第13話 勇者パーティーの崩壊①
私の名前はシェリル・ホワイト。
銀髪、青い瞳の美女。
賢老メイナース・ロースソーンの弟子にて賢者と呼ばれる者。
賢者って響き最高。
だって、賢い者だもの。
賢いって言われて嫌になる人いる?
いるなら是非とも会ってみたいものね。
そんな、素晴らしく賢い私は、いま地獄みたいな現場にいる。
師匠に頼まれて潜入した勇者パーティーなるお遊び集団。
少し前まではルーファス君がここに居たらしい。
でも、あろうことか彼らはルーファス君を使えないと追い出したとのこと。
私はそれを聞いた瞬間に開いた口が塞がらなくなりそうになった。
今まで彼らが死なないでこれたのはルーファス君のおかげだというのに。
ルーファス君の力を自分の力だと勘違いしていたみたい。
「おい! シェリル! 強化魔術をかけてくれ!」
「こっちにも頼む!」
アホらしい声に現実に戻された私は大きな溜め息をついた。
賢い者である私を無礼に呼び捨てにするのが、元凶である馬鹿王子オスニエル。
同調するのはなんちゃって槍使い、イアン。
「はいはい。──ディナト」
私は適当に杖を振って強化魔術をかける。
全身から力が湧き出たのを感じたオスニエルたちは気持ち悪く笑い、モンスターへと挑みかかった。
しかし、思った以上にモンスターは強かったらしく攻撃が通じない。
「ぐっ! コイツ手強い!」
「俺の槍が通じない!?」
私は吹き出しそうになるが必死に我慢する。
戦っているモンスターはさして強くない。
正直言ってCランク相当の冒険者なら問題なく倒せる程度だ。
私がまともに戦えば10秒で終わる。
それをコイツらと来たらかれこれ30分も戦っている。
しょうがないと言えばしょうがない。
ちゃんとした訓練を積んでない、戦い方すら覚えていない奴らからすれば、こんな雑魚モンスターでもドラゴンレベルに早変わりだ。
「何たらたらやってんのよ……あの男共は!」
おっと、馬鹿王女が騒ぎ出した。
ここ最近、戦闘になるといつも同じことを口走っている。
「それにこの幻獣! 全然使えないじゃない!」
馬鹿王女が罵倒しているのは召喚獣だ。
幻獣って……ぷっ。
そんな幼稚な術式で幻獣が出てくるわけないじゃない。
アンタが使役しているのは低級の召喚獣って教えてあげようかしら。
うーん、こんなにも無能な人たちとよく旅を続けてこれたなルーファス君は。
それほどまでに彼の力は凄いということだ。
私は賢く、それなりに強い自負はあるけど、馬鹿三人を背負えるほどではない。
さてさて、どうしたものか。
×××
何とかモンスターを倒し終えて、宿屋に戻って来た。
そこそこ広い部屋。
勇者パーティーってだけでいい部屋を用意してくれるからいいよね。
部屋は広くていい感じだけど空気は最悪。
ここ最近はいつもこんな感じ。
「最近、どうも調子が悪い。僕を助けてくれていた大精霊の加護も感じないんだ」
オスニエルが深刻な表情で呟く。
いや、その加護は君のじゃないから。
「俺もだ。あの熱い龍の加護を感じない」
同調するイアン。
コイツ同調しかしないな。
というか、熱い加護って何だよ?
加護に熱さも冷たさもないし。
「もう! 何なのよ、アンタたち! たるんでるんじゃないの!?」
おっ、イヴィーちゃんが騒ぎ出した。
自分はロクな活躍をしていないくせに、ここぞとばかりに糾弾するんだよね。
「すまない。イヴィー」
「ああ。確かにたるんでいたかもしれねぇ」
ほらこれだ。
この男たちはイヴィーに逆らえない。
ちょっと文句言われたらすぐに謝る。
だからイヴィーはつけあがるんだよな。
「というか、シェリル。アンタは何なの? 私たちがモンスターと戦っていた時にあくびしてたわよね」
それまで空気に徹していたのに。
まともな活躍してないくせに目端だけは利くようだ。
言い訳したら余計にうるさくなるだろうから、大人しく謝っておこう。
「ごめんなさい。昨日、隣でごそごそ音が聞こえてて、それが気になって寝れなかったの」
「────っ!」
謝るが、少しくらい辱めておこう。
ぷぷっ、顔真っ赤にしちゃって。
この一撃が効いたようで無意味な会議は終了した。
コイツらの弱さは大問題だ。
でも、このパーティーの問題はそれだけではないことを後に知ることになる。




