで、フェリシアが術式を展開するまでの時間稼ぎをヴァリスとプネブマが引き受けることに。


「徹底的に粉砕してくれるわ!」

「もう一踏ん張り行くっしょ!」


 プネブマが地割れを引き起こし巨大ゴーレムの態勢を崩す。

 虚しく空を切った拳の上に華麗に着地したヴァリスが疾走する。

 踏みしめた場所が弾け飛び、不可視の斬撃がツギハギだらけの巨体を斬り刻む。


「この不細工が! ワシの恐ろしさを魂に刻み込んでくれるわ!」


 凄まじい質量の魔力がヴァリスの拳に集まっていく。

 その高密度によって炎のように見えた。

 会心の一撃が巨大ゴーレムの顔面を貫いた。

 その巨体に無数の亀裂が駆け巡り、何度目かの完全崩壊。


 すぐさま再構築されていく。


「マジでウザい。ウチ、しつこいのとかゴメン被るっつーの」


 プネブマが地面に手を置く。

 同時に無数の木が地中から出現し、集まり編み込まれ形を成していく。

 それは余りにも巨大な槍だ。

 槍は再生し終えた巨大ゴーレムの心臓部分を容赦無く串刺しにした。

 すると、木がほつれ始めて巨体の隅々まで根をはって動きを完封する。


「準備できたわよー」


 『ご飯できたわよー』くらいの軽いノリで言うフェリシア。

 その声に反応して、ヴァリスが巨大ゴーレムから距離を置く。

 術式範囲内に巨大ゴーレム以外誰も居なくなったことを確認したフェリシアが術式を発動する。


「──【冥府ノ門】」


 巨大ゴーレムの真下に禍々しい魔法陣が展開される。


「──開門」


 すると、魔法陣がドス黒く変色していく。

 徐々に変化していき、やがて深淵が広がる。

 その深淵からは何十、何百、何千──数えるのすら億劫になりそうな程の腕が伸びて、巨大ゴーレムに纏わりつく。


 巨大ゴーレムがいくら振り払っても腕の数と勢いは増える一方。

 やがて、その巨体が徐々に深淵に引き摺り込まれていく。

 遂には完全に飲み込まれてしまい、そこには悍ましい深淵だけが残った。


「──閉門」


 フェリシアが呟くと、深淵は霧散する。

 巨大ゴーレムの存在は跡形もなくこの世から消え去ったのだ。


 小さく息を吐いて、フェリシアはヴァリスとプネブマに満面の笑みでピースをする。


「家族の絆の勝利ね! いえい!」

「おっ……そうじゃな!」

「家族の絆……マジぱねぇ」


 こうして、最初から最後まで緩いまま美女たちは勝利を収めたのだった。


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