表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/105

第30話 勇者パーティーの崩壊⑤


 剣闘大会は終わった。

 イアンは次の試合であっさり敗北した。

 宿に戻った途端にイヴィーはオスニエルとイアンに怒りをぶつけた。

 

「子供に負けるなんて信じられない!」

「勇者パーティーのくせに優勝もできないっておかしい!」

「本当に使えない!」


 などなどの罵詈雑言を浴びせられても二人は反論の一つもしなかった。

 私は早々に宿を出て時間を潰すことにした。

 触らぬ神に祟りなしだ。


 ふらふらと歩いていたら、いつの間にか街の外れにまで来ていた。

 

「あっ」


 その一画で剣を無心に振るう少年が一人。

 オスニエルをボコボコにしてくれた子だ。

 少し興味があったので彼に話しかけた。


「こんにちは」

「あ、あ、はい! こんにちは!」


 ふふふ、私の美貌に緊張しているわ。

 可愛いじゃない。


「昼間の剣闘大会見ていたわよ。最後の試合は惜しかったわね」


 彼は準々決勝で惜しくも敗退してまった。

 才能は凄まじいが、体力と経験が足りなかったのだ。


「うん……でもね、次は優勝できるようにもっと努力するんだ」


 何この子?

 凄い謙虚だし努力家なんですけど。

 私はそういう子は好きだよ。

 よし、少しばかり手解きをしてあげよう。


 私は木の枝を拾って、少年に構える。


「おいで。君に足りないものを教えてあげる」

「え!? でも、それ木の枝……」

「大丈夫、大丈夫。遠慮しないで、私強いから」


 多少の戸惑いはあったが、剣を構えた瞬間に迷いが消えた。

 刹那、視界から消える。

 なるほど、これはオスニエルじゃ無理だ。


 私は木の枝で一撃を受け止めた。

 うん、良い重みだ。


「え? ……っ!」


 一瞬動揺するがすぐに切り替えて、少年は私の後ろに回り込んだ。

 私は即座に反応して、木の枝で少年を軽く撫で斬りにする。

 少年は尻もちをついて自分の体に触れる。

 大丈夫よ。

 怪我させないように調節したからね。


「と、まぁ、こんな感じね」

「す、凄い……手も足も出なかった……どうして? どうして、木の枝で剣を防げたの?」

「木の枝を強化したの。でも、並みの強化魔術じゃすぐに折れちゃうけど」

「じゃあ、お姉さんの魔術はとても凄いんだね!」

「そうよ。なぜなら、私は賢者なのよ」


 少年はキラキラした瞳で私を見つめる。

 って、私は年端もいかない少年に何をイキっているのかしら。

 きっと、勇者パーティーのストレスのせいね……。


「君の攻撃は早いけど直線的過ぎるの。だから、予測がしやすい。そこを意識すると良いわ」

「うん! 他には?」


 なんてハングリー精神。

 まるで昔の私を見ているようだわ。

 なんて素晴らしい。


「体力は成長と共につくとして……後は経験ね。とにかく色んなこと経験しなさい。そうすれば君は確実に強くなれるわ」

「経験……経験か。うん! 僕、頑張って経験するよ!」


 なんて素直な子なの。

 こういう子となら旅も楽しく出来そうだ。

 馬鹿共を王国に送り返したら、この子を弟子にして旅でもしようかしら。



×××



 純粋で健全な精神を持つ者との触れ合いでリフレッシュできた。

 私は気分良く宿に戻った。

 そして、自分の部屋に入る。


「……………………え?」


 私は硬直してしまった。

 なぜなら、イアンが居たのだ。

 いや、人が居るくらいなら驚くくらいで済む。

 しかし、目に飛び込んで来た光景は驚きを通り越して理解がが追いつかなかった。



 彼は、私の下着を広げてまじまじと眺めていたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ