エピローグ
気がつくと、俺は瓦礫の上で倒れていた。
どうやら辛うじて生きているらしい。
でも、風前の灯火。
あと少しで自分が死ぬということが分かる。
魔王を倒したんだ。
俺の役目は終わったんだ。
もう、疲れた。
十分やったさ。
あとはゆっくり眠ろう。
そんなことを考えていたら、目端で何かが輝くのが見えた。
確認したいが指一本動かすことができない。
すると、俺の顔を覗き込んでくる小柄な者がいた。
瑠璃色の炎を身に纏う美しき九尾の狐。
「ラ、ラピス……?」
なぜ、ここにセラフィの相棒であるラピスが居るんだ?
思考停止している頭では上手く考えることができない。
『愛の告白を他人に委ねるとは何事ですか?』
なんか、声が聞こえる。
これは……ラピスの声?
『貴方自身の言葉で契約者に伝えなさい』
えっと?
なんで、死の間際に説教されてるんだろう?
しかも、一番刺さることを。
『聞いているのですか?』
「あ……は、はい」
『全く、これでは貴方の妹子のために身を犠牲にした契約者が報われません』
「それは……そうだけど……俺、もう……死ぬ……」
ラピスが怒ったように炎を散らす。
『その運命を変えるために来たのです』
「え……?」
ラピスの九本の尾が俺の胸の上にそっと添えられる。
次の瞬間、瑠璃色の炎が吹き出したかと思ったら、体の中に染み込んでいく。
心地良い温かさが全身を駆け巡り、僅かだが活力が戻ってきた。
これは……。
『契約者と貴方を繋いでいる幻獣使役なる力に感謝することです』
「あ、え……」
『要は済みました。契約者の傍に居たいのでこれで失礼します』
「あ、あぁ……ありがとう」
『早く戻って契約者を安心させなさい。いいですね?』
「は、はい」
そう言ってラピスは視界から消えた。
少しして目端で再び輝きが。
どうやら召喚陣の輝きだったみたいだ。
嵐のような出来事で完全には理解できないが、俺は死なずに済むってことなのか?
さっきまで指一本動かせなかったのに、上体を起こすことができた。
さらに立ち上がることも出来た。
体はあちこち痛いけど、生きている証拠だ。
気付けば太陽が昇り始めていた。
こうして生き残った時に最初に思い浮かんだのはやっぱりみんなの顔だった。
ティナ。
セラフィ。
ヴァリス。
プネブマ。
フェリシア。
俺の大切な家族。
大切な仲間。
凄く会いたい。
「──帰ろう。みんなの所に」




