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第22話:兎獣人の姫は、少年錬金術師に感謝する(三人称視点)

 ツバサたちが帰宅を祝う祝杯を上げ、ジゼルの酒乱が始まった頃。

"兎獣人"の国では、キャロルが自室で静かに外を眺めていた。

 宙には赤や青、黄に緑といった種々の色をした蝶蛍が優雅に舞い、長閑な夜の訪れを告げている。

 いつもと同じ光景であったが、今のキャロルの目にはまったく違う景色に見えていた。


(ツバサちゃんが助けてくれたから、こうしていつもの毎日が過ごせるんだね。あのとき、私は死んじゃったかもしれないから……)


 お散歩で国の外に出たら、運悪く月光龍に遭遇してしまった。

 小型だが獰猛な性格で、周囲の魔物を食い尽くすほどの食欲を持った凶暴な個体だ。

"兎獣人"の耳は森の中でも目立ってしまい、あのような結果となってしまった。

 死を覚悟した瞬間、どこからともなくツバサたちが現れた。

 ジゼルの強力な魔法も素晴らしかったが、特にツバサの勇気がすごかった。

 自分と大して変わらない年だろうに、あの月光龍に真正面から立ち向かうなんて、とても真似できない。

 自然界の強者に臆することなく立ち向かうツバサの勇気に、そして一撃で仕留める射撃の腕前を目の当たりにして、キャロルは心を奪われていた。


(……人間さんって、悪い人ばかりじゃないんだね。ツバサちゃんのおかげで、わたしたちはもっと人間さんと仲良くできると思う)


 父や母、国の大臣たちから聞いていた話は、どれも"兎獣人"にとって良くない内容ばかりだった。

 中には良い人もいるはずだと思っていたが、その通りだと確信できた。

 自分が女王になった暁には、人間との交流を戻したいと考えている。

 ツバサのおかげで、その願いがより現実的になりそうだった。


 キャロルはツバサが描いてくれた似顔絵を見る。

 軽やかな筆致のイラストは自分そっくりでありながら、妖精や精霊のような儚げで美しい雰囲気を纏っていた。

 ツバサの画力は素晴らしく、見る者に強い感動を与えるのだ。

 何より、"自分のために描いてくれた"という事実が嬉しく、キャロルの胸は春が訪れたようにときめいた。


(初めて会ったのに、離れるのはすごい寂しかったな……)


 ツバサが国を発つとき、なぜか胸がチクッと痛んだ。

 今まで感じたことがない不思議な痛み。

 まだ六歳の幼い彼女に、それが"恋"という自覚はない。

 だが、それは確かに思い人を想う尊い気持ちであった。

 月光龍の件もあり、横たわったキャロルは徐々に眠気が増す。


(おやすみ、ツバサちゃん……。絶対にまた会おうね……)


 キャロルは似顔絵を枕元に置き、穏やかな眠りに就いた。

 そうすれば、ツバサの夢を見られそうだったから……。

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