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第40話 巨大ゴーレム


 戦場は大きく四つに分断された。

 一つ、ルーファスvsヘルムート。

 一つ、ティナ&セラフィvs暗黒騎士。

 一つ、ヴァリス&フェリシア&プネブマvs巨大ゴーレム。

 一つ、冒険者vsその他モンスター。


 俺はヘルムートとの戦いで他の状況はよく分からなかった。

 故に、今から語るのは後に当事者たちの話を聞いて自分なりに状況整理を行った備忘録だ。

 なお冒険者たちの戦いは割愛させていただく。



×××



 巨大過ぎるゴーレムと対峙するのは三人の美女。

 ヴァリスは不敵な笑みを浮かべて拳を鳴らす。

 フェリシアはおっとりした笑顔でゴーレムを見上げる。

 プネブマはしゃがみ込みながら淡い緑色の髪を指に巻きつけて遊んでいる。


「ワシはデカい物を見ると壊したくなるんじゃ。完膚無きまでに破壊してくれるわい」

「あらあら、こーんなに大きいゴーレムは初めて見たわ。きっと食いしん坊さんなのね」

「つか、ゴーレムとかめんどくない? 粉々にしないといけないとかダル過ぎ」


 相手は四皇将の切り札の一体だというのに緊張感の欠片もない。

 この三人は一体誰相手なら緊張感を持つのか知りたい。


 ゴーレムは声なのか、岩石の擦れる音なのか、轟音を口らしきところから響き渡らせる。

 それからゆっくりとした動きでチグハグな腕を振り上げる。

 攻撃範囲があまりに広いため緩慢な動きはデメリットになっていない。


「貴様ら下がっておれ」


 ヴァリスが両手を広げてゴーレムの拳を真っ正面から迎え撃つ態勢を取った。

 彼女の言葉に素直に従う二人。


「お母さん、後ろで応援しているわねー」

「ちゃんヴァロっていつもそれすんじゃん。マジ頑強過ぎてウケる」


 ゴーレムの拳が迫る。

 近付くにつれて、その圧迫感は増大する。

 しかし、ヴァリスは一歩も引かない。

 それどころか、自ら迎えるように前に出て拳を固く握り締めた。


 ゴーレムとヴァリスがぶつかる。

 まるで山そのものが降ってきたかのような一撃。

 衝撃によって大地がめくり上がり、砂煙が勢いよく舞い上がる。

 破壊力は凄まじく、ヴァリスの腕から鮮血が吹き出す。


 しかし、それよりもゴーレムのダメージが甚大だった。

 ヴァリスの拳が触れた部分から亀裂が走り肩まで伸びてく。

 次の瞬間、ゴーレムの腕が弾け飛んだ。

 大小様々な岩石、煉瓦や建物の瓦礫が降り注ぐ。

 

「グゥハハハハハハ────!! 中々の一撃じゃが、ワシの方が上じゃ! 思い知ったか痴れ者が!」


 全ての指があらぬ方向に向いて、骨が筋肉から突き出ている腕をゴーレムに向けるヴァリス。

 見た目的に彼女の方が重傷そうだが問題はない。

 ひしゃげた腕から煙が吹き出してあっという間に完治する。


 対抗するかのようにゴーレムの腕も再生していく。

 適当にくっつけたようなツギハギ感満載で、どう見ても先ほどとは腕の形状が異なる。

 それでもちゃんと動く辺りゴーレムは厄介だ。


 そこからはフェリシアとプネブマも参戦。

 

 プネブマが己が手足のように自在に操る木がゴーレムの巨体を絡めとり動きを封じる。

 動けないことをいいことにヴァリスは容赦無く暴力を加える。

 一撃一撃が必殺の域なのだが、ゴーレムはすぐに再生してしまう。

 それがヴァリスにとっては堪らなく楽しかったようだ。

 そのはしゃぎようは新しいおもちゃを買ってもらった子供のようだとフェリシアは言っていた。


 一方、フェリシアもあらゆる魔術を行使した。

 氷魔術で全体を凍らせて砕く。

 爆破魔術で吹き飛ばす。

 不可視の圧力で圧し潰す。


 はっきり言って一方的な蹂躙だった。

 ゴーレムの攻撃力は確かに高い。

 制圧戦ならばゴーレムは相当な脅威となっていただろう。

 だが、それと引き換えに敏捷性が皆無だ。

 言ってしまえば巨大な的だ。

 

 しかし、ゴーレムの再生能力はあまりにも高かった。

 とにかく全力の攻撃を続ける三人。

 その結果。

 異常な耐久性を持つヴァリスはともかく、フェリシアとプネブマの表情には疲労が若干浮かんで来ていた。


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