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第14話 勇者パーティーの崩壊②


 疑問に思ったのはイヴィーに対するオスニエルとイアンの態度だ。

 パーティーの中で序列が出来上がってしまっている。

 表面的に見るとオスニエルが決定権を持っているように見えるが、その実態はイヴィーが主導権を握っている。

 なぜ、そうことになっているのか知るために私は少し探ってみることにした。


 今、私は宿の部屋にいる。

 今回は宿屋の主人が太っ腹で個室を与えられているのだ。


「じゃあ、最初はオスニエルにしようかしら」


 私はオスニエルがいる部屋に顔を向ける。

 見えるのは壁。

 だけど、私は賢者。

 透視魔術くらいお手の物だ。


 私の綺麗な青色の眼に術式がかかり、壁の向こうが鮮明に見える。


 オスニエルは現在、椅子に腰掛けて無駄に高い剣を眺めている。

 宝の持ち腐れとはよく言ったものだ。

 顔だけは良いから妙に様になっているのが余計に苛つく。


『どうしてこんなことになったんだ? 少し前まではあんなモンスター軽々倒せたのに』


 それなりに気にしているようだ。

 そら、気付け。

 自分は人の力を借りていただけの無能だって。


『そういえば、ルーファスを追い出してからだ』


 おっ。

 気付くか?

 自分の愚かさを反省して、国に帰ると言え。

 そうしてくれれば私はこの役目から解放されるんだから。


『まさか、ルーファスが何かしたのか? きっとそうに違いない! おのれルーファス、逆恨みも甚だしいぞ!』


 コイツ、本当に馬鹿だな。

 自分が無能だとなぜ気付かない。


『僕は絶対に屈しないぞ! 魔王を倒し、イヴィーと添い遂げてみせるんだ!』


 私はここでオスニエルを見るのをやめた。


「ロクでもない」


 私は思わず本音が漏れてしまった。

 なんて下らない。

 とはいえ、オスニエルは本当にイヴィーが好きなんだ。

 嫌われたくないという感情が強いから言いなりという訳ね。


 さて、次はイヴィーでも見てみようか。

 そう思って、彼女の部屋を透視する。

 が、イヴィーは居なかった。


「外出中? じゃあ、先にイアンでも見るか」


 私はイアンの部屋を透視する。

 おっ、イアンはちゃんといるようだ。

 なぜか、上半身裸で筋トレをしていた。

 って、全然筋肉ないじゃん。

 服の上からでも分かっていたが、めちゃくちゃ細いな。

 よくそんな体で槍を振り回せるんだ?

 槍が軽いのか?


『オスニエル……俺は、お前の力になりたい……』


 頑張れ、頑張れ。

 私は口だけの奴より、努力しようとしている方が好きだよ。


『オスニエル……ああ、愛しのオスニエル。ダメだ、ダメだ! 俺のこの気持ちは永遠に封印すると決めたんだ! オスニエルにはイヴィーがいるんだ。それに……男同士でなんて……』


 私はここで透視をやめた。

 なるほど、そういうことか。

 イアンはオスニエルに恋愛感情を抱いている。

 しかし、オスニエルはイヴィーのことが好きだ。

 好きな人の好きな人には強く言えない。

 だから、イヴィーが好き勝手できるというわけだ。


「となると、気になるのはイヴィーか」


 イヴィーがこの関係性を知っていて、利用して今の地位に居座っているとしたら策士だ。

 そうなると、イヴィーが何を考えているかが気になってきた。


 私はイヴィーを探しに街に出た。



×××



 結論から言うと、イヴィーは宝石店にいた。

 全く魔王討伐だってのに呑気に宝石店なんて。

 たるんでいるのはどっちだ。

 まぁ、君くらいの年齢なら魔王討伐なんかよりも宝石とにらめっこしていた方が楽しいでしょうね。

 

「ねぇ、ちょっとこれちょうだい」

「かしこまりました。ラッピングはどうしましょう?」

「頼むわ。プレゼントだから丁寧にね」


 プレゼント?

 イヴィーが買ったネックレスはどう見ても女性向けだ。

 これはどういうことだ?


「………………」


 いや、答えはすでに分かっている。

 なぜなら、私はありえないくらいに賢いから。



×××



 その晩にイヴィーは私の部屋にやってきた。

 顔を赤らめてもじもじする姿はまるで恋する乙女だ。


「どうしたの?」


 もちろん、何しにきたのか知っているが聞いておく。

 イヴィーは予想通り、昼間買っていたプレゼントを私に差し出してきた。


「こ、これ。シェリルは何も悪くないのに強く言っちゃったから、そのお詫び」

「あ、ああ。気にしなくていいのに」


 すると、イヴィーは私にぐいっと近寄る。


「私、シェリルがパーティーに入ってきてくれて凄く嬉しいのよ。ちょっとでも良いところ見せたいって思っているのかな? 緊張しちゃって、なかなか強い幻獣を召喚できないの……」


 いや、緊張とかじゃなくて。

 そもそも、君に幻獣召喚なんてできないから。


 イヴィーがさらに迫ってくる。

 ここまで来られるともはや恐怖なんですけど!?


「頑張るから! 私、頑張るから嫌いにならないで!」


 やはり、そうだ。

 この王女、私に惚れてやがる!

 しかも、なんかそこはかとなく面倒だ!



 なんてこった。

 このアホみたいな恋愛劇に私も入ってしまうとは。

 美し過ぎるというのは罪ということね。


 一旦冷静になって現状を整理しよう。


 イアンはオスニエルが好き。

 オスニエルはイヴィーが好き。

 イヴィーはシェリルが好き。

 私はコイツらを国に帰還させたい。


 何この一方通行の恋愛事情!?

 最悪にもほどがあるでしょ!


 私は大声で叫びたくなった。


 勇者パーティーは、私はこの先どうなってしまうの!?

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