第24話 呪いの寝室はより過激に
状況を整理しよう。
俺は現在、モカをベッドに押し倒している。
いやいやいや、これは流石に不味いって。
一体全体どうなってんだこれ?
「......もう、屋敷も壊さないにゃ......パンツもあげるにゃ......だから、これ以上は……」
「違う! そんなこと絶対しないから! お願いだから泣きそうになるの止めてくれないか!?」
俺はその場の雰囲気に流されて一線を越えてしまうような計画性の無い男ではない。
だというのに、体が勝手に動いてしまう。
まるで、何者かに操られているように......。
「な、なぁ......何でモカは逃げないんだ?」
「動きたくても動けないんだにゃ」
どうやらモカにも異常が起きているらしい。
原因はどう考えてもこの部屋だろう。
そうこうしているうちに、俺の手が一人でにモカの胸へと向かう。
「............っ、お前」
「俺は、初対面の女の子の胸、揉むほど、の、度胸は、ない……」
俺の手はモカの胸に触れる寸前で停止している。
勝手に動いているなら、動けないくらいの負荷を身体にかければいいんじゃないか、という予想を立てて実行した。
どうやら上手くいったみたいだ。
俺の身体は微動だにしない。
その代わり身体の中は凄まじい激痛が走り抜けている。
なぜなら自分自身に強化魔術を限界まで重ねがけているからだ。
「た、頼む。この部屋、の、仕組みを、解明、してくれ」
「任せろにゃ............分かったにゃ!」
「早っ!」
「さっきからずっと考えていたからにゃ。よく聞くにゃ、この部屋には呪いがかかっているにゃ」
呪い、という単語に嫌な予感がした。
モカはそのまま言葉を続けた。
「この部屋は、資産家夫婦が寝室として使っていたにゃ。寝室と言えば夫婦が子作りに励む場所と言っても過言ではないにゃ」
「そ、れと、呪いが、どう、関係して、いるんだ?」
「思い出すにゃ。資産家が悪魔に願ったのは『子ども』にゃ。つまり、ここは資産家の願いが最も染み付いた場所になるにゃ。願いも過ぎれば呪いになるにゃ......」
「じゃあ、ここは、呪い、の中心、ってことか」
「本体は別に居るとして、呪いの中心はここで間違いないにゃ」
マズい......負荷が……これ以上は体がバラバラになる。
「でにゃ、呪いの内容だけどにゃ。恐らく、この部屋に男女が入ったら強制的に子どもを作らせる......って、感じだろうにゃ。チッ、クソみたいな呪いにゃ」
なんだその呪い!?
嬉しくないと言ったら嘘になるけど素直に喜べない。
微妙だけど人生を左右する厄介な呪いだ。
「そ、れで、この呪い、から、逃れる方法は......」
「この部屋自体が呪いの核になってるから、部屋全体を囲える浄化魔術かにゃ。後は......やっぱり言わにゃい。どうせ、お前は怒るにゃ」
そっぽ向くモカ。
「お前、状況を、見ろよ!」
「嫌にゃ。どうしてもって言うなら、モカが今からすることを怒らないって誓うにゃ」
絶対ロクでもないことする気だ……。
だが、背に腹はかえられない。
「ち、誓う」
「それと、後でルカとお前の連れのパンツを脱がすってここで宣言しろにゃ」
「はぁ!?」
この異常な状況でモカはおかしくなってしまったのだろうか?
「モカだけこんな辱めを受けるのは不公平にゃ。それに、このペアにならなければこんなことにはならなかったにゃ。ていうことは原因はあの二人にもあるにゃ。然るべき罰を受けるのは当然だと思うにゃよ」
「めちゃ、くちゃだ。自分の、妹を、売るか、普通」
「姉の痛みは妹の痛み、妹の痛みは姉の痛みにゃ」
もうダメだ……。
限界が来てしまい、強化魔術を解除してしまった。
再び身体が勝手に動き出す。
もう、考えている暇はない。
「ああ、やってやるよ! ティナとルカのパンツは絶対に剥ぎ取ってやる! だから何とかしてくれ!」
完全に犯罪者発言をした俺を見て、モカは悪辣に笑った。
「──どうなっても知らないからにゃ」
すると、モカを起点に魔法陣が展開された。
それは部屋全体を包み込み、危険な色を輝かせていた。
どうしてだろう?
鳥肌と冷や汗が止まらない。
「え、ちょっと。モ、モカさん? 一体何をする気ですか?」
「この部屋を吹き飛ばすにゃ」
あ............終わった。
そう思った瞬間、魔法陣の輝きが部屋全体を覆い、内臓を貫くような轟音が響いた。




