第35話:少年錬金術師、女王一行を見送る
翌朝。
ロザリー様たちが宮殿に帰る時間がやってきた。
今はお家の前で別れの挨拶を交わしている。
最初はどうなることかと思ったけど、"スターフォール・キャニオン"で一緒に過ごした日々は、僕の心にもとても深く刻まれた。
ロザリー様はそっと右手を差し出し僕と、そしてランドと握手を交わす。
「……ツバサよ、世話になった。もちろん、ランドもな。妾は、ここでの生活は一生忘れないであろう。本当に楽しかったぞ」
「またいつでもいらしてください。心から歓迎いたします」
『ボクもと座リートまた会いたいレム』
「ツバサのおかげで、"時間の過ごし方"を見直すことができた。これからは国としても、もっとゆとりのある生活を推奨するつもりじゃ。その方が国民も幸せじゃと、妾は気づくことができた」
穏やかに微笑みながら話すロザリー様の後ろで、モーリスさんや騎士たちは静かに泣いている。
宮殿でのあまりにも忙しい日々が、少しでもゆっくりになればいいな……と僕も思う。
ロザリー様は僕の後ろに顔を向ける。
その視線の先にいるのはジゼルさんだ。
「ジゼル……お前にも色々と迷惑をかけてしまったな。こんな横暴な姉で済まない」
「いえ、もういいんです。姉さんが健康であることが、私の一番の幸せですから。宮殿に帰っても、働き過ぎないでくださいね」
「わかっておる」
二人は優しく抱き合う。
銀髪が太陽に煌めくとても尊い光景で、モーリスさんと騎士たちはさらに強くさめざめと泣いてしまった。
僕の腕に収まるランドも、笑顔でこっちを見上げる。
『仲直りしてくれてよかったレムね。どんなことも仲良しが一番レム』
「そうだね、ランドの言うとおりだよ」
頭を撫でたところで、ロザリー様がさて、と真面目な表情に変わった。
「ジゼル、お前にも正式に休みを言い渡す。ずっと帝国のために休みなく働いてくれていたからの。とりあえず、三年間じゃ。暫し、思う存分休んでくれ」
「ありがとうございます、姉さん。定期的にお手紙を出しますね」
「楽しみに待っておるぞ。"魔波プレート"を使わないやり取りなんていつぶりかの~」
二人はのほほんとした会話を交わす。
彼女らが話し合った結果、ジゼルさんは退職届を取り下げることになった。
代わりに貰ったのは、長期の休暇。
正式に言われ、ジゼルさんも嬉しそうだった。
ロザリー様たちは、お土産としてプレゼントさせてもらった〘蒸気の自転車〙に乗る。
名残惜しいけど、お別れの時間だ。
「では、本当に世話になったな。そろそろ宮殿に帰ろうと思う。よーし……宮殿まで競争じゃー!」
颯爽と高台を駆けるロザリー様に続いて、モーリスさんと騎士たちも慌てて駆け出す。
「「ツバサ殿、ありがとうございました! このご恩は一生忘れません……女王様、お待ちをっ!」」
「『またいつの日か~!』」
みんなに手を振る僕たちを、爽やかな青い空がいつまでも見守ってくれていた。
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