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第36話:銀髪女王、少年錬金術師に感謝する

 アルカディア帝国の巨大な宮殿の、これまた広大な部屋。

 "女王の間"で、ロザリ-は淡々と仕事を進めていた。

 "スターフォール・キャニオン"でアナログ生活を堪能してから、三日が過ぎた。

 仕事をしている状況は普段と変わらないが、彼女の心境は大きく違う。

 精神は今までにないほど落ち着いており、何かに追われるような焦燥感や、それに伴うジリジリとしたストレスはもうどこにもなかった。

 最終確認を終えたロザリーは手を止め、扉に優しく語りかける。


「モーリス、忙しいところ悪いが妾の下に来てくれるか?」

「……承知いたしました、女王様」


 少しの間を置いてから、モーリスが顔を出す。

 普通のスピードで、ロザリーの机まで歩く。

 以前のように、慌ただしく走る必要はもうないのだ。

 10秒ほど要したが、ロザリーは怒鳴る代わりに労いの言葉をかけた。


「忙しいところ悪いの。お主に伝えたいことがあるのじゃ」

「とんでもございません。私は女王様のためにいるのですから。ご遠慮なくいつでもお呼びくださいませ」


 二人はふふっと静かに笑い合う。

 これまでの生活では考えられない。

 それほど、ツバサの下で過ごしたレトロなスローライフは、彼女の心を癒やしたのだ。

 ほんの少し微笑んだ後、ロザリーは女王としての真剣な顔に変わる。

 モーリスもまた、真面目な雰囲気を感じ取り背筋を伸ばした。

 

「……さて、お主を呼んだのは他でもない。我が帝国の改革についてじゃ」


 この三日間で、だいぶ今後の方向性が定まった。

 国の改革を考えるには短すぎるだろうが、ロザリーは難なく達成した。

 アナログなのんびり生活でリフレッシュできた優秀な頭はより一層冴え渡り、非常に効率的に物事を考えることができたのだ。

 ロザリーは端的に内容を話す。


「まず、全ての労働に週休四日制を導入する」

「しゅ、週休四日でございますか!?」

「ああ、そうじゃ。もっと詳しく言うと、完全週休四日制じゃな」

「な、なんという幸せ……!」


 彼女の言葉に、モーリスは圧倒されながら謝辞を述べる。

 今までは、週休0日制が推奨という名の暗黙の強制であった。

 オンとオフの区別がなく、逆に効率が悪いことにロザリーは気がついたのだ。

 帝国における諸々の仕事を整理すると、ほとんどが全自動ゴーレムで賄えることがわかり、加速しすぎる必要もないとわかった。

 さらに続けて、ロザリーはありがたい内容を話す。


「一日の労働時間は6時間とする。そのうち、昼休憩は1時間じゃ」

「ろ、6時間!? 昼休憩は1時間!? ……なんという幸せ……!」


 あまりの幸せに、モーリスはもはや気絶しそうだ。

 今までは、一日の労働時間は平均20時間であった。

 昼休憩も実際はあってないようなもので、ろくな昼食を食べた記憶がない。

 仕事中に食事ができるなど、奇跡でははないかと思う。


「今の内容を他の大臣にも共有し、本日中には全国民に伝えてもらえれば嬉しいの」

「承知いたしましたっ。必ずや実行いたしますっ」


 このような仕事ならば、むしろ急いでやり遂げたい……と、彼の心はやる気に満ちる。

 モーリスが元気よく出て行き、"女王の間"には静寂が戻った。

 ひと息吐いたロザリーは、部屋の片隅に視線を向ける。

 その視線の先には、ツバサからプレゼントされた〘蒸気の自転車〙が大切に飾られていた。 毎日磨き上げており、新品同然の輝きを放つ。


(絶対、また"スターフォール・キャニオン"に行き、ツバサやランドに会うんじゃ)


 思い出が詰まる自転車を見るたび、彼女は心の中で硬く誓う。

 ツバサに会って、文字通り人生が変わった。

 モニターの電源を落とし、椅子から立ち上がる。

 今日はもう休みだから。

 "魔波"により栄えた都市を窓から眺めながら、ロザリーは思うのであった。


(ありがとう、ツバサよ。お前のおかげで、妾は人間らしい心を取り戻せた)

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