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第20話 双子の魔術師(猫)


 依頼者の許可を無事に取れたと報告があった。

 そして、マーティンとの話し合いで依頼は夜に決行となった。

 昼間では悪魔が姿を見せない可能性があったからだ。

 でも、夜となれば悪魔はもちろんゴーストが活発になる。

 こちらは暗闇で目もあまりきかなくなるなどの、不利な条件が課せられる。

 だから、気合いを入れて慎重に行かないといけないのだ。


 俺は助言に従ってティナを連れてきた。

 ギルドはすでに閉館しており、軽くノックをするとマーティンが出迎えてくれた。


 夜のギルドというのは初めてだった。

 いつも賑やかな印象があるから、静かな館内は少し違和感を感じた。

 この間案内された会議室に入った。


「とりあえず座ってくれ。最終確認は二人が来てからにしよう」

「ああ」

「はい」


 実を言うと例の二人に会うのは今日が初めてだった。

 何でも出張でどこかに行ってて、顔を合わす機会が無かった。

 どんな人なのか想像は膨らむ。

 俺たちは二人の到着を待つことになった。

 しかし。


「来ない」

「来ませんね」

「いつものことだ。時間通りに来たことがない」


 それから一時間ほど待った時に会議室の扉が開いて少女が入って来た。

 正直少し苛ついていたが、少女を見た瞬間にそんなものは一気に吹っ飛んだ。

 

 白い髪と青い瞳の可憐な顔立ち。

 何より目を惹いたのは頭部でぴょこぴょこ動く猫耳だ。

 その出で立ちは魔術師を連想させる白いローブを羽織っているが、首にぶら下げているのはギルド職員の証明書だ。


「はぁ......ご、ごめんなさい。はぁ......はぁ、遅くなりました」


 なんか変だ。

 白猫魔術師は、滝のように汗を流し息も切れ切れだ。

 よほど急いで来たのかと思ったが、どうやらそれだけが原因ではないようだ。

 もう一つ原因は彼女の背中。


 小柄な彼女の背中に全体重を預けている、これまた小柄な猫耳少女。

 肩の辺りで切り揃えられている黒髪、眠そうで今にも閉じそうな黄色い瞳が相違点。

 着ているのは黒いローブ。

 二人の少女は髪や目の色は違うが、まさに瓜二つ。

 どうやら双子みたいだ。


「遅いぞ! どこをほっつき歩いていたんだ!」

「王都、はぁ、途中で......はぁ、お姉ちゃん、おぶって来た......はぁ......ので」


 断片的だが、どうしてこんなに遅くなった理由が分かった。

 どうやらこの二人は王都からここまで来たらしい。

 距離はそれなりにあるというのに。

 この姉えげつない……。


 そんな姉は緩慢な動きで妹の背中から降りた。

 顔は瓜二つだけど、発育の方は妹に軍配が上がっている。

 ぺったんこの姉は大きな欠伸をしながら、


「うにゃー、疲れた疲れたにゃ」


 お前が言うな。


「お前が言うな」


 心の声と被ったのはマーティンだ。

 かなりご立腹のようで、姉の真っ正面に立ち鋭い目付きで射抜いていた。


「呼んだのはマーティンにゃ。それに王都からここまでどれだけあると思ってるにゃ?」


 マーティンの威圧に怯む様子を見せないどころか、睨み返す黒猫魔術師。


「お前がルカにおぶさってなければ余裕だったはずだ。それなのに......」

「ルカがおんぶしてくれるって言ってくれたから甘えただけだにゃ。あんまりグダグタ抜かすならブッ殺すにゃよ」

「なんだと?」


 殴り合い寸前の二人から、視線を汗だくの妹を心配するティナの方へ向ける。


「大丈夫ですか?」

「も、問題ありません」

「でも、凄い息切れしてますし、顔真っ赤ですよ」


 あの小柄な体で姉をを背負いながらここまで来たんだ。

 凄まじい負担が掛かっているのは明白だ。

 怠惰な姉に対して、なんて健気な妹なんだろう。

 ちょっと可哀想に思えてきた。

 健気な妹は、胸を押さえて喘ぐように言った。


「お姉ちゃんの胸が背中に当たっているのを感じてたら興奮しちゃって......。それに、お姉ちゃんの生太ももを触っていたら......はぁ、はぁ......」

「............」

「............」


 この妹、ただの変態だったようだ。

 俺の同情を返して欲しい。


 少しのいざこざの後、ようやく互いに自己紹介をする。


 姉の黒猫がモカ。

 攻撃魔術を得意としているらしい。


 妹の白猫がルカ。

 回復、支援などの補助系を得意としているらしい。


 自己紹介を終え、マーティンが咳払いをして注目を集めた。


「依頼内容を確認する。内容は屋敷の結界破壊と内部探索。悪魔が関与しているから屋敷内の危険度は未知数。最悪、悪魔との戦闘になる可能性があるから十分に注意しろ」

「悪魔、にゃ。ルカ頼んだにゃ」

「うん! お姉ちゃんは必ず守るから!」


 モカが俺たちを興味なさそうに見つめた。


「にしてもこんなクソ面倒臭い依頼、よく率先して引き受けようとするにゃね。変わり者かにゃ?」

「目的は屋敷の居住権だ」


 そう言うと、モカは大きな欠伸をして目をこする。


「勝手にするにゃ。......まぁ、お前らはモカとルカが守ってやるから安心するにゃ」


 そんなこんなで、俺、ティナ、モカ、ルカの四人は準備を整えて屋敷へと向かった。


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