第5.5話『容姿』(間話)
なんやかんや、ありまして。
多少立ったり部屋の外に出してえもらえるようになったある日。
気付いてしまいました。
私って可愛いのでは…?
と。
髪は薄紫のボブ。
瞳はエメラルドグリーン。(因みにまつげがめった長い)
肌荒れなんて一つもない、プルップルの肌!
顔の配置も完璧。
おまけに色白ときたら、もー、美少女の完成でしょうよ。
毎日、専属侍女に
「湯浴みのお時間ですよー」
と入らされるし、
汚れなんて無いっ!
やだ、もう信じられないわぁ…。
栄養バランスの整った食事。
うん、非の打ち所がございませんわね。
食事といえば、日本食が食べたい。
TKGとか食べたい。醤油ぶっかけたい。
発酵なんていう技術がないんでしょうけどね。
前世では高くてあんまり買えていなかった、【米】!!!
ご飯!欲しい!ワレ!
失礼。知能の足りていないゴーレムみたいな喋り方になっていました。
そんな暴走フランシアちゃんは行動に出るわけですよ!
いざゆかん!厨房の地へ!
行動範囲が広まったことで、一つわかったことがある。
公爵邸、とてつもなく広い。
うん、なにこれぇ?
何故に、家の中に中庭が存在する?
専属侍女用の宿舎がある?
えっと、家の中に寮があるってコト?
意味わかんない…。
本当にわかんない。
そんなことを考えながら、二階のフランシアの部屋から厨房のある一階まで降りる。
廊下にレッドカーペットが敷かれていることに疑問を持たないくらいには慣れてきたのだと思う。
階段に踊り場があるのも十分おかしいとは思うけどね。
「こんにちわぁ」
なんか、熱気がすごぉい。
なんで、筋肉マッチョの男性しかいないん?
ジムのトレーニング中でしたっけ?ここ。
「おや、フランシアのお嬢じゃねぇかい。どうした?」
「こら、ミスド!フランシア様に失礼ですよ?」
「…(ミスドッ?)」
「おう、そうだったなぁ…、すみませんねぇ、敬語は使い慣れていないので、はっはっは」
「いえ、むりにつかわないでだいじょうぶですよ?わたしは気にしないので」
「そうかぁ?じゃあ、遠慮なくいかせてもらうぜ!…っていうか、お嬢はなんで厨房にきたんだ?」
そういや、ミスドの破壊力で忘れてしまっていた!
日本食を広めねばならない、という使命があるのだ!私には!
「えっと、おりょうりがしたくて…、」
「うぅむ、料理か?嬢ちゃんに火を使わせるわけにもいかねぇしなぁ」
げっ!
このままでは、日本食が伝えられない。
むむむ…、
「じゃ、じゃあ!わたしがレシピを言うのでつくってもらえますか?」
「おう!まかせとけって!あと、俺には敬語じゃなくていいんだぜ?なめられちまうってもんよ!」
「わかった!じゃあ、『ミソ』を、このくらい出して…」
「…すまんが、『ミソ』って言うのはなんだ?」
な!?味噌をご存じないっ?
じゃあ、味噌汁は無理か?
「えっと、『ショウユ』ってわかるかな?」
路線変更だ。
TKGでいこう。
「ふむ、わからんな!食材の名前…なのか?俺も長い事料理人やってるが聞いたこともねぇ…」
うそだろ…、日本の国民食が無いっていうのか?
そんなの信じられないっ…。
中世ヨーロッパみたいな設定だし、日本文化が無いのは当たり前だけども!
ちょっとは期待したのが馬鹿みたいじゃないかぁ。
あんまりだよぉ…。
「おじゃましました…」
ふらつく足取りで自室に戻る。
ミスドさんがなにか言ってるのも聞こえたけど、
気にしない気にしない。
もう、それどころじゃないんだもの。
これがきっかけとなり、フランシアは後に、日本食をマニアックな層に広めていく。
と、言うのはだいぶ先の話…