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第15話 新たなクエスト


 俺は帰ってきたことを報告しにセラフィの両親がやっている食堂にティナとやってきた。


「いや〜、ルーファス君が娘とパーティーを組んでくれるなら安心だ」


 そう言って、楽しそうに笑うのはセラフィのお父さん。

 フライパンを巧みに扱う姿はカッコいい料理人だ。


「どうせならセラフィを貰ってもいいのよ。ルーファス君」


 穏やかに爆弾を投げ込むのはセラフィのお母さん。

 彼女の胸の大きさはしっかりと娘に受け継がれているようだ。

 

「それはいいな。息子と娘が増えるのは大歓迎だ」

「それと孫もね」

「ちょっと、お母さん! お父さん!」


 セラフィが顔を真っ赤にする。

 やっぱりこの家族の雰囲気はいいな。

 ほっこりするというか。

 それにこの料理も相変わらずの美味さ。


 俺とティナが出された料理に舌鼓を打っていると、勢いよく扉を開けてヴァリスが入ってきた。

 ヴァロスラヴァは長いのでニックネームで呼ぶことにしたのだ。


「ここにいたのか貴様ら! 面白そうなクエストがあったから行くぞ!」

「クエスト? というかクエストシート持ってきちゃダメだろ」

「そんなこと知らん。それよりも見ろ! 面白そうじゃろ!」


 絶対に行くって気持ちを尻尾を振って表現するヴァリス。

 俺たちはテーブルに置かれたクエストシートを覗き込む。


 確かに面白そうなクエストだ。

 何より特別報酬の欄が魅力的で興味をそそられる。


 俺はティナとセラフィに視線を向ける。

 二人は揃って頷く。


「よし、いっちょやるか」


 新たなクエストが決まり、俺たちは残りの料理を急いで食べる。

 その間、ヴァリスはセラフィの両親をガン見していた。


「貴様ら、聞くところによると美味い物を作るようだな? 他の奴らも噂をしていたぞ」

「料理一筋で来てるからな。腕には自信があるぞ」

「この人の料理は街一番よ」

「ほほう? ならクエストが終わったら出向いてやる。震えて待つがよい!」

「おう! 腕によりをかけて作ってやるから覚悟するんだな!」


 うん、ヴァリスのノリは割とどこでも通用するようだ。



×××



 俺たちは街から少し離れた場所にある山へと来ていた。

 クエストの依頼主がペンションを経営していて、そこまでちょっとした登山をしているのだ。


 その途中で大勢の人が続々と下山してきた。

 疲労の色はあるが、それ以上に充実したような顔をしている人が多かった。

 きっと登山愛好家の集団なのだろう。


 軽く会釈をして俺たちは登っていく。


「たまにはこういうのも良いですね、お兄様」

「そうだな」


 初心者用の登山コースを進んでいるとはいえ疲労は溜まるものだ。

 しかし、ティナは疲れの気配すら感じさせない。

 それどころかぴょんぴょん飛び跳ねている。

 その動きに合わせて短く切り揃えられた黒髪が跳ねる。

 なんてはつらつなんだ。

 俺の妹はやはり可愛いな。


「ちょ、ちょっと待って……」


 少し後ろで疲労感たっぷりの声を出すのはセラフィだ。

 肩で息をしながら膝に手を置いて立ち止まっている。

 ついこの間、冒険者になったのだから体力の無さは仕方ない。

 それにあんなに大きいのが付いているんだからさぞかし大変だろう。


「………………」


 ここからのアングルだとどうしても胸の谷間が見えてしまう。

 見ないようにしても視線が吸い込まれてしまう。

 こればっかりはどうしようも無い。

 どうしようもないのなら思い切って見てしまおう。

 

「……見てたでしょ?」


 セラフィは胸を手で隠してムスッとする。

 俺は答える。


「ああ、見てた。できればもう少し見ていたい」

「ルーファスってサラッと結構なこと言うよね」


 溜め息をつくセラフィ。

 すると、彼女の後ろから手がぬっと伸びて胸を鷲掴みにする。


「こんなものぶら下げてるからトロいんじゃ。ワシがもいでくれる」


 ヴァリスだ。

 この金髪美女は汗一つかいていない。

 それもそのはずでヴァリスは浮遊しながらここまで来ている。

 山に入ってから一度たりとも地に足をつけていない。

 それ、卑怯だろ。


「あ、ちょっ、ヴァリス、やめ……」

「ヴァリスさん! 独り占めはダメです!」


 そう言って、ティナが瞬時にセラフィの前に現れていきなり胸に顔を突っ込んだ。


「え!? ティナちゃん!?」

「すいません、対抗心でつい反射的に。相変わらずこのおっぱいに顔を埋めるのは最高の癒しです」

「あ、あの、汗かいているから凄く恥ずかしいんだけど」

「ティナは一向に構いません」

「私は構うんだけど!?」


 美女たちが戯れる中に入りたい気持ちはあったが、どうしても勇気が出なかった。

 まぁ、見ているだけで最高なんで良しとしよう。

 こういうのを眼福って言うんだろうな。


 結局、このイチャイチャがセラフィの体力をかなり削ってしまったので休憩することにした。



×××



 ちょうどいい岩に座るセラフィに、川の冷たい水で濡らしたタオルを渡す。


「よかったら使ってくれ」

「ありがとう」


 セラフィは受け取ったタオルで汗を拭う。

 その仕草は妙に色っぽい。

 なんかドキドキしてしまう。


 俺はティナとヴァリスの方に視線を向ける。

 二人は楽しく水遊びをしていた。

 ヴァリスが水をかけようとするが、ティナは瞬間移動で全て避けている。

 とても和む光景だ。


「なんだか昔を思い出すな」

「よく三人で川遊びしたもんね」

「それが今は冒険者でパーティー組んでいるんだな」


 セラフィが言う。


「私、こうしてパーティー組めてるのが本当に嬉しい」


 弾けるような笑顔があまりにも眩しくて、俺の心臓が大きく跳ねた。

 どうして俺の幼馴染みはこんなにも可愛いんだろう。


「俺も、嬉しいよ」


 心の底から出てきた想い。

 勇者パーティーに居た時に何度ティナとセラフィに会いたい思ったか。

 その二人とこうしてパーティーを組めて、一緒に居られることが嬉しくない訳がない。

 

 俺はセラフィの隣に座り、穏やかな時間を過ごしたのだった。


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