第8話:少年錬金術師、狩りの武器を作る
翌朝。
外に出ると、吹き抜ける青い空と白い雲が僕たちを迎えてくれた。
これだけで素敵な気分になっちゃうね。
大きく息を吸い込み、三人でせーのっ……と一緒に叫ぶ。
「『……今日も快晴! 大快晴……(レム)!』」
いやぁ、本当に清々しい。
爽やかな空気を堪能したところで、昨日と同じ朝ご飯を食べる。
昨晩、ジゼルさんは連結した椅子に布を敷いて寝ていた。
ベッドを使ってもらおうとしたけど、「悪いですし、私はどこでも眠れますから」と断られてしまったのだ。
何でも、宮殿時代は忙しすぎて寝ながら仕事をして、逆立ちでも眠ってたらしい(どんな状況なの……)。
本格的なスローライフ(変な言い方……)には、"衣食住"の充実が必要だ。
もちろん、そこには毎日の食事も含まれる。
昨日も結局、石魚とサンアップルを昼夜の両方食べた。
ジゼルさんはおいしいと言ってくれたけど、もっと色んな食事をご馳走したいし、僕だって異世界のおいしい物を堪能したい。
そう考え、ジゼルさんに聞いてみる。
「あの、ジゼルさんって攻撃魔法もお得意なんですか?」
「ええ、一通り使えますよ」
「お肉を獲りに狩りへ行きたいのですが、僕だけじゃ難しそうでして。手伝っていただけませんか?」
「もちろんです。ぜひ協力させてください。"スターフォール・キャニオン"には食べられる魔物もたくさん棲んでいますから、少し狩りに行くだけでお肉も手に入るでしょう」
食べられる魔物!
ありがたい限り。
心の隅っこで、魔物肉なんて毒があったりまずかったりするんじゃ……と少し心配していたのだ。
三人で相談し、さっそく狩りに行くことが決まった。
ジゼルさんが空中から杖を出す。
「では、私が先導しますのでついてきてください」
高台を降りて森に向かうのだけど、ふと思いついた。
「あっ、ちょっと待ってください。念のため、自衛の武器を錬成してからでもいいですか?」
「ええ、どうぞ。ツバサさんの武器、私も見たいです」
『良い考えレム』
ジゼルさんのスキルは【賢者】ということだからすごく強いだろうけど、自分の身は最低限自分の力で守りたい。
これから活動範囲も広げていきたいし、やはり何かしらの武器があった方がいいと思う。
拠点が魔物に襲われる可能性だってあるのだ。
頭の中で武器の種類を考える。
異世界らしい長剣に、使いやすそうな短剣、それとも破壊力のある斧なんかも選択肢に上がった。
悩む僕の頭にジゼルさんの言葉が聞こえる。
「どんな武器にするんですか? 剣術なら多少の心得がありますよ。と言っても、幼少期に父と戯れに遊んだだけですが……」
「そうですねぇ……そうだ、銃を作ろうと思います」
「良いではありませんか! 近寄らなければ、そもそも安全ですね!」
『遠距離攻撃なら安心だレム!』
二人が言うように、銃ならば剣や斧と違って魔物に接近する必要がない。
子どもの身体では力も弱いし、なるべく距離を取って戦いたいところ。
拳銃より飛距離が出るタイプ……ライフル的な銃がいいな。
《スキルオン》してイラストを描く。
「こ~んな感じでは……いかがでしょうか~」
「『……いい!』」
描き上がったイラストは、スチームパンクなデザインのマスケット銃。
ストック部分には大小様々な歯車が噛み合っていて、今まで何度も妄想してきたアイテムだ。
銃床は木材で、銃身はもちろんのこと真鍮製。
必要素材は本体が<真鍮>2個と<木材>1個で、<鉄>1個で弾が五発。
【蒸気の本】を地面に置いて、精神を集中させる。
だいぶ、魔力を使うということにも慣れてきた。
「《蒸気錬成》!」
白い粒子が舞い上がり、マスケット銃の形を作っていく。
数秒も経たずに、イラスト通りの〘蒸気魔導具〙が完成した!
「僕はこれを、〘蒸気な銃〙と名付けようと思います!」
「『おしゃれ(レム)!』」
ランドもジゼルさんも、拍手して讃えてくれる。
【蒸気な本】の説明書きを読むと、蒸気で弾を撃ち出す仕組みとわかった。
なるほど、強そうだ。
本に書かれた使い方を見ながら、お水を入れて弾を込め準備は完了。
森に入る前に、少し練習してみることになった。
大きな樹の5mくらい手前に立つ。
狙いは幹の真ん中だ。
しっかり照準を合わせて……引き金を引く!
パンッという弾けるような音がして、鉄の弾が飛んでいった。
木の幹にバキッと当たる。
やった、命中だ!
「お見事です、ツバサさん!」
『カッコいいレム!』
その後、小一時間ほど練習を重ねた。
〘蒸気な銃〙は意外と取り回しがよくて、少し練習するだけでコツが掴めた。
ジゼルさんは
「もしよかったら、ジゼルさんも使ってみますか?」
「ええ、ぜひ! 見ていたら触りたくなってきました。帝国にも銃はありますが、このような手込め式のものはありませんから。あるのはレーザー銃ばかりです。充電用の魔導具に接続してチャージするんですよ」
「ええ~、カッコいいですね」
「こうやって自分で操作するのも楽しいです。……あれ、意外と難しい」
ジゼルさんが銃を構えて撃つも、弾は外れてしまった。
魔法を放つのとは、だいぶ勝手が違うようだ。
ということで、諸々の準備が完了。
「『それでは、森にレッツゴー……(レム)!』」
肩に乗ったランドと、隣を歩くジゼルさん、そして背中に担いだ〘蒸気な銃〙と一緒に、僕は初めての狩りに行く。
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