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第32話 セラフィは強くなりたい


 それはクエスト終わり、ギルドで一息ついていた時のこと。


「私、強くなりたい!」


 突然、セラフィが声を大にして言った。

 テーブルの上には強く握りしめられた拳。

 それは彼女の決意を表しているようだった。


「急にどうしたんですか?」


 俺の隣に座っていたティナが首を傾げる。


「この間のダンジョンからずっと思っていたの。私がみんなの足を引っ張っているって」

「そんなことありま……」

「あるの!」

「は、はい……」


 あまりの迫力にティナが縮こまる。

 俺も足手まといとは思ったことないが、ここでそれを言ったら圧をかけられるだろうから言わないでおこう。


「それでね、二人にお願いがあるの」

「お願いというと?」

「私に修行をつけて欲しいの!」


 あまりにも唐突な提案にティナと顔を合わせてしまう。

 修行と言ってもなー。

 そんなのしたことないからできるか分からないんだが。

 でも、セラフィの真剣な眼差しに応えたいとは思う。


 というか、本当に可愛いな。

 今日は髪を結んでいるので印象が違う。

 どんな髪型でも似合ってる。

 

「分かった。修行しよう」

「お兄様の意向にティナは従います」

「本当に! ありがとう! そうと決まれば早速修行ね!」


 勢いよく立ち上がるセラフィ。

 続いて、俺とティナも立ち上がる。

 一緒に来ていたヴァリスも呼ぼうかと思ったが、他の冒険者と酒盛りしていたから放っておくことにした。

 冒険者たち曰く真昼間の酒は格別に美味いとかなんとか。



×××



 場所は変わって街から少し離れた平野。

 ここなら人の迷惑にならないから大丈夫だろう。


「それで、具合的にどれくらい強くなりたいんだ?」

「私の印象が変わるくらい」

「印象?」

「私の印象知ってる? 食堂の娘か胸の大きいお嬢ちゃんよ! それはあんまりじゃない!?」


 う、うーん。

 こればかりは俺も何とも言えない。

 セラフィを見たら一番に飛び込んでくるのは豊かに育った胸なのは確かだ。

 もちろん、それ以外も魅力的なんだけど。


「でも、印象なんて適当ですから気にしなくてもいいと思いますよ。私は黒髪の早い奴とかロリとかですし」

「俺はポンコツ魔術師だな。あと殺人回復術師ってのもあったな」


 因みにヴァリスは宴会ドラゴン、呑んだくれとか言われてた気がする。

 印象の件はとりあえず置いておいて、話を進めるとセラフィは自分の身を自力で守れるくらいには強くなりたいとのこと。


「じゃあ、模擬戦でもしてみるか」

「うん!」


 俺とセラフィは短めの木剣を持ち対峙する。


「どっからでもいいぞ」

「行くよ!」


 セラフィが一直線に向かってきた。

 木剣による攻撃はお世辞にも早いとは言えず、簡単に避けることができてしまう。


 それよりも気になるのは動くたびに大きく揺れる胸だ。

 目の保養……じゃなくて、接近戦となるとその胸は些か不利に働いてしまう。


 俺は攻撃を避けて、木剣を胸の下から軽く突き上げる。

 柔らかい感触が杖を通じて手に伝わる。

 セラフィは小さく悲鳴を上げて咄嗟に胸を押さえた。


「ルーファスのエッチ! スケベ! 変態!」


「待て待て! 俺は直接触ってない! 胸の下が死角になってるから木剣が来てたの気付かなかっただろ? 見えてないから俺の手か木剣か区別がつかないんだ」


「……うっ、確かに」


 正直言って接近戦は厳しいだろうな。

 じゃあ、中距離か遠距離か?

 だとしたら魔術や弓などなど……どれがセラフィに最適なんだ?

 考える俺に代わり、ティナが教え始めた。


「セラフィさん、身を守るということは単純に考えれば攻撃に当たらなければいいんです」

「言われてみればそうかも」

「というわけで、今からティナが触ろうとするので全部避けてください」

「…………え?」


 直後、ティナが背後に回り込み肩を軽く叩く。

 ワンテンポ遅れて、セラフィが後ろを向く。

 しかし、ティナの姿はもうない。

 触れられているのに姿を捉えられないことに混乱するセラフィ。

 最終的には頭の上で逆立ちされてしまう。


「全然見えない!」


 これはティナが悪い。

 いくら空間跳躍を使ってないとはいえ、ティナの移動速度は異常なまでに速いのだ。

 目で追えというのが無理難題だ。


 その後も色々試行錯誤したが、セラフィの体力をいたずらに削るだけの結果となってしまった。


「すまない」

「ううん、私が頼んだことだから全然平気」


 俺たちのめちゃくちゃな修行に真剣に向き合ってきたセラフィをなんとしても強くしたい。

 しかし、俺やティナにはその才能がない。

 どうしようかと悩んでいたら、一つ閃いた。


「そうだ! メイナードに頼めばいいんだ!」

「その手がありましたね! それに気付くとは流石はお兄様です!」


 キョトンとしているセラフィに言う。


「俺とティナに戦い方を教えてくれた人だ。きっと、セラフィに適した戦い方を見つけてくれるはずだ」


 善は急げということで、俺たちは早速メイナードのところへと向かった。


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